2022年01月20日( 木 )
by データ・マックス

普及に課題山積も「魅力的」 福岡のCLT 施工事例(後)

ブルク 池松 正剛 社長

 (株)ブルクは、賃貸住宅や店舗、ホテルなどのデザイン会社で、自社で所有するアパートなどのデザインも手がけてきた。「自然との相性は抜群です」と話すブルクの池松正剛社長は、「県内の自治体が行った町営住宅のコンペでは、CLT工法を提案しました。残念ながら採用にはなりませんでしたが、CLT工法の低層住宅、ビオトープを採用した外構など、自然豊かな周囲の環境と調和させたプランでした」とCLTの特徴やメリットを生かしたプランを紹介してくれた。

 CLT工法は、北米やヨーロッパでは10階建て以上の高層ビルの実績があるが、日本ではコストが高くなり、鉄筋コンクリートを上回るメリットが小さい。さらに、建築基準法の規制によって、最大の特徴である構造躯体としての木目を見せることができない。木材のアイデンティティを生かす、というデザイン面でのメリットも小さくなるというわけだ。「これには、建築基準法の防耐火規制が関わってくる。ただ、たしかに表面は焦げるが、CLTの延焼しにくさは鉄筋コンクリートにも匹敵する」と両者は口をそろえ、機能面で耐火被覆の有無は必要不可欠ではないことを主張する。

 確認申請などの行政手続きに大幅に時間を取られることも、両者が共有した課題だ。行政にもノウハウがないからだ。ただ、これらのコストは、CLTが普及すれば改善の余地はある。

  

 (株)采建築社(福岡市早良区)の親会社・SAI GROUP HOLDINGS(株)は、CLTで組まれた2.3×4.6×3mの箱型ユニットを開発。工場で構造体であるユニットを組み、 基礎の上に据え置き連結することで、工期を大幅に短縮できるというものだ。耐震等級3を実現し、ニーズに合わせて、ユニットの組み合わせを自由に設計することで、個性的な建築を可能にし、さまざまな用途に対応できるという。

 このように、13年にJAS(日本農林規格)が制定され、CLTの建築基準関連告示が16年に施行されたことで、福岡でもCLT工法は注目され始めた。

 我が国では、放置されている森林が多数ある。森林を適正に育成するには下刈りや枝打ちなどの手間がかかり、国産材の価格は高くなりがちだ。そのため、安い外国産の木材が多用される一方で、国産材の需要が低迷し、国内の森林放置につながっているというわけだ。
CLTには「コンクリートにも匹敵する強度」「工期の短縮」を始め、多くのメリットがある。我が国は、国土に占める森林面積が世界的にも広い森林国だが、残念ながらその多くが前述したように、放置ないし管理されていないのが現状だ。地震に強く、断熱性も高く、高層建築にも使えるCLTは、在来工法と比べても広く建築物へ活用されることが期待されている。

 新しい材料および工法であることから、「どこから取り組んでいいのかわからない」というのがプロの設計施工業者の本音だろう。建築基準法による規制、建材のコスト、行政の手続き、金融機関の評価など、たしかに課題は山積みだ。しかし、建材のコストを除けば、課題は概念的なものであり、建材のコストも普及すれば解消できる可能性もある。すべての建物がCLTである必要はないが、CLTには多くの可能性があるのは間違いないはずだ。今回取材した県内企業からは、CLTに関する情報共有に積極的な姿勢がうかがえた。とくに、地元での普及は彼らも望むものであり、そのための活動は惜しまないだろう。

(了)

【永上 隼人】

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