2024年10月15日( 火 )

年間700万人が日台間を往来 教育、歴史など広がりを見せる文化交流(後)

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台北駐福岡経済文化弁事処 総領事 陳 忠正 氏

 台北駐福岡経済文化弁事処(以下、福岡弁事処)は中華民國駐長崎領事館を前身とし、1970年の福岡移転を経て、台湾の代表機関として日台間の交流促進などの役割をはたしている。台湾からの訪日観光客数は人口1人あたりで香港についで多く、平均して5人に1人は毎年訪日している。九州は台湾にもっとも近く、後藤新平など台湾の発展に功績のあった九州出身者も多い。九州と台湾の関係について同弁事処総領事(処長)の陳忠正氏に話をうかがった。

日台の歴史的つながりの再確認

 ――日本と台湾の歴史的つながりが近年見直されています。

台北駐福岡経済文化弁事処 エントランス

 陳 台湾ではかつては中国の歴史を中心に教育しており、日本が統治時代に行ったことは教えられていませんでした。当時功績があった人に対して現在のように正当に評価されるようになったのは、李登輝元総統の功績が大きいです。李総統が本土化を進め、学校で日本統治時代のことを教え始めるようになり、現在は若者も技師の八田與一や台湾総督府民政長官の後藤新平の功績について知っています。台南の烏山頭ダムは八田與一、宜蘭の宜蘭川堤防は同県初代知事の西郷菊次郎のおかげで建設されたものであり、台湾人は日本人からいろいろな恩恵を受けていることを忘れません。

 1月、熊本にて「平井数馬先生墓前祭」に参加しました(平井数馬は日本統治時代の1896年に抗日事件で殺害された小学校「芝山巌学堂」日本人教師6人のうち1人)。平井先生の親戚の湾生(日本統治時代に台湾で生まれた日本人、約20万人いる)の方は、すでに台湾を離れて60年以上経つのにとても流暢な台湾語(中国福建省南部をルーツとする言語)を話されており、驚きました。

日本への期待

 ――日本人に知ってほしいこと、伝えたいことをお願いします。

 陳 日本に期待することが2点あります。日本はCPTPP(TPP11)のなかで兄貴分といえる存在であり、台湾の参加を支持していただきたいと思っています。台湾は輸入金額が毎年2,500億米ドル以上で、アジア太平洋地域でも非常に重要な市場です。台湾人は日本の農産物を非常に好んでいて、CPTPPに加盟することができれば、日本からより多くの農産物を輸入するでしょう。

在日台湾人向けの『台湾新聞』

 台湾人の購買力平価はCPTPPメンバー中、シンガーポール、ブルネイにつぐ3位と非常に強いです。米中貿易摩擦が深刻さを増す中、世界のサプライチェーンの多くが再構築中にあります。台湾がCPTPPに参加できれば、各メンバー、とくに日本との間で新しくより力強い、より競争力のあるサプライチェーンが築けるでしょう。一言で言いますと、台湾のCPTPP加入は、台湾の貿易の質と量および経済体質からみて、CPTPP全メンバーにプラスに働くと信じております。

 日本には、台湾のWHOへのオブザーバー加盟を支持していただきたいと思っています。人間の健康は国籍を問うべきではなく、台湾はオブザーバー加盟を望んでいます。それは防疫に関する情報を必要としており、また自国の防疫経験をもって世界に対して貢献することを望んでいるからです。

 しかし、蔡英文総統の就任以降、中国からの圧力もあり、WHOは台湾にオブザーバー参加さえも認めません。新型コロナウイルスの流行という緊急事態において、WHOから情報が即座に入ってこなかったのです。WHOは台湾が防疫関連の会合や活動に十分に参加することができると何度が公に表明しましたが、参加が認められたのは2月11、12日の緊急会合のみというのが実情です。台湾には2~3万人以上の日本人が住んでおり、台湾のWHO加盟は日本にも影響のおよぶ問題です。

(了)

【茅野 雅弘】


<プロフィール>
陳 忠正
(ちん・ちゅうせい)
1963年生まれ。国立政治大学外交学科卒業、同大東亜研究所修士号取得。1990年、台湾外交部入部。慶応大学で日本語研修。2016年9月、台北駐日経済文化代表処総務部長、2018年7月、台北駐福岡経済文化弁事総領事に着任。

(前)

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