2024年04月20日( 土 )

「中医学」と「感染症」、それは闘争と共存の歴史である!(2)

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 米ジョンズ・ホプキンズ大学の集計によると、新型コロナウイルスによる世界全体の死者は4月13日現在で約11万4千人。国別では米国の死者が、スペイン、イタリアを上回り2万2千人と世界最多となった。米国は感染者数も約55万7千人で最多である。これは、中国全土の感染者約8万2160人、死者約3341人の約7倍に相当する。
 今回の「新型コロナウイルス」騒動を中医学ではどのように見るのか。(社)日本統合医療学園 理事長・学長の吉村吉博薬学博士に聞いた。吉村先生は研究・教育そして臨床のかたわら、中医学の伝道師として年間100回を超える講演を行う。また感染症研究の世界的機関「米疾病対策センター」(CDC)での研究経験がある。

(社)日本統合医療学園 理事長・学長 吉村 吉博 氏

免疫が弱い高齢者や基礎疾患のある方は重症化しやすい

 ――ここから本論「中医学」に入ります。改めて、中医学の観点から、「新型コロナウイルス」はどのようにとらえられるのでしょうか。

吉村 吉博 氏

 吉村 中医学は人ばかりでなく、物事をマクロ的、地球的規模を超えた、宇宙的規模でみる世界観があります。新型コロナ対策には「3密」も重要ですが、その前に人の免疫を高めることが必要です。人から人へ感染するウイルスですが、すべての人に感染するわけではありません。同じ会社内でも、同じ学校内でも、かかる人とかからない人がいます。その差はまさに個人個人の免疫能に依存しています。免疫が弱い高齢者や基礎疾患がある方は感染すると、防御機能が働きにくく、ウイルスなどを下気道から肺へと侵入させてしまい、重症化しやすいことが分かっています。一方、若い方でも生活の不摂生や睡眠不足で免疫が弱くなっていると感染して重症化しやすくなります。医師などの医療従事者は非常に忙しい状況にあるため免疫低下が懸念され、さらに患者との接触が密になることから感染のリスクが高くなっています。

 中医学ではコロナウイルス(新型も含む)を、インフルエンザウイルスや季節性かぜウイルスとは区別しません。ウイルスなどは同じ邪気(風邪(ふうじゃ))として捉えます。
従って、季節性のかぜの場合の「証」(症状から判断する病証)は「風寒証」、インフルエンザの場合は「風熱証」として診ることができ、そして、新型コロナの場合は、症状から他のウイルスよりもタイムラグがありますが「風熱証」として捉えることができます。そのための治療法は、証として同じであればコロナウイルスだけを特に区別する必要はないのです。

西洋薬には重い副作用があり、アビガンも例外ではありません

 ――現在、新型コロナウイルスの「ワクチン」はありません。できるまでには、早くても1、2年はかかると言われています。中医学として、どのような対処方法を薦められますか。最近著名なアメリカの雑誌に漢方薬「双黄連口服液」が効くと載っていました。

 吉村 現代医学で新型コロナウイルスのワクチン開発が進んでいます。一般的には数年かかるといわれていますが、今回は特例で1年以内の開発を目指しています。また、現存する治療薬の有効性も摸索されています。新型インフルエンザ治療薬の「アビガン」、エイズ治療薬の「カレトラ」、喘息薬の「オルベスコ」、急性膵炎治療薬の「フサン」などが試されています。最も有力なものはウイルスRNA合成を阻止するアビガンと言われています。アビガンは初期に有効で、発症6日以内に投与すると14日目に91.4%が改善され、重症化を防ぐことが認められています。

 重症化を防ぐことから医療崩壊に朗報かもしれません。しかし、西洋薬には重い副作用があります。アビガンもその例外ではなく、異常行動や催奇形性(妊婦には“禁忌”)の報告がされています。

(つづく)

【金木 亮憲】

【中医学】数千年という長い歴史に裏付けられた、中医薬学理論と臨床経験に基づく中国伝統医学、いわゆる「中国漢方」のことを言い、「日本漢方」とは一線を隔している。日本漢方は中国からの影響は『傷寒論・金匱要略(張仲景)』(414年)の時代(レベル)で止まり、鎖国を経て、現代医学(西洋医学)の影響も一部では受けながら、今日まで独自の道を歩んできた。

【証(しょう)】中医学の治療指針となるべくもので、西洋医学で言うところの病名(診断名)に相当するものである。一般的に証は弁証といわれる、脈診、問診、触診などから導き出され、病の状態を現す。中医学では、この方法によって導き出された証に基づき鍼灸・漢方薬の治療方針を決定する。からだが病気とどんな闘い方をしているかをみて、その時のからだの状態(体質、体力、抵抗力、症状の現れ方などの個人差)などの観点から診断する。


<プロフィール>
吉村吉博氏(よしむら・よしひろ) 

 日本統合医療学園学長、星薬科大学大学院博士課程修了、星薬科大学助教授、日本薬科大学漢方薬学科教授、アメリカ合衆国疾病対策センター(CDC)にて研究、漢方吉村薬局顧問、東京農業大学・東京家政大学・星薬科大学非常勤講師。
 著書として『中医漢方医学の基礎』、『中医漢方医学の生薬と処方』、『中医漢方医学の治療と症例』、『予防は最大の治療なり』、『登録販売者攻略テキスト』、『登録販売者根底300題』(以上、日本統合医療学園)『基礎薬学(必須講座薬剤師国家試験対策)』(日本工業技術連盟)、『分析化学〈2〉』(南江堂)、『わかりやすい機器分析化学』(広川書店)他多数。メディア出演として「発掘あるある大辞典」(フジテレビ系)、読売新聞、日刊ゲンダイ他多数。

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