3月に公表された今年の地価公示は、引き続き福岡市内の全標準地291地点が前年比で上昇する結果となった。用途別平均変動率は、住宅地が7.0%、商業地が9.0%、工業地が11.3%、全用途平均は7.8%。上昇は続くものの上昇幅は縮小するトレンドが続いており、価格水準そのものは高まりながら、伸び率は落ち着きを見せ始めている。天神・博多が安定推移する一方、箱崎や姪浜、大橋、六本松~大濠といった周縁エリアの地価上昇が目立っている。
竹下駅&ららぽーと周辺
ビール工場の開発に期待
JR竹下駅から徒歩4分のアサヒビール博多工場について2月、土地を所有するアサヒビールがJR九州らと売買契約を締結したことがわかった。土地の引渡は29年12月の予定で、敷地面積3.8万坪超の広大な工場の跡地が再開発される見通しとなった。エリアの詳細は後述するが、JR竹下駅~笹原駅区間の周辺は、ららぽーと福岡の開業(22年4月)以降、地価上昇が顕著となった。今年も住宅地では、那珂1-8-25(8.0%)、麦野3-17-24(8.4%)、諸岡1-24-10(8.2%)、三筑1-3-8(10.0%)が、商業地では諸岡1-23-27(8.6%)が大きな上昇となった。いずれも公示価格は、この5年で約2倍となっている。
ららぽーと福岡は青果市場の跡地を開発したものだが、その周辺には卸業者の物流倉庫など、青果市場に関連する施設が多数集積していた経緯があり、青果市場の移転とともに周辺の土地も動くこととなった。起伏が少なく、比較的区画の大きな土地が確保しやすかったことなどから、周辺ではマンション開発が活発化。住宅需要の高まりに加え、福岡市中心部の地価高騰の影響もあり、ららぽーと周辺は一躍人気の住宅地となっていった。
今回の地価公示では、これまでのような10%超の上昇とまではならなかったものの、アサヒビール博多工場跡地の開発計画が本格化するころには、再び注目を集めても不思議ではない。
カシムラHDがマンション開発へ
竹下駅から徒歩7分、アサヒビール博多工場跡から直線距離で約200mの立地で、カシムラホールディングス(福岡市中央区)が開発用地を取得し、賃貸マンションの開発を検討している。取得は2025年9月で、敷地面積は424坪。用途地域は第1種住居地域、容積率200%、建ぺい率60%、第二種20m高度地区。ららぽーと福岡へも徒歩約15分と、生活利便性の高いエリアだ。
同社の代表取締役CEO・樫村尚明氏は「ファミリー向けと単身向け、それぞれ1棟の賃貸マンション開発を予定しています。取得後に明らかになったアサヒビール博多工場跡の再開発は嬉しい誤算でしたが、博多駅から1駅というアクセス性と駅近立地を評価し、購入に至りました」と話す。
同社はオフィスビルやテナントビル、賃貸マンションの開発に加え、既存ビルのバリューアップ事業も手がける。「基本的には福岡市内でも博多駅周辺・天神周辺にエリアを絞って事業展開しています。それ以外のエリアについては、需給動向など市況を見極めたうえで投資判断を行っています」と加えた。
今年1月には、地下鉄・東比恵駅から徒歩5分で開発した賃貸マンションを竣工と同時に売却するなど、博多・天神エリアで豊富な実績があり、現在(4月時点)も、西鉄・薬院駅から徒歩数分の立地で開発を計画している。また、地下鉄・六本松駅から徒歩3分、国道202号沿いのテナントビルを1月に取得しているが、こちらは長期保有の方針だ。
「単に買って売る、というのではなく、開発やバリューアップを通じて、街や地域の価値向上に少しでも寄与していきたい」(樫村CEO)。
六本松~大濠周辺
圧倒的な「大濠」ブランド
住宅地の価格順(149万円/m2)、上昇率順(13.7%)ともに1位となったのが、大濠1-13-26。地下鉄・唐人町駅から徒歩10分、同・大濠公園駅からも徒歩13分、同・六本松駅からも徒歩14分の大濠公園に隣接する立地だ。大濠エリアは、言わずと知れた福岡随一の高級住宅地だが、なかでも大濠公園の南西部をぐるっと囲む大濠1丁目は最高級の住宅地。同じく1丁目では、九電不動産(株)が高級分譲マンション・グラウンディ大濠(10戸)を28年3月竣工予定で計画している。専有面積は85.05m2からで、最上階のプレミアムルームは3層構造で250m2超となる。プレミアムルームの販売価格は、5億円超と見て間違いないだろう。
那の津通り沿いの荒戸1-5-20(10.0%)、大濠公園駅から徒歩1分の大手門3-4-22(10.9%)、同徒歩3分で明治通り沿いの荒戸2-1-5(10.1%)と、大濠エリアは軒並み大きく上昇。さらに、大濠公園の南側、六本松駅から徒歩4分で国道202号沿いの六本松2-2-8(10.8%)も、大きく上昇した。
大濠アドレスの売買はそれほど多くないが、大濠公園北側では、大手門・荒戸・港、南側では草香江・六本松、西側では今川などで不動産売買が活発に行われており、マンションやテナントビルなどの開発も相次いでいる。唐人町駅から徒歩6分では、(株)フージャースコーポレーションが高級賃貸マンションを開発しており、こちらも動向が注目されている。
再開発期待の箱崎周辺
人気の西新・藤崎周辺
商業地の上昇率1位は、地下鉄・箱崎九大前駅から徒歩7分程度の箱崎3-13-15(18.1%)。箱崎3丁目は、28年度にまちびらきが予定されている九大・箱崎キャンパス跡地に隣接するエリアで、近年は地価が急上昇。この5年で2倍以上となっている。また、東区からは住宅地の上昇率9位に箱崎6-11-1(11.2%)、10位に箱崎1-26-1(同)がラインクイン。九大・箱崎キャンパス跡地の再開発に加え、JR駅や地下鉄駅が充実していること、幹線道路沿いを中心に高容積であることなどから、賃貸マンション開発が活発化しており、それにともない売買も数多く確認される。
地下鉄・西新駅~藤崎駅エリアでは、高取1-1-42(12.6%)、西新2-1-3(11.4%)、西新5-9-21(12.4%)がいずれも高い上昇率となった。これらは、5年以上も続けて2ケタ増の伸びを示している。早良区最高値は、西新駅から徒歩1分の商店街沿いの西新4-9-13(135万円/m2)、2位は西新2-1-3(127万円/m2)だが、いずれも上昇率は鈍化傾向となっているものの、依然として大きな伸びとなった。
西新駅の周辺では、賃貸マンションや開発用地の売買が多く行われており、国内大手企業やファンドによる取得も散見される。
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福岡市内の公示地価は、住宅地・商業地ともに上昇を継続した。前年までのトレンドと大きく変わらない結果となったものの、上昇率鈍化の傾向がより顕著になった。市内中心部では、依然としてホテル用地が高値で取引されており、「坪単価1,000万円」がスタンダードになりつつある。200~300坪のまとまった土地ともなれば、坪単価1,700万円も散見されるほどだ。
ただ、資材をはじめとした建設コストの高騰は続いており、3,000万円台・4,000万円台といったボリュームゾーン向けの分譲マンションの開発は、より難易度が高まっているほか、建売を中心とした戸建住宅の販売も鈍っており、地価の二極化はより顕著になっていきそうだ。
(了)
【永上隼人】

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