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2020年07月07日 14:04

この世界、どうなる?(9)中国が好きだからこそ、苦言を呈す!

広嗣まさし(作家)

 アメリカのトランプ大統領は中国に対して本気で怒っている。私が中国に対して抱く怒りの理由は異なっているものの、トランプ大統領が怒っていること自体には共感できる。私の場合は、「中国はいい国だ。その真価をどうにかして世界に知ってもらいたい」という気持ちを強くもっていた。それゆえ、相当に裏切られた思いがしている。

 習近平政権の中国は、彼が首領となって以降一貫して批判の対象になっていた。しかし私は、それはアメリカのメディア戦略の産物にすぎないと考えていた。「実際のところはどうなのか」と感じて、しばしば中国を訪問し、信頼のおける友人も何人かできた。なおさらのこと、中国が今のような国になってしまったことに憤慨せざるを得ない。

 コロナウィルス発生に関するニュースの隠蔽、情報操作がなされた。コロナは中国ではもはや退治されたと強調し、欧米の対応のぶざまさを指摘して医師団を派遣したりする一方で、南方海上に軍艦を繰り出し、インドとの国境で紛争を起こし、尖閣諸島付近に軍艦を出没させる。その極めつきが、香港の法制改革による政治的自由の蹂躙である。一体どうして、そういうことになってしまったのか。習近平氏は、よほど権力を振り回したいのか。よほど、「中国は強いぞ」と見せびらかしたいのか。どう見ても、不安な心の裏返しに感じられてならない。

 日本人のなかには、中華文明に対する敬愛、歴史的変遷の偉大さに対する憧れという感情を抱いている人もいる。私にもなかったわけではないが、それだけではなかった。中国へ行くたびに、とくに中国の地方を旅するたびに、そこで出会った普通の中国人の人間としての暖かさや心の広さに触れて、やっぱりここは人間の住むところだ、古くからの文化が人々の心に染み込んでいると感じてきた。これを儒教に帰すべきか、道教に帰すべきか、そんなことはどうでもよい。中国はその名の通り「人民の国」であり、この国を支えているのは、共産党よりはるかに長い歴史をもつ普通の人々なのだ。

 ところが、今の中国政府がしていることは、世界を敵に回すことばかりではないか。これでは、中国人があまりにも気の毒だ。ほとんど何も知らされることなく、彼らは日々何とか耐えて生きている。

 私が中国を好きになった理由はいくつもある。一例を紹介すると、数年前に中国に渡った時のことだ。道元禅師が宋に渡ったその港・寧波(ニンポー)のなんともいえない雰囲気が気に入った。料理も味が穏やかで、人々の気分に調和していているように感じられたのだ。港の埠頭付近で1日過ごし、夜になってタクシーでホテルに戻ろうとして、ホテルの住所を紛失してしまったことに気づいた。

 かろうじてホテル名は思い出せたが、運転手にホテル名を書いて見せても「わからない」と首を振られる。それでも車に乗り込み、運転手は少し走っては止まり、窓越しに場所を聞きながら進んだ。そんな風にして、20分か30分が過ぎた。

 自転車に乗った若い男が向こうからやってきて、のろのろ運転のタクシーに向かって「何を探しているのか」と聞いた(ようだった)。運転手がホテル名を見せると、その男が、いきなり自転車を道端においてタクシーに乗り込んだ。そして、運転手の隣に座り、なにか説明している。

 車が走り出しても、男はタクシーからいっこうに降りない。目的地まで一緒に行くつもりなのか。自転車はどうなるのだろうと心配しても、本人は少しも気にしていない。しばらく走って見覚えのある通りに入ると、もうそこはホテルだった。乗り始めてから50分経っていた。私は男と運転手に何度も礼をし、料金も多めに払おうとしたが、運転手は首を横に振った。一方、その親切な男は手にもっていた紙袋から饅頭をとり出して、私に食べろという仕草をする。さすがに驚いたが、断れば気を悪くするだろうと感じて、受け取った。

 このような経験を、中国では何度かしている。「これが中国なのだ」とその都度感じた。このような国であればこそ、習近平政権の酷さになおさら腹がたつ。中国はメンツを大事にするというが、習近平氏の行いのために、中国の民の面目は丸つぶれではないか。

 トランプ大統領はコロナウィルス災禍を中国の不誠実な対応のせいだとし、アメリカや世界各国に甚大な被害を与えたことを怒っている。私に言わせれば、習近平氏の嘘でもっとも大きな被害を被っているのは、中国人民である。共産党は香港人を蹂躙(じゅうりん)しているが、その前から自国民を蹂躙している。政府のため、お国のために汗を流して文句も言わずにいる人々に対して、あまりに横暴ではないか。

 習近平氏は中国をダメにし、中国人を圧殺しているようにみえる。このような政府には生まれ変わってほしいと願う。こう願うのは中国が嫌いだからではなく、大好きだからである。あの寛大な人々、忍従の人々。人々を蹂躙して平気でいられる政府には存在して欲しくない。「俺は中国が大好きだ!」だからこそ、現体制の変化を願う。

(つづく)

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