コンパクトシティ・福岡 4つの高級住宅街の特徴(5)
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百道浜(早良区) ハイソな新興住宅地
西新の北側の海岸沿いに位置する「百道浜」でも、80年代には再開発の動きが活発化していった。地名にある「百道」とは、干潟だった同エリアを行き来する人たちの足跡が、縦横無尽に交差する様を「百の道」と表現したことに由来する。
海とのつながりが深い百道浜だが、再開発はその海を埋め立てることから始まった。埋立ては82年に始まり、4年の歳月を経て完了。人工ビーチ「シーサイドももち」が生まれ、87年から市民らの手で植樹が続けられたことで、砂浜だけでなく松原のある景観も取り戻した。89年には「アジア太平洋博覧会」(通称:よかトピア)の開催地にもなり、開催に合わせて建設が進んでいたランドマーク「福岡タワー」も竣工。市内外でその存在感を向上させ、まちとしての開発は加速した。
開発が進むなかで、話題となったのが積水ハウス(株)による分譲住宅販売だ。百道浜4丁目で22戸販売という計画で、最高販売価格は約1億9,800万円、最低販売価格は約8,700万円。1戸あたりの平均販売価格は約1億2,000万円で、90年当時としては衝撃の1億円住宅の登場となった。
その後、百道浜エリアでは矢継ぎ早に商業施設がオープンしていく。93年に「福岡ドーム」(現・PayPayドーム)、95年に「シーホークホテル&リゾート」、96年には福岡市総合図書館が開館。近接する地行浜では2000年に「ホークスタウンモール」(現・MARK IS福岡ももち)が開業し、近隣住民の買い物需要と遊興需要を満たしていった。
20年現在も、既存施設のマイナーチェンジや大胆なリニューアルを通じて、まちの景観は更新され続けている。しかし、百道浜が醸し出す“ハイソ”な雰囲気は、キリスト教主義学校でもある西南学院大学(住所は百道)。福岡インターナショナルスクール(FIS)、キンダーキッズインターナショナルスクール福岡校といった、国際色の豊かさにも起因している。ツーリングやジョギング、ショッピングを楽しむ外国人の姿は日常的に目にする。シーサイドという立地も開放感があり、百道浜エリアに対する評価を押し上げている一因と考えられる。
今回、市内4エリアの高級住宅街を取り上げたが、そのいずれも他都市と比べて都心部に近い場所に形成されているのが特徴だ。閑静で品格のある住環境でありながら、都市の利便性も享受できるという立地は、「コンパクトシティ」と形容される福岡市ならではの強みといえる。都市開発が旺盛な福岡市内にあって、流行に左右されることなく、街として確固とした品格とブランドイメージをもった高級住宅街は、これからも威風堂々たる存在感を示し続けていくことだろう。
【坂田 憲治/代 源太朗】
(了)
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