最先端技術による“まるごと未来都市” 内閣府の「スーパーシティ」構想とは(後)
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2020年06月01日 07:00

最先端技術による“まるごと未来都市” 内閣府の「スーパーシティ」構想とは(後)

グリーンフィールド型の適地・九大・箱崎キャンパス跡地

 福岡市においては高島宗一郎市長が19年4月の市長会見で、スーパーシティ構想への意欲を示している。

 今回のスーパーシティという構想は、エリア全体をスマート化し、そして最適化とデータ活用をしていくというもの。このチャレンジ自体は非常に大きく、すごく大きく影響があると思うんですね。そういう意味では、日本のなかのいくつかの場所で、スーパーシティというものが実現できるとなれば、いわゆる「Society(ソサエテイ)5.0」の加速化にも寄与するという認識です。
 そのうえで福岡市なんですけれども、福岡市においては九州大学の箱崎キャンパス跡地が、まさにこれから大きく絵を描ける、白いキャンバスに絵を描ける場所です。となれば、エネルギー、セキュリティ、それからさまざまなインフラ、それらを一からこしらえる。あらゆるスマートを前提としたまちづくりができるという、大きなチャンスなんですね。これを単純に、土地の売却を早くするために、たとえば「普通のマンションが建ちました」「普通に大型ショッピングセンターが1個できました」で終わりでは、本当にもったいない。そういう意味では福岡市の箱崎エリアは、これは単純にテクノロジーを入れたいための実験場所にするという意味ではなく、これからあそこにまちができて、そしてこの福岡市民、ないしはあそこに住むであろう未来の人たちも、持続可能で安心して健康的に便利に暮らしていける――そんなまちをぜひともつくっていきたい。その目的を達成するための手段の1つとして、スーパーシティというものも当然その検討の俎上にはあるということですね。ですから、スーパーシティの今後の議論の行方に、それからスピード感というものには非常に注目をしていますし、当然、前向きに捉えています。
 やはり、こういうスーパーシティのようなものは絶対日本に必要だと思いますし、“見せていく”ことが大事だと思うんですね。たとえば5Gだとか、IoT だとかAI とかいっても、それが自分たちにとって、具体的にどのような便利さがあるのかというところまで落とし込まない限り、イメージもできないと思うんですね。
 ですから、こうしたショーケースのようなエリアができるということは、日本全体にとっても大きく寄与するチャレンジだと思っています。ただこれが、本当に福岡市として使えるものになっていくのかというところは、期待と不安があります。そういう意味では議論を注視していきたいし、ぜひ福岡市にとって、使いやすい内容になっていただければいいな、ということを期待しています。
(福岡市HP・市長会見議事録より、一部抜粋および要約)

 福岡市では遡ること16年秋に、アジアのリーダー都市を体現する新たなまちづくりのチャレンジとして新プロジェクト「FUKUOKA Smart EAST」を発表している。これは、前出の「スマートシティ」に該当する取り組みで、広大な敷地で新たなまちづくりを行うことができるという強みを活かして、モビリティやセキュリティ、エネルギーといった最先端の技術革新による、快適で質の高いライフスタイルと都市空間の創出に向けて取り組んでいくというもの。アイランドシティも含めたエリアでのプロジェクトだが、すでにある程度開発が進行しているアイランドシティに比べて、ゼロベースでの開発が可能な九大・箱崎キャンパス跡地では、約50haという広大なエリアをまとめてグランドデザインできるうえ、交通利便性も高いため、これまで以上に自由な発想でまちづくりを行えるポテンシャルを秘めている。「FUKUOKA Smart EAST」では、自動運転という新しいテクノロジーやカーシェアリングなどの「スマートモビリティ」や、IoTやGPSを活用した子どもの見守りや認知症者の徘徊対策、医療健康情報の見える化などの「スマートウェルネス」――そうしたさまざまな分野のスマートをエリア全体に重ねることで、質の高いライフスタイルを実現する都市空間を創出していくことが目指されている。

 一方で、高島市長が関心を示して食指を動かしているように、スーパーシティのエリア選定で福岡市が選ばれるのであれば、その場所として箱崎キャンパス跡地以上の適地はない。18年9月末にはキャンパス機能の伊都キャンパスへの移転が完了し、現在はすでに工学部本館などの歴史的価値の高い一部の建造物を除いて、ほとんどの解体が完了。まさにゼロベースから新たな都市を形成していくうえでの下準備が、整いつつある。グリーンフィールド型(新規開発型)でスーパーシティを実現しようとした場合、全国の政令市のなかでも、ここに勝る場所はあるまい。

 今後、国のスーパーシティの対象エリアとして福岡市・箱崎キャンパス跡地が選定されたならば、スマートシティを進める「FUKUOKA Smart EAST」を格上げして、「FUKUOKA Super HAKOZAKI」といった新プロジェクトが立ち上がる可能性もあるだろう。九大とともに100年の歴史を重ねてきた場所に、最先端技術が惜しみなく投入された、次なる100年につながる国内有数の未来都市ができ上がる――。福岡市の都市未来図を描いていくうえで、これまで以上に、東区・箱崎キャンパス跡地再開発の行方に熱視線が送られているといえよう。

(了)
【坂田 憲治】

 

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