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2020年07月03日 13:30

イージス・アショア中止は日本発の防衛システムへの転換点(2) 未来トレンド分析シリーズ 

国際政治経済学者 浜田 和幸 氏

 残念ながら、縦割り組織の弊害もあり、そのような検討は行われず、ロッキード・マーティン社と仲介した三菱商事が「一番おいしい汁にありついた」と言われていた次第である。なぜなら、日本がLMSSRを採用することになれば、アメリカの企業から直接購入するDCS(一般輸入)となるため、FMSと違い、試験や整備にかかる経費はすべて日本政府の負担になるからだ。たとえ欠陥が見つかった場合でも、アメリカ政府は補償責任を問われない。これは実に日本を食い物にしたディールとしか言いようがない。

 こうした経緯からも明らかなように、日本にとって本当に国土防衛上役立つのか、費用対効果がどこまで期待できるのか、自前の評価作業や実証実験のないまま、アメリカの提示する売込み用の資料に基づき導入を決めてきたのである。まさに「導入ありき」で、「安倍・トランプ」ラインで決まったことには「口をはさむことはタブー」とされてきた。

 確かに、北朝鮮によるミサイル発射実験は我が国にとっては大きな脅威である。2017年には日本海に向けての発射に止まらず、日本本土を飛び越え、太平洋に着弾するような事態も発生した。しかも、北朝鮮はアメリカ主導の国際的な経済制裁を受けていながら、金王朝の体制維持を最優先し、制裁の抜け道を探り、非合法手段もいとわず資金を調達し、軍事力の増強には手を抜こうとはしていない。

 金正恩体制がとくに力を入れて開発を進めているのが、中距離弾道弾である。大陸間弾道弾であればアメリカ本土も射程に入るためアメリカの猛反発を招く。トランプ大統領から先制攻撃を受ける可能性もある。その点、中距離弾道ミサイルであれば、アメリカも「大目に見てくれるはず」で、韓国や日本を恫喝するには「持ってこい」というワケだろう。

 実際、北朝鮮の戦略には注目すべき点がいつくかある。たとえば、北朝鮮の中距離弾道弾は高度50kmの低軌道飛翔が特徴で、大気圏での可変飛行ができる。また、高軌道のロフテッド(通常より角度を上げて高く打ち上げる)弾道ミサイルは迎撃するのが極めて難しい。しかも、北朝鮮は小型核弾頭を弾道ミサイルに搭載し、ロフテッド弾道で打ち上げる「核EPM攻撃」の準備も余念がないとされる。

 これこそ、日本にとっては「悪魔の兵器」に他ならない。なぜなら、高度400km上空に打ち上げられたミサイルのロケット・モーターがバーンアウト(燃え尽き状態)した時点で、小型の核爆弾が爆発する仕掛けになっているからだ。その結果、大量のマイクロ波が放出される。

 すると、地上の電子機器は共振し、すべてが破壊されることになる。日本のインフラを支えるコンピュータ・システムがEPM(電磁波)によって機能不全に陥れば、日本は迎撃どころか、社会基盤そのものが総崩れになるだろう。個人、企業、政府機関を問わず、その被害は前代未聞の規模になることは火を見るよりも明らかだ。

(つづく)

<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)

 国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。最新刊は19年10月に出版された『未来の大国:2030年、世界地図が塗り替わる』(祥伝社新書)。2100年までの未来年表も組み込まれており、大きな話題となっている。

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