2024年04月23日( 火 )

新型コロナ被害と賃料減額

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岡本弁護士

 新型コロナウイルス感染症に関する緊急事態宣言が延長され、営業自粛が長期化するなかで、中小事業者にとっては売上激減するなかでも固定費の支払いは発生しますので、これにともなう資金ショートを招きかねない状況に陥っています。
 今回は、固定費である家賃の支払いについて、家賃の減額や支払猶予ができないのかという点についてご説明いたします。

 家賃は家主(不動産所有者)と借主との間の賃貸借契約に基づき合意された金額ですので、「コロナウイルスの影響で休業せざるを得ない」「売上のメドが立たず支払い原資を確保できない」といった理由のみで、借主が一方的に賃料の減額などをすることはできず、原則として家主との合意が必要です。多くの契約書でも「協議の上、賃料を改定することができる」などと規定されているのではないでしょうか。

 なお、借地借家法32条1項には賃料減額請求という制度がありますが、この制度を利用しても、まずは調停を申立て、調停で解決できない場合は訴訟を提起するという流れになるため、裁判所の判断(判決)が出るまでに相当時間がかかってしまいます。そのため、迅速な対応が必要な現在の状況では、十分に機能しません。

 そのため、借主としては、賃料の減額などを家主に申し入れ、粘り強く交渉し、減額などを合意する必要があります。この場合、漠然と減額などのお願いをするのではなく、経営の窮状を正しく理解してもらうことが必要です。そのうえで、賃料の減額などが得られなければ借主も倒産や退店せざるを得なくなるなど、現行賃料の維持に拘泥すると結果として、家主にとってもデメリットになることを理解してもらうことが重要です。現実にリーマン・ショックを経験された家主は、退店後、長らくテナントが入らず、また大幅な減額で新テナントを募集せざるを得なかった経験から、減額などに応じておられる例も相当数あります。

 また、漠然と減額などのお願いをするのではなく、たとえば「3カ月間に限り、30%の減額」とか、「年末まで、家賃の半額については支払い猶予」というように、期間と金額を限定するなどして具体的に申し入れたほうが、家主も応じやすいのではないでしょうか。

 なお、国土交通省は3月31日、法的強制力はありませんが、賃貸用ビルの所有者などに対し、賃料支払いの猶予に応じるなどの「柔軟な措置」を取るよう要請しています。さらに、国土交通省は4月17日、テナント賃料の減額などに応じた家主のための施策として次の内容を発表しました。

(1)固定資産税・都市計画税を減免
(2)税と社会保険料の猶予措置
(3)減額・免除した家賃の損金算入を明確化

 これらの施策により、家主としても賃料の減免などに応じやすくなっているかと思われます。家賃の減免などの合意ができた場合には、その内容を書面により明確にしておくことが重要です。

 なお、本稿執筆時現在、国会で家賃支援策について活発な議論がされており、本誌発刊時点では新たな支援策が施行されている可能性がありますので、ご確認ください。
 コロナウイルス関連のご相談があれば、お気軽に下記までご連絡ください。


岡本綜合法律事務所
住所:福岡市中央区天神3-3-5 天神大産ビル6F
TEL:092-718-1580
URL: https://okamoto-law.com/

<プロフィール>
岡本  成史
(おかもと・しげふみ)弁護士・税理士
岡本綜合法律事務所 代表
1971年生まれ。京都大学法学部卒。97年弁護士登録。大阪の法律事務所で弁護士活動をスタートさせ、2006年に岡本綜合法律事務所を開所。経営革新等支援機関、(一社)相続診断協会パートナー事務所/宅地建物取引士、家族信託専門士。

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