2021年12月09日( 木 )
by データ・マックス

前駐ベトナム大使・梅田邦夫氏特別講演レポート「日本にとってのベトナムの重要性」(7)

 NetIB-Newsは、DEVNET INTERNATIONALから提供いただいた前駐ベトナム日本国大使・梅田邦夫氏の講演レポート((公社)ベトナム協会)をお送りする。今回は「ベトナムと韓国との関係」について。

ベトナムと韓国との関係

 ベトナムと韓国は1992年に国交を樹立しましたが、とくに、過去10年ぐらいの間に、経済関係を中心に2国間関係は急速に緊密化しています。

 その一方で、ベトナム戦争時代の韓国軍による虐殺や混血児問題は、この2-3年の間に国際的に注視されるようになってきています。
 ムン・ジェイン(文在寅)政権は、2017年、「新南方政策」を打ち出し、アセアンやインドとの関係強化をうたっており、経済と文化(韓流)において存在感を高めています。昨年11月、初の韓アセアン特別首脳会議をプサンで開催しました。
 その一方で、韓国は南シナ海問題など地域の政治・安全保障にかかわる問題について、北朝鮮問題を除き、立場を明確していません。

経済分野

 韓国は、ベトナムの貿易相手国としては、中国、米国についで、第3位(19年)です。韓国にとっても、ベトナムは中国、アメリカにつぐ、第3位の貿易相手国となっています。

 ベトナムへの国別累積投資総額は、13年までは日本が首位でしたが、現在は、韓国が1位です。サムスン、LG、ロッテ等の韓国企業は、アジアのなかでベトナムに対し重点的に投資しています。
 サムスンは、ベトナム人16万人を雇用し、世界で生産しているスマートフォンの約50%をベトナムで生産しています。また、ベトナムの輸出総額の約25%がサムスン製品です。中小の韓国企業も含めベトナム進出が続いています。

 ベトナムに住んでいる韓国人は約20万人(19年5月)、韓国企業数は8,000社以上と言われています。ちなみに、日本企業数は約3千数百社、ベトナムに住んでいる日本人は2万数千人です。

人的交流

韓国人観光客で賑わう中部の古都「ホイアン」

 昨年、ベトナムを訪問した外国人1,800万人(19年)のうち、1位は中国人(580万人、32%)、2位は韓国人(430万人、24%)、3位は日本人(95万人、5%)でした。

 韓国人の訪越者は、7年間で6倍増です。とくに、昨年は、日本旅行を中止した多くの韓国人観光客が、行き先をベトナムに変更したといわれています。

 昨年末時点での、航空便数は、日本―ベトナム間の週157便に対し、韓国―ベトナム間は、週618便で、日越間の約4倍の飛行機が飛んでいました。ベトナムでは、韓国は、今までのところ、非常に歓迎されており、ベトナム戦争時代の虐殺などを知る韓国人は、驚いています。

 ベトナム人の若者たちの間で、韓流ブームがあり、韓国に「かっこいい」というイメージを抱いています。
 また、ベトナムで一番人気のスポーツ・チームは、男子サッカー代表チームです。18年1月以降いろいろな国際大会で好成績を残し、国民を熱狂させてきました。代表チームの監督は、韓国人であり、韓国企業のコマーシャルでテレビ出演するなど、2国間関係強化に大きく貢献しています。

過去の問題

 その一方で、ベトナム戦争当時の韓国軍による民間人虐殺問題、また、ライダイハン(混血児)問題は未解決です。
 虐殺について、ベトナム人の友人によれば、100人前後の虐殺は13回、500人以上の虐殺も1回発生した由です。

 ベトナム戦争中、韓国人兵士や会社員とベトナム人女性との結婚で生まれ子ども、あるいは、韓国兵がベトナム人女性を強姦し、生まれた子どももおり、彼らは「ライダイハン」と呼ばれています。合わせると2~3万人という推計があります。
 過去の問題について、ベトナムは、1995年に米国との国交を開いた際に、対外関係は未来志向で行く、過去の暗い出来事はベトナム側から提起しない方針を決めたとされています。過去にこだわれば、中国、フランス、日本、英国、米国、韓国、カンボジアなど多くの国と関係はぎくしゃくし、国の発展に資することはないとの考えです。

 2018年3月、ムン・ジェイン大統領がベトナムを訪問した際、ベトナムとの「不幸な歴史」について、「遺憾の意」を表明しましたが、これまで、韓国政府による「真相の究明」や「被害者救済」は、一切おこなわれたことはありません。

 韓国軍による民間人虐殺については、20年4月、「虐殺の生存者」であるベトナム人女性が、韓国政府に損害賠償(約260万円))を求め、ソウル中央地裁に提訴しました。

 ライダイハン問題については、17年9月、「ライダイハンの正義」と呼ばれる市民団体がイギリスで設立されました。その設立目的は、「ベトナム戦争において韓国軍兵士からの性的暴行にあった女性たちが、過酷な人生を送っていること」を世界に周知させることを目的としています。
 当該団体は、ライダイハンを育てた7名のベトナム人女性に聞き取り調査を行っており、その報告書で「韓国兵は多くの女性に性的暴力を行い、慰安所で強制的に働かせていた」と記載されている。当該団体には、ストロー元外務大臣も関与しています。

 ベトナム政府関係者は、韓国に対して声を荒げて過去の行為を謝罪しろと求めませんが、50歳以上のベトナム人は、ベトナム戦争中の韓国軍の残虐行為などについてよく承知しています。ただし、若いベトナム人のなかには、残虐行為を知らない人が増えています。

 私は、約25年前に従軍慰安婦問題を担当し、「アジア女性基金」の理事の方々とともに韓国、フィリピン、台湾の運動団体の代表者と会う機会が何度かありました。当時から、とくに、韓国の運動団体関係者は、この問題を「日本を辱める格好の材料」として、活用しようとしていました。

(つづく)

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