2024年04月19日( 金 )

大腸内視鏡の進化、「AI内視鏡」の時代へ(後)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 それでは、なぜ、AIは医療分野に利用されようとしているのか。囲碁の世界的対決で、AIが囲碁の世界チャンピオンであるイ・セドル棋士に勝利し、全世界にショックを与えたことは記憶に新しい。その後、何でもAIを活用しているというくらい、AIという言葉を聞かない日がないが、現在AIが最も得意としている分野は、実は画像解析である。

 第4次産業革命の1つとしてAI革命が議論されることが多いが、AIが実現できるようになった背景には、ディープラーニング、高性能CPU、ビッグデータという3つの技術が発達したおかげで、AIが活用されるようになっている。
そのなかでも、とりわけAIが活用できるようになった要因は、ディープラーニングに負うところが多い。ここでディープラーニングをごく簡単に説明してみよう。コンピューターに猫を覚えさせようとしたとき、従来はコンピューターに猫の特徴など、猫を定義してあげる必要があった。しかし、今は猫の定義をコンピューターに教え込む必要がなく、猫の画像を大量に与えるだけで、コンピューターが特徴を自分で学ぶようになったのだ。

 ディープラーニングの登場で、AIはどんどん進化を遂げ、画像認識の分野では、人間の能力を超えるまでになっている。数年前、人間が画像をみて間違える確率は、5%程度であるのに対して、AIは2%~3%だった。また、人間は時間の経過ともに集中力も落ちてくるが、AIには集中力の低下も発生しない。このようなAIの画像解析を医療分野に導入しようという動きは活発である。

 AI診断に課題がないわけでもない。プログラム医療機器は6カ月に1回くらいアップデートされることになる。アップデートごとに承認をするのかどうか、医療機器の扱い方を議論する必要がある。また、人工知能は急速に発展する分野なのに、従来の医療機器と同じような承認制度でいいのかどうかを考えてみる必要がある。いずれにしても今後、医療分野においてAI導入が加速していくことは間違いない。

 最後に、韓国にも大腸内視鏡診断AIの開発を進めている企業がある。(株)エンドAIという会社である。同社はソウル大学病院の医療ビッグデータ研究センターと共同で開発を進めている。ソウル大学には内視鏡の熟練度において世界トップレベルの医師がそろっており、AI診断に必要な良質で大量のデータを確保しており、その面において、同社はかなり有利なポジションにいると同社の金代表は語る。

 同社は今年4月にプロトタイプを完成し、それを使って性能検査、バージョンアップを図っていき、韓国政府の協力を得て、来年4月には販売を予定しているという。

 今回記事を書くにあたり、いろいろと調べていたところ、日本にも同じような製品の開発を完了し、治験を進めているAIメディカルサービスという会社があることがわかった。AI診断は大腸がんだけでなく、胃がん、食道がん、咽喉ガンなどに、用途が拡大されていくだろう。

(了)

(前)

関連記事