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2020年07月01日 13:00

日本最大のフィクサー企業、電通の研究(中)東京五輪招致を仕切った黒幕は電通の高橋治之元専務だ!

 フィクサーとは、「(公正ではないやり方で)陰で仲介・調停することで報酬を受け取る黒幕的人物」(『広辞苑』)のことだ。さらに黒幕とは、「陰にあって画策したり指図したりする人」(同)をいう。
 日本最大のフィクサーを生業としているのが、国内最大手の広告代理店企業、(株)電通である。黒幕は、陰にあってこその黒幕だ。だが「上手の手から水が漏る」ということか、その所業が表に出てくることがある。

総務省も、マイナンバーポイント還元事業を電通に再委託

 電通“黒幕”の仕事は、それだけではなかった。マイナンバーカードを使ったポイント還元事業の事務を総務省から受託した「(一社)環境共創イニシアチブ」(以下、環境共創)は、実務の多くを電通に再委託していた。

 総務省によると、この事業で環境共創に支払われる金額は350億円。そのうちキャッシュレス決済事業者などへの補助金193億円をのぞくと、157億円が残る。このうち電通への再委託額は約9割の約140億円に上る。さらに、電通はグループ企業の電通ライブに実務を丸投げ。電通ライブからは、業務を外注していた。

 環境共創は、2011年2月に設立された。それまで省エネ関連事業を経産省から受注していた(独)が、民主党政権の事業仕分けにより受注できなくなったからだ。そこで、経産省と電通が組んで、受け皿の環境共創をつくった。経産省によると、環境共創は同省から過去3年間に受託した事業のうち、35件の計160億円分を電通に再委託していた。環境共創は、事業を電通に丸投げするための“トンネル会社”だったのだ。

電通のオリンピック利権の独り占め

 フィクサー企業、電通の最大の仕事が、東京五輪・パラリンピックである。電通は国際オリンピック委員会(IOC)をはじめ、国際サッカー連盟(FIFA)や国際陸上競技連盟(現・ワールドアスレティックス)、国際水泳連盟などと密接な関係を保っている。とりわけ、史上初の民間運営方式で行われた1984年のロサンゼルス五輪以降、関連団体と太いパイプを築いてきた。

 東京五輪の招致段階から、電通は大きく関与してきた。招致活動中の2009年3月に、当時の石原慎太郎・東京都知事は、招致活動の基礎調査などの特命随意契約を電通と結んだ。電通は単なる広告代理店ではなく、複数の企業・団体による共同体(コンソーシアム)の司令塔の役割をはたした。

 東京五輪では、電通は国内外の企業約80社と総額3,500億円に上るスポンサー契約を成立させた。大規模なスポンサー集めを素人集団の組織委員会ができるわけがなく、電通に頼りきった。

 組織委員会は、開会式・閉会式の企画、運営、出演者の調整や、聖火ランナーも電通に業務委託した。東京五輪のために、政府や都から巨大な資金が電通に流れた。東京五輪を裏で仕切ってきた電通は、オリンピック利権を独り占めしたのだ。

東京五輪の招致疑惑

 フィクサー稼業の電通の最大の汚点は、東京五輪招致に関する疑惑だ。世界陸連前会長でIOC委員だったミラン・ディアク氏(セネガル)は、東京五輪誘致の不正疑惑により、フランス検察当局の捜査を受けている。

 東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会の理事長を務めた日本オリンピック委員会(JOC)前会長・竹田恒和氏は、18年に仏当局から事情聴取を受けた。東京五輪開催の実現を確約するために2億5,000万円を支払ったという疑惑のためだ。竹田氏は、19年6月にJOC会長を辞任。トカゲのしっぽ切りならぬ、頭のすげ替えで幕引きを図ろうとした。

 だが疑惑の火種は、その後も燻り続けた。ロイター通信は3月31日、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の理事で、電通元専務の高橋治之氏が、13年の招致成功までに820万ドル(約9億円)を東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会から受け取っていたと報じた。高橋氏は、国際オリンピック委員会委員らにロビー活動を行っていた。

 ロイターの取材に対して、ロビー活動の一環として、デジタルカメラやセイコー社の腕時計をディアク氏に渡したことを高橋氏は認めた。しかし、「手ぶらでは行かない。それが常識だ」と述べ、国際オリンピック委員会の規定に反しておらず、良好な関係を築くための贈り物だとした。

不正疑惑のキーマンは元電通専務の高橋治之氏

 高橋治之氏が、五輪の招致不正疑惑のキーマンである。高橋氏は、バブルの時代に「環太平洋のリゾート王」と呼ばれたイ・アイ・イ・インターナショナル総帥だった故・高橋治則氏の実兄だ。イ・アイ・イに巨額の融資をした日本長期信用銀行(現・新生銀行)の経営が破綻したため、治則氏は「長銀を潰した男」の異名をとる。

 電通の第9代社長の故・成田豊氏の側近として、高橋氏は頭角を現した。1981年に、電通取締役になった成田氏は、海外のスポーツにビジネスチャンスを見出した。

 転機は、84年のロサンゼルス五輪でスポーツに商業主義が持ち込まれたことだった。やがて巨大スポーツ利権ができた時代に合わせて、オリンピックだけでなくサッカーのワールドカップやF1などでも、放映権の卸売とスポンサー集めによる巨大なスポーツビジネスを成田氏は確立した。その実績が評価されて、成田氏は93年に電通の社長に就任した。「電通の天皇」と呼ばれるほどの権勢を誇った。

 成田氏のもとで、30代のころから世界のスポーツ機関とわたりあい、数千億円規模ともいわれる放映権料の取引の最前線に立ってきた人物が、高橋治之氏である。電通のスポーツ利権を牛耳り、飛ぶ鳥を落とす勢いで出世階段を駆け上がり、専務取締役にまで上り詰めた。2009年に電通を退社して顧問になっても、海外がらみのスポーツ利権には必ず名前が出てくる。東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の理事に名を連ねた。

(つづく)

【森村 和男】

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