2024年04月19日( 金 )

観光客数減少を新たな魅力創出の機会に

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取材協力:太宰府市 観光経済部 観光推進課

新たな観光資源

 “学問の神さま”として知られる菅原道真公を祀り国内外から多くの参拝客を集める太宰府天満宮を始め、登山スポットとして人気の高い宝満山(ほうまんざん)、文化・芸術の交流拠点である九州国立博物館など、多くの観光名所や集客施設を擁する太宰府市。毎年500万人を超える観光客が訪れ、名実ともに福岡県内屈指の観光都市といえる同市だが、今年は苦境に立たされている。世界的な新型コロナウイルスの感染拡大の影響だ。外国人観光客数が大きく減少したうえ、感染拡大防止の観点からイベントの中止や延期も続出。観光産業を主力とする市にとっては、大打撃だ。

 「新型コロナウイルスの影響を受けて、九州国立博物館が当面の間は臨時休館となり、その他の公共施設も休館となっています。毎年春には、太宰府天満宮の参道は卒業生たちでいっぱいになるのですが、今年は明らかに人出が減っています。市としても対策は打っているのですが、自粛要請が出ているなか、できることにも限りがあり、耐え忍ぶしかないのが現状です」(橋川史典・観光推進係長)。

秋のイベント「太宰府古都の光」(本年度の開催は未定)

 そうしたなか、局所的に多くの人が足を運ぶ“ホットスポット”が太宰府市に誕生した。「竈門(かまど)神社」である。後押しとなったのは、昨年アニメ化されて空前の大ヒットとなった、週刊少年ジャンプ(集英社)で連載中の漫画「鬼滅の刃」だ。主人公の苗字が神社名と同じ「竈門」であることや、修験者が着用する市松模様の装束と主人公の羽織の柄に類似性があること、さらには作者が福岡県出身という噂もあり、「作品のルーツが竈門神社にあるのではないか」と話題になって、ファンたちによる“聖地巡礼”が流行しているのだ。

 「竈門神社へは、西鉄・太宰府駅から1時間2本のペースでコミュニティバス・まほろば号が運行しています。若い女性の姿をお見受けすることが多いですが、幅広い層の方が足を運ばれています」(橋川係長)。

 古くから地域住民の交流拠点として愛されてきた竈門神社が、漫画・アニメといったサブカルチャーを通じて注目され、太宰府市の新たな観光資源として活気を生んでいるようだ。

今だからやれること

 市では、太宰府市商工会と協力して経営相談窓口の設置や、地場企業・事業主に対する緊急経済対策資金・新型コロナウイルス感染症特別貸付の助成金申請支援を行っている。自粛要請にともなって臨時休業を決断する商店も増えており、太宰府天満宮の参道においてもシャッターが閉まった商店が散見されるようになった。市の自主的な取り組みは、今後ますます重要になる。

 「どこまでが大丈夫で、どこからがダメなのか。その線引きもまだ曖昧な状況ですので、市としては秋のイベント『太宰府市庁まつり』と『太宰府古都の光』を開催できるのか否かの判断が、重要事項となります。また、西鉄沿線観光活性化協議会を通じて、西鉄と同協議会加入7市でPR活動を行うなどしてきましたが、これを機会にもう一度近隣エリアとの広域連携を考えてみるのも良いかもしれません。宿泊施設がまだ十分とはいえない太宰府市にとっても、紹介できる観光周遊ルートが増えますし、取り組む価値は十分にあるのではないでしょうか」(橋川係長)。

 予期せぬ“コロナショック”で生まれた余白の時間。この時間を新たな魅力創出の機会につなげられるかどうかが、観光産業の明暗を分けることになる。

(左)ホテルカルティア太宰府、(右)太宰府天満宮

【代 源太朗】

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