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2020年05月19日 07:00

新型コロナ禍:自粛ポリス、相互監視、差別、排除、正論、空気…(後)

大さんのシニアリポート第88回

 新型コロナウイルス禍により、自主運営する「サロン幸福亭ぐるり」(以下「ぐるり」)を休亭して間もなく3カ月になる。同調圧力という「逆風」は依然として弱まることがない。この間、世の中で起きているさまざまな“事件”や“変化”が、小さな地域でも顔を見せている。1つは亭主にかかってくる家賃の問題、常連客のパチンコ狂(ギャンブル依存症)、相互監視、排除、差別、過剰反応…、具体的な事例を挙げて報告したい。

 「休校で仕事を休んだ保護者への助成金は、風俗業は対象外」「朝鮮学校幼稚部はマスク配布の対象外」「感染拡大の視点から明らかに不合理な差別が、なぜ行われるのか」(朝日新聞 20年5月10日)と行政による「差別」も問題視されている。憲法学者の木村草太(東京都立大教授)は同紙上で、「政策の目的に照らして合理的な線引きか」を判断基準に挙げる。「感染予防というマスク配布の目的に対して学校の管轄は無関係」といい切る。「差別が起きないための『合理的配慮』をしない行政などの不作為も、差別の一種だ」と考える。「合理的配慮」とは、「『医療関係者は感染している』という印象を市民にもたせないよう病院の感染症防護を支援したり、差別は許さないというメッセージを強く打ち出したりすること」(同)と指摘する。確かに行政はこうした意見を発信していない。

 労働・貧困問題に取り組むNPO「POSSE」の今野晴貴代表も、「行政は、『自助努力をするなら』『所属企業が金を出すなら』と支援に条件をつける。困っている人や貧しい人には問題があるのではないかという偏見がある」「基本的なスタンスが、『不正受給を防ぐための犯人捜し』」「コロナ禍で困窮する人が急増しても行政の姿勢は急には変わらず、一刻を争う生活保障で厳格な手続きを重視したり、給付金の出し先を『信頼できる』企業や世帯に絞って弱い立場の人に届かなかったりする」(同)と手厳しい。

 歴史を簡単に振り返ってみても、9年前の東日本大地震のとき、原発のある福島県から関東のある都市に避難してきた子どもを、「放射能がうつるから」と仲間はずれにしようとした地元の子どもたち。その逆に、今回東京から福島に里帰りした同郷人に対し、「コロナを持ち込んできた」と排除した地元民たち。その最たる事件は、「ハンセン病」だろう。もともと「らい菌」は他人への感染力が非常に弱く、治療法もあった。にもかかわらず「ハンセン病はうつる、遺伝する」などと怖い病気だと国民の心に植え付けたのは、国や自治体、それに当時の医者が「療養所での隔離」という「特別な選択肢を、見える化した形」で強制収容したからに他ならない。自粛ポリスまでを登場させる背景にあるものを、京都大の曽我部真裕教授(情報法)は「朝日新聞」(20年5月13日)で「日本社会には自己責任を厳しく追及する傾向があり、コロナ禍でその風潮が強まっている」と述べる。それに日本人に多く見られる「潔癖性」も否定できない。前述の磯野真穂氏の指摘どおり、「コロナが起きたから差別が生まれたわけではなく、もともとあった差別の意識がコロナによって浮き彫りにされたにすぎない」のだ。

 連日報道されるコロナ関連のニュースを丁寧に見てみると、行政間の対応に驚くべき「差」があることに気づかされる。首長の危機意識、行政マンの住民への常日頃からの目配り、配慮、そしてなにより具体的な対応という「行政スキル」の差がこういうときに表面化する。国が地方行政に一任した「地域包括ケアシステム」(重度な障害者でも住み慣れた地域での生活を可能にするシステム)で、最重要とされた「第二層」を、地域包括支援センターに丸投げするという「最悪の方法」(このほうが行政の窓口も楽だから)をセレクトした行政は、心底住民の福祉を真剣に考えてこなかったことの証拠を示すことになった。全国の1700を超す行政区の約半分が「包括への丸投げ」をしたというから、ここでも行政間の「差」が起きている。

 ところで、パチンコ依存症のMさんは、ギャンブル依存症のまま生活を続けていくのだろう。こういうときこそ行政と地域が一緒になって行動する以外に解決方法はないのだ。なのに、行政マンは動かない。気づいていても行動を起こそうとはしない。行政間の「差」は、そこで生活する住民の生活の質の「差」となって現れる。損をするのはいつも住民なのだ。

(了)

<プロフィール>
大山眞人(おおやま まひと)

 1944年山形市生まれ。早大卒。出版社勤務の後、ノンフィクション作家。主な著作に、『S病院老人病棟の仲間たち』『取締役宝くじ部長』(文藝春秋)『老いてこそ2人で生きたい』『夢のある「終の棲家」を作りたい』(大和書房)『退学者ゼロ高校 須郷昌徳の「これが教育たい!」』(河出書房新社)『克って勝つー田村亮子を育てた男』(自由現代社)『取締役総務部長 奈良坂龍平』(讀賣新聞社)『悪徳商法』(文春新書)『団地が死んでいく』(平凡社新書)『騙されたがる人たち』(講談社)『親を棄てる子どもたち 新しい「姥捨山」のかたちを求めて』(平凡社新書)など。

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