2024年03月30日( 土 )

杭に関する施工偽装!杭の不適切な切断とデータ偽装!(前)

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 Net I・B Newsでは、愛知県名古屋市営住宅において杭が施工されていなかった事例を報じたが、元杭工事関係者から杭の不正に関する情報が寄せられた。その内容は、「高支持力杭(認定工法)における杭先端の切断」「杭に関するデータ改ざん」である。

1.岡崎市の施設における既製杭先端の切断

 既製杭は、図面に示された長さで製造され現場に搬入される。しかし、現場で杭を埋め込む為に掘削をした際に、想定よりも支持地盤が浅かった場合(高止まり)などには、杭頭を切断する必要がある。杭を切断した場合にはプレストレス(PC鋼棒による圧縮力)が減少するので補強を行うことになる。切断された杭頭の補強は地上での作業であるが、杭先端は地中となるので、補強することは不可能と考えられる。

 杭工事に長年携わってきた技術者が、愛知県岡崎市こども発達センターの杭工事に関する以下の問題点を指摘している。

(1)設計図通りに所定の支持層の深度に杭を埋め込むべきところが、実際には所定の深度に埋め込まれていない。当該杭工事施工報告書には、合計 71(本)箇所の杭のすべてが設計図通りの深度に埋め込まれたと記載していた。
 しかし、実際は一部の杭が設計図通りに行われていなかった。追加資料の開示により、全71箇所の内11箇所の杭は、所定の深度に未到達のまま、杭の先端分をカットオフして埋め込込んでいたことが判明した。
 当該工事に係る特記仕様書・公共建築工事標準仕様書・工事標準仕様書・施工計画書等には、いずれも杭の先端カットオフを適用する記載は見られず、先端カットオフを採用する事にはなっていない。

(2)適正な施工(品質)管理が行われていない。
 当該建築物(1階床面積:1450m2)にあって、事前のボーリング調査8箇所をもって定めた支持層(土質、層厚、着底深度)を試験掘削3箇所、試験杭1箇所で確認し、本杭の60箇所(総数71箇所)が所定の深度に到達している下で、一部で掘削深度が激しく起伏(2m以上の深度未到達の杭数が11 本中5本)していた。
 (1)その時点で、正確な地盤情報(「掘削不能」箇所の掘削底の地盤状態=土質、層厚、N 値)を把握する追加ボーリング調査を実施せず、「掘削不能」をもって安易に「支持層」と想定した。
 (2)優先すべき、「設計で定めた支持層の深度まで掘削し切る施工(品質)管理目標」を反故にした。
 (3)乱暴にも、着底型の杭先端をカットオフ(設計図等で適用外)した杭(11本)を埋め込む施工を繰り返した。しかも、杭の根固め液・杭周充填液(セメント使用量)の管理を行っていないことも明らかになった。

(3)「設計が定めた支持層の深度に杭を埋め込み、支持力を確保する」重要なプロセス管理の妥当性を裏付ける適正な施工管理の記録・資料の作成・保管を確実に行うことが必要とされているが、当該現場では適正な施工管理の記録・資料の作成・保管が行われていない。

 上記を整理すると、
 (1)全71カ所のうち11カ所の杭において 杭先端が切断(カットオフ)されているにもかかわらず、杭工事施工報告書には「71カ所すべての杭が設計図通りの深度に埋め込まれた」と記載された。
 (2)掘削深度が極端に浅い(設計深度に2m以上未到達)ケースで、追加ボーリングを行わず、「掘削不能=支持層」と想定したことはHyper-MEGA工法の品質管理目標に反している。
 設計図の適用外である「杭先端のカットオフ」を11カ所も繰り返した。
 杭の根固め液・杭周充填液(セメント使用量)が管理されていない。
 (3)品質を確保するための 適正な施工管理の記録・資料の作成・保管が行われていない。

 愛知県岡崎市のこども発達センターの杭工事に関して、岡崎市議会における鈴木雅子市議の質問
 上記の市議会の動画を見ると、鈴木市議は、岡崎市こども発達センターの杭工事(工法:Hyper-MEGA工法)において 杭先端が切断(カットオフ)されたことについて 質問を行っている。

 こども発達センター杭工事における杭のカットオフの様子は、下記のYouTubeにて確認できる。確かに、杭先端部分が切断され、補強をされることなく埋設されていることがよくわかる。
https://www.youtube.com/watch?v=xVyfLkY08tY

(つづく)

【桑野 健介】

(動画より抜粋)

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