低層から超高層まで 木造建築の可能性とは
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2020年07月06日 07:00

低層から超高層まで 木造建築の可能性とは

 低層から超高層まで、各社の木造建築物の建設や計画が進んでいる。RC造やS造などにない特徴がある木造は、これからどのような建物に展開されるのだろうか。木造建築特有の課題を、今後どのように克服できるのか。CLTを生かした新しい建物の可能性を見つめた。

三菱地所が東京・晴海に展示施設~「CLT PARK HARUMI」を開業

 三菱地所(株)は、CLTの魅力を体験できる「CLT PARK HARUMI」(2019年11月竣工)を東京都中央区晴海で開館している。CLT構造材が見える状態で仕上げていて、木の温もりや触り心地を楽しめるつくりだ。3,368.88m2の敷地にCLTと鉄骨の混構造のパビリオン棟(1階建、延床面積601.38m2)、CLT造の屋内展示棟(2階建、延床面積985.38m2)、展示別棟(1階建)からなる建築物であり、(株)三菱地所設計が設計し、隈研吾建築都市設計事務所がデザインを監修、三菱地所ホーム(株)が施工している。

 施設は一般開放しており、「DISCOVERY LEAF/デジタル落ち葉遊び」(パビリオン棟)、デジタルスキル習得施設「Grow with Google ラーニングセンター」(屋内展示棟A棟)、岡山県ご当地メニューのカフェ「CLT PARK Café」(屋内展示棟B棟)、CLTのPRスペース「CROSSING FOREST」(同B棟)などの内装に木材を使い、遊びながら木に触れ合える。

展示施設「CLT-PARK-HARUMI」
Grow-with-Google-ラーニングセンター

 地方創生を企図して、岡山県真庭市のヒノキ材・杉材からなるCLTを施設全体で約680m3利用した。「適材適所を見極めて、効果や魅力を生かした開発に取り組んでいる。省エネルギー・炭素貯蔵効果のある建築物を普及させていきたい」(三菱地所)。パビリオン棟では、柱梁構造の梁の一部をCLTで構成している。

 「軽量かつRC造に匹敵する強度や、工場加工による現場の手間削減により、工期を約3カ月短縮したという実績もある」(三菱地所)。今年秋までの運用後は、解体して岡山県真庭市の国立公園蒜山に移築される予定だ。

 CLTを構造材として利用した8階建て事務所の「PARK WOOD office iwamotocho」(東京都、20年3月竣工)、(株)ロイヤルパークホテルアンドリゾーツの高層ハイブリット木造ホテル「(仮称)大通西1丁目プロジェクト」(北海道札幌市、21年開業予定)などを手がける三菱地所では、将来的には超高層建築物の木質化を目指していくという。

大林組は耐火純木造で、高層の企業研修施設を着工

企業研修施設の外観
企業研修施設の構造

 (株)大林組は、柱、梁、床、壁のすべての構造部材を木材でつくる地上11階建の企業研修施設(神奈川県横浜市、22年3月竣工)に3月に着手した。敷地面積は563.28m2、延床面積は約3,620m2だ。

 耐火純木造の企業研修施設では、木の空間によるリラクゼーションや湿度調整の効果を狙い、床や耐力壁、階段などにCLTを使用する。宿泊室には、軽いCLTの課題である衝撃音遮断性能を高めるため、CLTパネルの上に木製の根太床を2段重ねて衝撃音を低減する「CLT遮音床」を新たに開発して採用する。さらに構造部材の耐火対策のため、内部の耐火層に石膏ボード、燃えしろ層となる表面や芯に木材を使う3層構造の3時間耐火木材技術「オメガウッド(耐火)」を日本で初めて使用する。

 木材で中高層建築をつくるには、柱と梁の接合部の剛性や耐力を高めることが必要だ。そのため、柱と梁を一体化した「金物を使わない剛接合仕口ユニット」を開発した。免震構造に同ユニット工法を組み合わせて、耐震性を高める。「耐火仕様をはじめとする木造技術の開発に取り組んでいる。今後はCLTをオフィス、集合住宅、宿泊施設などに使っていきたい」(大林組)。

住友林業の地上70階建、木造超高層ビルの開発構想

地上70階建のW350計画(提供:住友林業・日建設計)

 住友林業(株)は、41年を目標に地上70階建の木造超高層ビルの実現を可能とする研究技術開発構想「W350計画」を発表している。店舗やオフィス、ホテル、住宅を備えた高さ350mの木造超高層ビルでは、18万5,000m3の木材を使用する。総工費は約6,000億円で、従来型超高層建築物の約2倍と試算されている。高層建築物を木造化・木質化するため、木材比率9割、鉄1割の木鋼ハイブリッド構造を採用し、環境木化都市を目指す。

 建築面積は6,500m2、延床面積は45万5,000m2で、住友林業が全体のプランを担当し、(株)日建設計が設計協力した構想だ。建物外側は木を使ったバルコニー状のデザインで、地上から高層階まで緑を感じる空間を計画している。木材と緑が見える外観で景観に配慮し、建物内部は純木造で木の温もりを感じる空間をつくる。

 超高層建築物のため、地震や風などの横からの力による建物の変形を防ぐ目的で、木材と鋼材を組み合わせた柱・梁の枠組みに対角線上にブレースを入れた耐力壁と、建物外周部に配置するブレースチューブ構造を採用する。さらに、計画ではカラマツ集成材を検討しているが、「CLTが持つ反り返りや収縮が起きにくく、加工しやすい点に注目し、中大規模木造建築物でのCLT活用の可能性を模索している。今後の技術開発次第では、W350計画でもCLTを使用する可能性はある」(住友林業)。

 W350計画の木材構造材18万5,000m3で、約14万t-CO₂相当を炭素固定できると見込んでいる。今は構想段階のW350計画だが、建築コスト削減や耐火・耐震・耐久性能の向上、新部材や工法などの技術開発を進め、経済的に実現性を高めていく予定だ。

スカイロビー

【石井 ゆかり】

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