【衆院選】日本の「右傾化」の危機を煽る中国メディア

 高市早苗政権の発足以降、高市首相の台湾有事への言及や防衛費増額方針が中国側の強硬な反発を招き、日中関係が停滞している。今回の衆院選における与党圧勝という結果を中国側がどうとらえているか、官製メディアの論評から見てみる。

日本政治の右傾化象徴

 人民日報系『環球時報』のサイト「環球ネット」は、同日夜に「今回の衆議院選挙は日本の未来にどうかかわってくるか?」という記事を掲載。同記事では、「高市政権の信任投票」であると同時に、日本政治の右傾化を象徴する転換点と位置付けている。

 今回の選挙結果により、日本の政党地図が「右翼・保守勢力の一強多弱」へと再編され、伝統的な中道・リベラル勢力は一段と周縁化されるとの見通しを示す。中国のシンクタンク研究者は、今回の電撃解散は高市早苗による「突撃戦術の政治的ギャンブル」であり、「賭けに勝った」と評価する一方で、その本質は「日本の政治と社会世論の高度な右傾化の必然的結果」だと論じる。

 有権者の選択については、「消費税減税を含む経済対策」「物価高への対応」「外国人政策」などの政策の中身を判断して行われたものであり、「政治とカネ」問題や旧統一教会との関係をめぐる疑惑は主要な関心事にはならなかったと指摘する。

 今後について、右傾化した民意と高市政権の強化によって、日本の今後の安全保障政策や対外姿勢が、いっそう強硬な方向へ傾く可能性を示唆している。

自衛隊が歴史に?

上海 イメージ    上海市の共産党機関紙系の「上観ネット」は翌9日明け方、「高市早苗が『予想以上の大勝利を得る』。『自衛隊』は歴史となるのか?」を配信。主な論調は先の記事と同様に右傾化を強調したものだが、防衛政策に関して2点紹介する。

 第1に自民一強体制が北東アジアの安全保障および外交の構造に深い影響をおよぼすと指摘する。そして北東アジアの安全保障環境が「不確実性に満ちた新たなフェーズに入った」として、「今後の日本の右翼・保守の狂暴な挑戦」に国際社会がどう対応するかが課題になると強調する。

 第2に衆議院で憲法改正の発議に必要な3分の2を与党が獲得したことで、憲法改正への意思を明確にし、第9条第2項を修正し、「自衛隊」を「国防軍」へと昇格させるのではないかとの予想を披露する。

中国は強硬姿勢を貫くのか

 中国はこれまで、少数与党の高市政権の基盤は脆弱で、強い非難を続ければ方針変更に追い込めると見込み、選挙期間中も官製メディアを通じて高市首相の台湾有事発言や防衛費増額の姿勢を批判する識者や市民の運動を報じるなどしてきた。

 選挙結果に対しても、右傾化の加速、東アジア不安定化の引き金、と言わんばかりの強い論調での批判のトーンを維持した。そもそも憲法改正は選挙期間中に自民党の優勢が伝えられてから急浮上したものでしかないが、自民党が過去最高の議席数を得て政権基盤が大幅に強化されたことで、中国側の焦燥感が浮き彫りになっている。

 高市首相が勝利して政権基盤が強化され、長期政権の見込みがでてくることで、中国側としても対話を避け続けるのは難しくなるという楽観的な観測もあったが、一連の論調を見る限りは、日本の右傾化・軍拡の危険性を内外に訴え続ける姿勢に変化はなさそうだ。3月の訪米、4月のトランプ大統領の訪中といった重要な外交日程を控えるなか、有権者から圧倒的な信任を得た高市首相が、中国を対話のテーブルに戻すために、外交面でも強力な指導力を発揮してくれることを期待したい。

【茅野雅弘】

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