変貌しつつある大阪港~「阪神港」はどう生まれ変わるか?(4)
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2020年07月03日 07:00

変貌しつつある大阪港~「阪神港」はどう生まれ変わるか?(4)

 近年、大阪港への注目が高まっている。そのきっかけは、大阪港に浮かぶ人工島「夢洲(ゆめしま)」での大阪・関西万博開催、IR(統合型リゾート)誘致だ。大阪港は、古代から住吉津、難波津と呼ばれ、交易・交通の要衝として発展。江戸時代には「天下の台所」として、日本の物流、商業の中心地として栄えた。これを支えたのが、日本全国を網羅する水上交易ネットワークだった。大阪港が近代港湾として開港したのは1868年。以来、国際貿易港として、大阪市を中心とする近畿圏の経済活動、市民生活を支えてきた。現在も日本の“五大港”(東京港、横浜港、名古屋港、大阪港、神戸港)の1つに数えられる。大阪市は2019年、大阪港港湾計画を13年ぶりに改訂。物流、交流、環境、防災の4つを柱にしたみなとづくりを進めている。大阪港は今後、どのような変貌を遂げるのか。今回、物流、クルーズ、万博、IRの4テーマに絞り、それぞれの現状と課題などについて取材した。

管理者が異なる港湾~一体運用の難しさ

 港湾運営会社制度の狙いは、複数の港のコンテナターミナルなどで、民の視点による一体的なターミナル運営の効率化を図り、港湾の国際競争力を強化することにあるが、港湾管理者が異なるゆえの難しさもある。京浜港は、東京港、横浜港、川崎港の3港で指定を受けたが、横浜川崎国際港湾には肝心の東京港は参加していない。指定後も、東京港埠頭(株)が引き続き運営を続けている。将来的に東京港が合流する可能性はあるが、港湾管理者として東京港への関与が弱まることへの懸念がうかがえる。

 設立から6年が経った阪神国際港湾も、組織として一枚岩になっているとはいえない。「今でもお互いライバル」という意識が残っている。そういうライバル意識は、たとえば、集貨した貨物をどちらの港で受け入れるか、どこの業者が取り扱うかといった場面などで顕在化する。

 大阪市は、大阪府と共同で、大阪港、堺泉北港、阪南港などの府営港湾の業務の一元管理に向け、20年10月に大阪港湾局を設置する予定だ。権限や財産、港湾管理者に変更はないが、府市の港湾局が行う業務、職員をすべて大阪港湾局に一元化することで、マネジメントやサービスの向上を図る。大阪都構想に向けた布石の1つだが、将来的には神戸港を含めた一元化までも視野に入れている。

 大阪の一元化に呼応する動きは、神戸市では今のところ見られない。なお、有識者のなかには、「一元化自体に具体的なメリットがない」と指摘する声もある。それはともかく、それぞれの首長、組織のスタンスの違いが、港湾運営の方向性に少なからず影響をおよぼすことは十分考えられる。

 ある阪神港の関係者は、「日本は港が多すぎて、集貨が各港に分散している。これでは海外の港に追いつけない。かといって、インセンティブを呼び水にして、他港の貨物を自分の港に取り込むのも容易ではない。そもそもこういう港湾行政のやり方自体、経済原理に反しているのではないかという疑問がある」と言い放った。この言葉に接したとき、日本の港湾政策に対する「行き詰まり感」を禁じ得なかった。そして、そもそも港湾政策だけで何とかできる問題ではないのかもしれない。

(了)

【大石 恭正】

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