2024年04月28日( 日 )

「コロナショック」でわかったことと今後の展望(前)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 新型コロナウイルスの感染拡大は、今なお世界的に進行中である。中国や韓国、それからベトナムなど、一部の国では、患者の発生が毎日数名程度に抑えられているものの、米国やヨーロッパでは、感染拡大の勢いは衰えていない。

 各国ではコロナウイルスの感染拡大を防ぐため、個人レベルでは、社会的接触を最小限に抑えるよう努力し、外出や集会の自粛をしているし、政府は国境や都市の封鎖を実施するなど、必死の努力をしている。しかし、それでも感染拡大に歯止めがかかっていない。外出の制限などは、必然的に接客をベースにする業種にとって、大きな打撃となっている。

 海外旅行が制限されたことで、航空会社は軒並み倒産の危機に追い込まれているし、ホテル、旅行代理店、レストラン、映画館なども、廃業の危機に瀕している。韓国はとくに輸出主導型の経済構造なので、中国工場の操業停止で、韓国に部品などが供給されず、韓国の輸出も甚大なダメージを受けるようになった。しかし、その深刻さは一部の業種を除いては、まだ表面化していない。なぜかというと、コロナウイルスの患者が韓国で急激に発生したのは、2月末から3月にかけてだからである。そのため、第一四半期の企業業績は、コロナショックの悪影響をそれほど受けておらず、影響は限定的だった。しかし、第二四半期の企業業績が発表される6月末以降になると、人々はコロナショックの経済への悪影響が数字で確認でき、経済は大きく混乱し、株価は再び暴落するのではないかと筆者は懸念している。

 2008年の世界金融危機は、金融部門から発生した経済危機だったので、量的緩和によって、金融機関に豊富な資金が供給されることで、事態の収拾が図られた。しかし、今回は実物経済が壊滅的なダメージを受けたことで、まずは企業が倒産し、次に、その企業におカネを貸した金融機関まで巻き込まれることになるだろう。

 このような状況下で、自粛生活が少し長引いていて、人々は少しストレスを感じ始めているようだ。先日、韓国のクラブで発生した54名の集団感染は、その1つの証左でもある。また、ただでさえ経済的に困っていた「経済の弱者」に、コロナウイルスは、二重、三重の苦しみとなって襲いかかっている。さらに、学校や幼稚園が休みのため、家で食事やホームスクールの面倒を見る親の負担も大きいようだ。企業も需要の急激な低下で、体力の弱い中小企業を中心に、業績の悪化に悲鳴をあげている。そのうえ、これがいつまで続くのか、まったく先が読めない現実に、中小企業の経営者は「青息吐息」である。

 今回のコロナショックで世界が気付いたことがある。多くの国が“世界の工場”として中国に依存することへのリスクに気づいたのである。世界は中国で安く製造できることを喜んでいたが、今回の危機で中国に製造の多くを依存していることがいかにリスクであるか理解できるようになった。

 世界の製造業に占める中国の比率は28.4%である。中国の製造業の規模は、日本の4倍、韓国の9倍となっている。しかし、今後、各国は製造拠点を本国もしくは、中国以外のどこかに分散させることになるだろう。

(つづく)

(後)

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