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2020年04月06日 14:30

東芝機械(現・芝浦機械)が買収防衛策に成功~「賛成」推奨で勝負を決めた議決権行使助言会社ISSとは何者か(前)

 株主総会の季節は、議決権行使助言会社の出番である。議決権行使助言会社とは機関投資家に対して、上場会社の株主総会議案の議決権行使における「賛成」「反対」のアドバイスをする会社のこと。機関投資家から、これまであまり権利行使されることがなかった議決権が、助言会社の意見によって権利行使され、株主総会でさまざまな波乱が起きている。助言会社とは何者か?

東芝機械は旧村上ファンド系によるTOBを撃退

 東芝機械は4月1日から新生「芝浦機械」として再出発した。
 社名から「東芝」の2文字を外し、新たなスタートを切ろうとした矢先に、投資家村上世彰氏が関与する旧村上ファンド系の投資会社にTOB(株式公開買い付け)を仕掛けられた。
 東芝機械は3月27日、本社がある静岡沼津市で臨時株主総会を開き、旧村上ファンド系の投資会社に対する買収防衛策の導入・発動を問う2議案が62%の賛成を得て可決した。
 買収防衛策の導入は経営陣の保身につながるとして反対する機関投資家が多い。当初は、可決するか微妙とみられていた。
 勝負を決めたのは、外国人投資家に影響力がある議決権行使助言会社(以下・助言会社と略)の米インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(以下ISSと略)が買収防衛策の導入と発動について賛成を推奨したことだ。
 旧村上ファンド側は、ISSが買収防衛策の賛成を推奨したことに、「驚きとショックを感じている」と落胆を示した。この時点で、勝負がついた。
 助言会社が上場会社の生殺与奪権を左右する影響力をもつようになった。投資関係者以外に、ほとんど知られていない助言会社の手法を解剖する。

ISS日本法人代表は機関投資家の行動指針の策定メンバー

 助言会社はISSと米グラスルイスの2社が、国際的に事実上の寡占状態になっている。
 グラスルイスはこれまで、3月期決算企業の株主総会が集中する6月に合わせて日本に臨時拠点を設けていたが、今年から東京都内に常設の拠点を設けた。
 ISSは日本進出で先行している。日本法人の代表は石田猛行氏(51)。米ジョンズホプキンズ大学高等国際問題研究大学院で修士号を取得。1999年からワシントンDCの助言会社IRRCに勤務し、日本企業の株主総会の議案分析やコーポレート・カバナンスの調査を担当。
 2005年のISSによるIRRC買収に伴い、同年からISS日本法人に勤務。2008年から日本企業の株主総会調査を総括。金融庁の「日本版スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会」メンバーとして、コードの策定に関わった。
 スチュワードシップ・コードとは、機関投資家が投資先企業の株主総会などにどのような態度で臨むべきかを定めた行動原則である。
スチュワードシップ・コードの策定に携わったことから、機関投資家に対する影響力を強めた。ISSの議決権に対する賛成・反対の推奨は、金融庁が定めたスチュワードシップ・コードに沿ったものと受け取られたからだ。
 しかし、助言会社を危惧する声は少なくなかった。3月期決算企業の株主総会は6月末に集中する。短期間に複数の議案の調査を少人数の助言会社が果たしてやれるのか。短時間でこなすため、助言内容が正確な事実に基づいているのか、事実誤認はないのかという問題が指摘されていた。

国内外の機関投資家は助言会社の推奨を鵜呑みにしなかった

 助言会社に対する危惧が現実となった株主総会があった。2019年6月のLIXILグループの株主総会である。
 LIXILの経営混乱は2018年10月、創業家出身の潮田洋一郎取締役が、「プロ経営者」として招いた瀬戸欣哉社長兼CEO(最高経営責任者)を解任し、自らCEOに就いたことだ。その解任手続きが不透明だと海外の機関投資家が異議を申し立てた。
瀬戸氏を支持する株主グループと機関投資家は手を組み、会長兼CEOの潮田氏の解任を求め、臨時株主総会の開催を要求した。潮田氏はなかなかの策士だ。「6月の株主総会で会長CEOを退く」と表明し、臨時株主総会はできなくなった。潮田氏が自ら辞任を表明したのは、”院政”大作戦の布石だったことがわかる。
 潮田氏の意を汲んだ会社側は、現取締役を全員退任させ、社外取締役中心の役員体制を6月の株主総会に提案。瀬戸氏側との全面対決となった。
定時株主総会では復権を目指した瀬戸氏ら株主側が勝利した。株主側が提案した8人の取締役候補は全員選任されたのに、会社側の候補は6人にとどまり、取締役会の過半を制するに至らなかった。
 この時、ISSとグラスルイスの両助言会社は、会社側の支持に回った。ところが、海外勢ばかりか国内の機関投資家も助言会社の推奨を鵜呑みにせず、自らの判断で投票した。
 助言会社の顧客である機関投資家が、助言会社の推奨に対し、その判断が誤っているとして「ノー」を突き付けたのだ。

(つづく)

【森村 和男】

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