2024年05月06日( 月 )

次世代のエネルギー源として脚光を浴びている洋上風力(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 発電にかかるコストを明示する指標として均等化発電原価(LCOE,Levelized Cost of Electricity)がある。発電所の建設にかかる初期コストなどの全コストを、その発電設備が稼働する間に発電するすべての発電量で割って算出される数値である。この均等化発電原価は1Kw当たり0.14ドルで、2010年の数値と比較すると20%減少しているし、2022年には現在より60%削減されると見込まれている。その結果、イギリスでは現在、原発よりも発電コストが安い洋上風力があるという。

 洋上風力のコストが大きく下がった理由として、タービンの大型化と、それに伴う設備利用率の向上があげられている。設備利用率も、以前は40%~45%が一般的だったが、イギリスの新規案件の場合、3カ月平均の設備利用率は65%に達していた。

 これまでの風力発電の課題は、初期投資が大きいことと、風力発電機を設置することが難しかった点だ。しかし、将来のキャッシュフローをベースにファイナンスができるようになったことと、水深の深いところでは、浮遊式の洋上風力にするなど、新しい展開になりつつある。

 それでは、洋上風力の事例をみてみよう。ヨーロッパは洋上風力分野で進んでおり、ヨーロッパの洋上風力の設置容量は15.8GWで、世界シェアの85%を占めている。ヨーロッパは2030年まで約50GWの新規洋上風力を計画している。ヨーロッパの中でも、イギリスとデンマークは洋上風力に力をいれている。世界的には2030年までに風力発電の発電容量が120GWになることが予想されている。

 韓国も、このような流れにうまく乗るために、洋上風力に力を入れ始めている。韓国は風量においてはヨーロッパほど多くはないが、造船業などの関連産業が発達しているし、韓国は国土の面積が狭いため、太陽光発電のように広大な土地が必要ではなく、海を活用してできる洋上風力の可能性に目覚めている。

 韓国ではポスコなどを中心に大型のブレードを開発するなど、洋上風力で競争力を持つために切磋琢磨している。韓国は2030年まで16.5GWを洋上風力にする計画である。アジアでは、中国、日本も洋上風力に多くの発電企業が相次いで参入している。日本の市場規模は15兆円ほどになるようだ。素材の技術で優れている日本と、豊富な資金で市場を取りに来る中国は、韓国にとって手ごわい相手になりそうだ。それでも、環境問題を考える際に避けて通れないエネルギー問題なだけに、次世代の大きな成長産業のひとつとして洋上風力に魅力を見出しているのは間違いない。

 風力発電の不安定性をどのように制御していくかが今後の課題である。それから陸地が離れるほど、送電なども問題になってくるだろう。風力発電の比重は、今現在は数パーセントにも満たないが、風力発電の発電量が増えてくると、系統安定などの大きな問題が発生するのは間違いない。大量のデータを解析することによって、いかに電源システムを安定化させるかが、これからの課題である。それにも関わらず、風力発電は、エネルギーの解決だけでなく、雇用の問題、産業の波及効果など色々なメリットがあるので、今後ますます洋上風力が伸びていくのではないだろうか。

(了)

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