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2020年06月05日 09:00

視界不良の2020年消費~流通大手イオンはどう動くか(後)

 売上規模8兆円超の流通大手のイオン(株)では今年3月、23年ぶりに社長が交代。創業家出身の岡田元也氏が会長に退き、吉田昭夫氏が社長に就いた。スーパーやドラッグストア、SC(ショッピングセンター)開発・運営、金融などさまざまな事業を展開する同社では低収益事業の改革が目下の経営課題だ。2021年2月期は業績に大きくブレーキがかかる見通し。コロナ禍で消費行動が変化するなか、巨艦イオンの経営改革は加速するか。

23年ぶりに社長が交代、事業会社の統廃合加速へ

 イオンでは今年3月、社長が交代した。23年間社長を務めた創業家出身の岡田元也氏が会長に就き、副社長を務めていた吉田昭夫氏が社長に昇格したのである。

 岡田氏が社長に就いたのは97年。当時の社長、田中賢二氏が旧第一勧業銀行時代の総会屋利益供与事件で逮捕され、辞任。専務取締役に昇任したばかりの岡田氏が急遽登板することになった。岡田氏は海外の大手小売業に倣い、IT・物流改革を強力に押し進めたほか、全国のスーパーを糾合しグループ規模を急拡大させた。社長就任時の連結営業収益は2兆3,401億円(98年2月期)だから、売上規模は3.6倍に拡大したことになる。

 吉田氏は83年に当時のジャスコに入社した生え抜き。イオンリテールを経て、11 年にイオンモールに転じた。中国を中心にSC開発経験を積み、15年に社長に就いた。19年3月にイオンの代表執行役副社長に就き、ディベロッパー事業とデジタル事業を担当してきた。

 吉田社長はイオンの課題について「収益性の悪い事業会社にメスを入れていかなければならない。新型コロナの影響で環境が変わるなか、事業としての成長性を改めて見定める必要がある」と話す。イオンはグループ事業構造の変革をテーマに、既存事業の再定義、事業分野の見直しを行い、グループ企業の統廃合・再編を進めている。すでに、今年5月にタルボットジャパン(株)、10月にクレアーズ日本(株)の専門店事業をそれぞれ終了させることを発表している。今年4月には結婚相手紹介サービスの(株)ツヴァイの全株式を(株)I B Jに売却した。

 今後、コロナ禍のなかで、さらに事業会社の統廃合が加速するのは間違いないだろう。イオンはこれまでのM&Aで膨らんだグループ企業の再編期に入った。

GMSとSMの改革に取り組むイオン

 コロナ禍で消費行動が変化。今期の営業利益、半減見通し

 コロナ禍のなかで消費行動が変わりつつある。その1つがオンライン経由の消費の拡大だ。吉田社長は「オンライン需要が定着するだろう。イオンとしてもオンラインシフトのスピードを上げなくてはいけない」と力を込める。

 イオンはこれまでデジタルを経営戦略の重要な柱として掲げてきた。18年にネット通販の米ボックスド、独シグナスポーツユナイテッドに出資。19年にはイオングループのデジタルソリューションを手がける新会社を中国に設立している。このほか、英国ネットスーパー業界で急成長するオカドグループの子会社オカドソリューションズと日本における独占パートナーシップ契約を締結。23年にAI(人工知能)とロボットを使った高効率の物流センターを開設し、次世代ネットスーパーを目指すとしている。

デジタル化がイオンの今後を左右する

 店舗のデジタル化にも取り組み始めた。貸出用の専用スマートフォンで商品のバーコードをスキャンし専用レジで会計する「どこでもレジ レジゴー」を今年3月から開始。20年度中に東京・千葉・神奈川の「イオン」「イオンスタイル」約20 店舗へ導入する計画だ。今後レコメンド機能を追加し、買物中の客へメニュー提案や買得商品を案内するほか、専用アプリを開発し、顧客体験を向上するという。
 ただ、ほかの小売業もそうだが、イオンのデジタル化のスピードは遅く、具体的な成果に乏しい。コロナ禍を機にデジタル化を加速できるか注目される。

 一方、購入商品の内容も変化している。イオングループの足元の状況をみると、3月の既存店売上高は、GMS各社は前年同月を割り込んだが、SM各社やドラッグストアのウエルシアホールディングスなどは前年同月を上回る。総じて、食品や衛生用品などの生活必需品の販売が堅調だ。

 イオンは日本で新型コロナ感染拡大がピークアウトするのは上期中と想定、消費への影響は第3四半期を底に21年2月期末まで続くとみる。これに、緊急事態宣言などの規制期間の延長や対象地域の拡大などの可能性を加味し、21年2月期業績は幅をもって予想している。連結営業収益は8兆円から8兆4,000億円、連結営業利益は半減以上の500億円から1,000億円の見込みだ。

 生活必需品の需要は底堅いが、不要不急の商材の需要回復は見通しにくい。マルチフォーマットを展開するイオンを率いる吉田社長はこの難局にどう立ち向かうのか。多難な船出となった。

(了)

【本城 優作】


<COMPANY INFORMATION>
イオン(株)

代 表:代表執行役社長 吉田 昭夫
所在地:千葉市美浜区中瀬1-5-1
設 立:1926年9月
資本金:2,200億700万円
連結営業収益:8兆6,042億円(20/2)

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