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2020年06月04日 09:00

視界不良の2020年消費~流通大手イオンはどう動くか(中)

 売上規模8兆円超の流通大手のイオン(株)では今年3月、23年ぶりに社長が交代。創業家出身の岡田元也氏が会長に退き、吉田昭夫氏が社長に就いた。スーパーやドラッグストア、SC(ショッピングセンター)開発・運営、金融などさまざまな事業を展開する同社では低収益事業の改革が目下の経営課題だ。2021年2月期は業績に大きくブレーキがかかる見通し。コロナ禍で消費行動が変化するなか、巨艦イオンの経営改革は加速するか。

全国の小売業を糾合、売上規模を急拡大

 では、イオンがどのようにして現在の姿になったのか簡単に見ておこう。  イオンの源流の1つが岡田屋(三重県)だ。七代目である岡田卓也氏(現・イオン名誉会長相談役)が1970年、フタギ(兵庫県)、シロ(大阪府)との合併によって、前身のジャスコを誕生させた。
  社長に就いた岡田氏は全国各地の小売業との提携、合併によって事業を拡張。巨大流通グループの礎をつくり上げていく。「緩やかな連帯」を標榜し、手を組む際には相手の自主性を重んじ、グループ企業を増やしていった。
 ドラッグストアとの連携もその1つ。1995年(株)ツルハと業務・資本提携を皮切りに、全国各地のドラッグストアと手を組んでいった。これが現在のヘルス&ウエルネス事業につながっている。

 稼ぎ頭であるSC開発に乗り出したのは早い。69年、三菱商事(株)との共同出資でSC開発のダイヤモンドシティ(後にイオンモール(株)に吸収合併)を設立し、郊外型SCの開発を進めていった。もう1つの稼ぎ頭である総合金融では、81年に日本クレジットサービス(現・イオンフィナンシャルサービス(株))を立ち上げている。

 M&A(合併・買収)を加速するのが、90年代後半からだ。経営難に陥った小売業や過大投資で経営破綻した小売業を次々と取り込んでいった。全国各地のスーパーやドラッグストアを糾合し、業界再編の受け皿となっていった。主な案件を挙げてみよう。

 97年に倒産した(株)ヤオハン・ジャパンを2000年に完全子会社化。03年には茨城県地盤の(株)カスミに資本参加したほか、01年に経営破綻した(株)マイカルも手中に収めた。11年には中・四国地盤の(株)マルナカと(株)山陽マルナカを子会社化した。14年にはドラッグストアのウエルシアホールディングス(株)を子会社化。15年には、07年に資本提携した(株)ダイエーを完全子会社化するとともに、ダイエーグループだった(株)マルエツにも出資した。15年にはカスミとマルエツを経営統合しユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(株)を発足させ連結子会社化した。19年には中・四国地盤の(株)フジに出資している。
 こうしたM&Aによって、グループ会社が増え、売上規模も大きく膨れ上がっていったのである。

決め手を欠くGMS改革、SMは地域別再編に着手

 イオンの経営課題は何かといえば、こうして売上規模を拡大したにもかかわらず、収益がそれにともなっていないことだ。とくにGMS事業の営業利益率は0.2%という低収益にあえぐ。
 イオンに限らずGMS企業は長期の低落傾向にある。イトーヨーカ堂も苦戦続き。GMS企業の多くは大手の小売資本傘下に入っている。GMSが弱体化したのは「ユニクロ」や「ニトリ」といったSPA(製造小売)型の専門店の台頭がある。総花的な品ぞろえのGMSから客足が遠のいていったのである。

 イオンはGMSを立て直そうと、GMS事業の中核会社イオンリテール(株)の衣料品や住居関連品について商販一体型の専門会社を立ち上げる方向を打ち出したり、個店に権限を移譲したり、さまざまな改革に取り組んではきているが、どれも決定打になりえていない。

 一方、SM事業の改革にも乗り出した。北海道、東北、東海・中部、近畿、中国・四国、九州の全国6地域にある事業会社の地域別再編だ。

 すでに中国・四国では19年3月にマックスバリュ西日本(株)が(株)マルナカと(株)山陽マルナカを子会社化。9月には東海・中部でマックスバリュ東海(株)とマックスバリュ中部(株)が合併した。北海道ではイオン北海道(株)とマックスバリュ北海道(株)が20 年3月に合併した。東北では3月にマックスバリュ東北(株)をイオンの完全子会社としたうえで、イオンリテール東北カンパニーと経営統合しイオン東北(株)となった。近畿でも3月にダイエーと(株)光洋が経営統合した。九州ではイオン九州(株)、マックスバリュ九州(株)、イオンストア九州(株)が9月1日付で合併する。

 SM企業群を地域軸に再編し、地域ごとに重複コストを削減し収益力を高めるのが狙いだ。1%に満たないSM事業の営業利益率をどこまで高められるかが今後の焦点だ。

(つづく)

【本城 優作】


<COMPANY INFORMATION>
イオン(株)

代 表:代表執行役社長 吉田 昭夫
所在地:千葉市美浜区中瀬1-5-1
設 立:1926年9月
資本金:2,200億700万円
連結営業収益:8兆6,042億円(20/2)

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