京都オーバーツーリズム騒動~「観光立国」という危うさ(前)
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京都市では近年、いわゆる「オーバーツーリズム」(Overtourism、観光公害)が問題になっている。ホテルの乱立、観光地や道路の慢性的な混雑などにより、市民生活に悪影響がおよぶようになったとされる。この問題は、2020年2月の京都市長選挙でも大きな争点になった。積極的な観光振興政策を推し進めた張本人である現職の門川大作市長は、選挙に先立つ19年11月、いわゆる「お断り宣言」を表明し、観光振興政策を大きく転換。何とか市長当選を手繰り寄せた。オーバーツーリズムを機に、京都市の観光振興政策はどう変わるのか。政府が進める観光立国に盲点はないのか。“コロナショック”で観光客数が激減する今、改めて検証する。
観光客が急増で追いつかない
オーバーツーリズムとは、観光客数に対し、観光地のサービスやインフラなどが追いつかない状態を指す。ベネチアやバルセロナなど、世界的な観光地での発生事例がある。
有名な観光地が混雑するのは、ある意味当たり前だ。混雑には歓迎すべき面もあると思われるが、過剰になると観光客や地元住民などから不満や苦情が噴出するようになるという。誰が言い出したか知らないが、「観光公害」という言葉で形容される場合もある。いずれも言葉としては耳慣れないところがあるが、真夏になると、全国各地で芋洗い状態の海水浴場などが出現する。その観光地版だと考えれば、理解しやすい。
京都市内の観光地では、何が起きているのか。清水寺などの観光地が人であふれ返ったり、芸鼓さんが観光客に追い回されたり、乗客をぎゅうぎゅう詰めにした市バスが渋滞に巻き込まれたり、観光客が地元住民とトラブルになる事例などが発生しているようだ。いずれの事例も程度の差こそあれ、昔からあった問題だが、ある時期からその「程度」が度を超えるようなり、オーバーツーリズムとして問題視されるようになったようだ。
1.3兆円以上の主要産業
京都市は、言わずと知れた国内屈指の観光都市であり、世界的な観光地でもある。米国の旅行雑誌「Travel+Leisure(トラベルアンドレジャー)」誌の人気観都市ランキングで、京都市は8年連続ベスト10入りをはたしており、世界有数の観光都市として定着している。その魅力は、やはり「歴史と文化」だ。たとえば、市内にある世界遺産(金閣寺、清水寺など)だけでも14を数え、京都御所や桂離宮などの皇室ゆかりの史跡、嵐山や鞍馬などの自然のほか、祇園や河原町などの繁華街もある。新幹線や地下鉄、バスなどの公共交通アクセスも充実している。
市の観光客数は2008年に年間5,000万人を達成。年間の観光消費額は15年に1兆円を超え、18年には1兆3,000億円を超えた。観光産業は、市内総生産の約10%を占める主要産業になっている。ちなみに、福岡市の観光者数は約2,100万人、観光消費額は約5,000億円(17年)。
市は2000年に「京都市観光客5,000万人構想」を発表。10年には「未来・京都観光振興計画2010+5」を策定し、「世界があこがれる観光都市」に向けて、インバウンド受け入れなどのさまざまな観光振興を率先して進めてきた経緯がある。この間の市の動きは、「観光立国」を目指す日本政府の政策姿勢と完全に合致していた。
(つづく)
【大石 恭正】
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