2024年04月28日( 日 )

「コロナショック」でわかったことと今後の展望(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 それでは、どこに製造拠点を移動させることになるのだろうか。北米の場合、メキシコが有力な候補地となるだろう。そのような意味では、メキシコはコロナショック後に製造業が発展することになるだろう。ただ、メキシコでは「政治腐敗と麻薬」という課題が解決される必要がある。ヨーロッパの製造拠点としては、インドが有力視されている。インドは中東、ヨーロッパの中間拠点であるだけでなく、14億人の大きな人口を抱えていて、次の市場としても大きな魅力があるからだ。

 しかし、インドもカーストという身分制度などがあり、貧富格差がひどいことが経済発展の足かせとして指摘されている。アジアの場合、東南アジアが中国の代案になるだろう。6億5,000万人の人口を抱えており、東南アジアは今後成長が見込まれる有望な市場であるためだ。中国より人件費が安いことは、東南アジアのメリットであるものの、東南アジアには製造の生態系がまだできていないという弱点がある。さらに、今回のコロナショックでわかったことは現在各国の負債が多すぎるということだ。

 全世界のGDP対比の負債比率は322%で、史上最多であるし、金額では253兆ドルに達するという。企業も事情は同じで、社債を発行して今まで調達した金額が巨額である。銀行も企業の倒産を心配して貸し渋りを決め込んでいる。追い打ちをかけるように、移動の制限で市場の需要は大きく落ち込んでいる。その結果、企業の売上は減少し、売上の減少は社員には給料のカットにつながり、給料のカットはまた需要の減少をもたらすという悪循環に企業は陥っている。

 コロナが長期化すればするほど、企業の業績はもっと深刻になっていくだろう。しかし、ワクチンがないので、ワクチンが開発されるまでは経済活動を自粛するしかない。このままの状態では、経済は崩壊しかねない。それで、ワクチンがなくても、経済を優先し、コロナと共生するライフスタイルへのシフトも必要ではなかろうか。

 最後に、コロナショック後の世界を展望してみよう。コロナショック後の世界は今までとはまったく違う世界になる可能性が大である。

 ウイルス感染に対する脅威は今後もなくならないと思うので、非対面のビジネスはますます増えていくだろう。コロナウイルスがきっかけになり、オンラインでの買い物、在宅勤務などは、もっと一般的になるだろう。今後需要が減少し、企業経営が厳しくなると、企業は人員整理などをし、ロボットの導入など、自動化も進むだろう。専門家によっては、今回のコロナ後に経済が回復するまでには、3年くらいはかかるだろうと言っている。経済危機が長期化すれば、社会が不安定になり、消費者の財布の紐は一層固くなることが予想される。それに、キャッシュレスがますます進むことになるだろう。

 米中は覇権争いをしている最中であるが、米国でトランプ大統領が再選に失敗したりすると、中国を封じ込めることもできなくなり、米国の覇権は揺らぎ、中国が先端技術でも米国を圧倒し、世界の覇権を握ることになるかもしれない。コロナ後、世界が以前の姿に戻らないことだけは間違いない。

(了)

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