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2020年04月28日 07:00

積水ハウスのドンの座をめぐる会長と前会長の壮絶バトル~新型コロナの緊急事態宣言下、「三密」総会を強行した会社側が勝利(後)

 会長か前会長か――。経営対立に揺れる積水ハウスは4月23日、大阪市で定時株主総会を開いた。会社提案の阿部俊則会長らの取締役選任が可決、和田勇前会長らによる経営陣刷新の株主提案は否決された。新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言下で、株主総会を強行した会社側が勝利し、和田前会長が完敗した。

出席株主は昨年の10分の1に激減

 緊急事態宣言を受け、株主総会や決算発表の延期といった対策が求められるなか、積水ハウスは直前に会場を変更して、総会を強行した。なぜか。
 会社側は総会を断行する理由について、前出のリリースでこう述べている。

〈株主の皆様への期末配当金の支払(剰余金の処分)や取締役・監査役の任期満了にともなう選任等は法令に基づき本株主総会での決議が必要であり、本株主総会を延期した場合、株主の皆様及び当社の経営に重大な影響が生じるおそれがあります〉

 結果を見れば、意図は明白だ。出席株主は約160人と昨年の10分の1に減った。高齢者など個人株主はコロナ感染を恐れて、総会には出てこない。従業員持ち株会の社員株主を集めて、会社提案への支持、株主提案の反対をとりつけたということだ。
 和田氏とその側近たちに対する支持率の低さは、出席株主が激減したことによる。緊急事態宣言にもかかわらず、「三密」総会を強行した会社側の作戦勝ちといえる。

2年前、解任を仕掛けた和田氏が、逆に解任された怨念

 内紛のきっかけは2017年に積水ハウスが、東京・五反田の土地取引をめぐって「地面師」グループに約55億円をだまし取られた事件だ。当時会長だった和田氏と社長・阿部氏(現・会長)との間で土地取引の責任の所在をめぐって権力闘争が勃発。2018年1月の取締役会で、和田氏が阿部氏の解任を仕掛けたが失敗。逆に、解任に追い込まれた。

 それから2年。内紛が再燃した。なぜ2年後かというと、積水ハウスの取締役任期は2年だから。任期満了を迎える今年の株主総会が勝負の場だ。もっとも、取締役任期について今回、1年に短縮することを第2号議案に盛り込み、99.65%の賛成で可決した。

 今年2月、和田前会長と現職の勝呂文康専務らは経営陣を総入れ替えする取締役選任議案を株主提案した。勝呂氏は勝利すれば、社長に就くとされる人物だ。
 和田氏は、多額な損害が発生した土地取引は単なる地面師詐欺事件ではなく、阿部会長らが主導した不正取引だと主張し、これに関連して重要情報の隠蔽、ガバナンス(企業統治)不全があったことをあげた。
 だが、そんな正論ではなく、和田氏は、自分を追い落としたかつての腹心の部下だった阿部俊則会長と稲垣士郎副会長に復讐するという怨念に突き動かされていると見る向きがほとんどだった。

議決権助言会社2社は阿部会長の再任に反対を推奨

 積水ハウスの2020年1月期の売上高は11.8%増の2兆4,150億円、営業利益8.5%増の2,052億円と過去最高の業績を達成した。業績は申し分ない。
海外株主に大きな影響力を持つ議決権行使助言会社の賛否はどうだったか。米ISS(インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ)は阿部会長と稲垣副会長の取締役再任に反対する意見を出した。マンション用地の詐欺事件をめぐって、ガバナンス(企業統治)や情報開示姿勢への懸念など責任があることを理由にあげた。株主提案の和田前会長、勝呂取締役へも反対を推奨した。喧嘩両成敗だ。

 米グラスルイスは阿部会長、仲井嘉浩社長ら4人の再任に反対を推奨。和田氏と勝呂氏ら4人選任には賛成を推奨した。
 積水ハウスの株主構成は外国人が約30%を占め、個人株主は14%程度。残りは機関投資家、金融機関などの法人筋。委任状はどちらの陣営に流れたか。助言会社2社が阿部会長の再任の反対を推奨したことから、株主提案側が思いのほか善戦中と伝えられた。

 ふたを開けてみると、和田前会長の完敗。こんなに賛成票が少ないとは、思ってもいなかったのではないだろうか。一方、阿部会長の3割の反対は想定内にとどまった。勝負を左右したのは出席株主が10分の1に激減したこと。少数株主が総会に出席していれば、阿部会長への反対票がもっと増えた可能性がある。薄氷を踏む勝利だったといえる。

マネーロンダリング疑惑でFBIが内定

 総会を乗り切った阿部会長が安泰かというと、そうとばかりいえない。和田前会長は、メディアとのインタビューで、地面師詐欺事件への経営陣の関与に米国の連邦捜査局(FBI)が関心をもって、内定を続けていると明かした。

 〈3月19日、FBIから私のところへ電話がありました。内容については詳しく喋れませんが、弁護士と通訳を交えて1時間くらい話しまして、聞かれたことには正直に答えました。FBIは、この事件について相当興味をもっていると感じましたね。今回の事件はお金の流れが非常に不鮮明ですから、アメリカの捜査機関は”これは間違いなく資金洗浄、マネーロンダリングに使われている”と言っておりました〉

(『週刊新潮』20年4月23日号)

 積水ハウスの経営者がマネロンに関わっているとFBIが認定したら、積水ハウスは米国で事業ができなくなる。「一難去ってまた一難」だ。

(了)

【森村 和男】

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