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2020年06月04日 10:00

【コロナと対峙する企業】日産自動車~赤字6,712億円は、カルロス・ゴーンの「負の遺産」の清算だ!「平時リーダー」の内田誠社長は「有事リーダー」のゴーン前会長を超えることができるか(後)

 日産自動車の2020年3月期の連結決算は、最終損益が6,712億円の赤字となった。経営難に陥り、カルロス・ゴーン前会長が再建にとりかかった2000年3月期の最終赤字6,843億円に匹敵する規模となった。日産は20年前に逆戻りした。内田誠社長兼最高経営責任者(CEO)は、ゴーン前会長のように日産のV字回復ができるだろうか。

アマゾン川の未開の地での赤貧洗うがごとき生活

 カルロス・ゴーン氏が「有事」のリーダーとして、修羅場で鬼と化したのは、権力を集中する凄まじいまでの我欲にあった。猛禽類のような鋭い目をしたカルロス・ゴーン氏を、あくなき上昇欲、金銭欲、権力欲に向かわせたものは何か。

 彼は、日本経済新聞に連載した『私の履歴書』で、自らの来しかたについて触れている。祖父がレバノンから移住したブラジルのアマゾン川流域の未開拓地で生まれた。
 2歳のとき、こどもはみな煮沸かした水を飲んでいたが、彼は井戸の水をそのまま飲んで、高熱が続き、生死をさまよった。母の故郷のレバノンで療養することになった。
 その赤貧洗うがごとき経験が、彼を稀代の野心家にしたのだろうか。ただ、ものごころつく前の幼児期の出来事だ。仰天するようなニュースが飛び込んできた。

ゴーン被告の父は「神父射殺」で死刑判決

 保釈中にレバノンに逃亡した日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告をめぐり、衝撃的な本が2月5日にフランスで出版された。ゴーン被告の半生を綴った『LE  FUGITIF(逃亡者)』。共著者は仏紙「フィガロ」の日本特派員を務めるレジス・アルノー氏。夕刊紙「Zakzak」(1月18日付)が、共著者に直撃取材して、いち早く内容を報じた。

 〈ゴーン被告の父ジョージ氏は、神父を目指しナイジェリアへ渡ったが、ダイヤモンドや金、外貨、麻薬の密売業者となった。60年4月、共謀関係にあった神父を金銭トラブルの末に射殺。ジョージ氏は61年1月に死刑判決を受けた。ゴーン被告は7歳だった。

 翌年の控訴審で死刑判決が破棄され、15年の有期刑に減刑。刑務所では”ドン”として囚人や看守を巻き込み賭博場へ出かけたほか、仲間と共謀して脱獄も計画していたという。70年に模範囚として保釈されたが、紙幣の偽造が発覚し、3年間の有期刑を受けた。その後は75年の内戦の混乱に乗じてレバノンを脱出、ブラジルでビジネスマンとして成功を収めた〉

 ゴーン氏の『私の履歴書』は父について触れていない。父親の驚愕な過去が明かされた。ゴーン氏は猛勉強してフランスの一流大学へ進学。社会に出てからは、凄まじい勢いで権力への道を駆け上がった。ゴーン氏を上昇欲、権力欲、金銭欲の塊にしたのは、誰にも話すことができない父のことだったのだ、と納得できた。

日産の内田社長が「有事」のリーダーになる試金石は

 日産の内田誠社長は「有事」のリーダーになれるだろうか。ゴーン氏の拡大路線が招いた失敗を率直に認め、稼ぐ力を取り戻す構造改革へとようやく経営のかじを切った。
 立て直しの柱は、リストラ策だ。しかし、「閉鎖」に具体的に言及した工場はスペインとインドネシアだけ。焦点はじり貧の欧州事業を継続するかに絞られていたが、欧州からの撤退は見送った。人員削減については、規模も含めて言及を避けた。5万人を削減するとの観測が飛び交っている。

 リストラでもっとも難しいのは、人員削減である。生活がかかっているから、抵抗が激しいのは当然だ。多くの改革は雇用問題で中途半端に終わる。
 ゴーン氏はコミットメントを日産社内で求心力を高める強力な武器にした。彼は自著『ルネッサンス――再生への挑戦』(ダイヤモンド社)で、この効用について次のように語っている。

 〈危機感はトップがつくり出すものだ。組織が危機感を共有していなければ、新しい目標や、挑戦の機会を与えることで緊張感をつくり出すべきだ〉

 ゴーン氏は、日本人についての2つの考えを抱いて日産に乗り込んできた。1つは、なかなか意思決定しないが、一致団結すると比類なき力を発揮するというもの。2つは、言動を周囲に合わせる同調圧力が強いこと。日本人のブレーンから仕込んだ日本人観だが、その考えに沿って、鬼と化して「危機感」をつくり出し、日産のV字回復を達成した。
 だが、ゴーン氏は本質的に短距離ランナ――。短期に業績を回復するテクニックは卓越している。しかし、ゴーン氏には中・長期的にどこへもっていくという明確なビジョンはもっていなかった。

 「平時」のリーダーである内田誠社長が、「有事」のリーダーとして求められるものは、次の1点。ゴーン氏が決定的に欠落していた日産の中・長期ビジョンをかかげて、危機感をつくり出して、社員の力を結集させることができるか、にかかっている。
 はたして、内田社長は修羅場に強い鬼になれるだろうか。カルロス・ゴーン逃亡者に「オレがいなくなれば、このザマだ」と言わせてはならない。

(了)

【森村 和男】

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