2024年12月12日( 木 )

【株主総会血風録1】大戸屋ホールディングス~買収を仕掛けたコロワイドが戦わずして“戦線放棄”の奇々怪々(5)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 定食チェーン「大戸屋ごはん処」を運営する(株)大戸屋ホールディングス(以下・大戸屋)が6月25日に都内で開いた定時株主総会で、筆頭株主の外食大手(株)コロワイドが提案していた取締役候補の議案が否決された。総会にはコロワイドは出席せず、株主提案の説明もなし。買収を仕掛けたコロワイドは”戦線放棄”したのだ。奇々怪々というほかはない。

コロワイドに有利だが、個人株主にはメリットはない第三者割当増資

 なぜ、コロワイドは最初からTOBを仕掛けなかったのだろうか。そしてなぜ、個人株主は株主総会でコロワイドの株主提案に反対票を投じたのだろうか。
 理由は、はっきりしている。コロワイドが安い株価のままで大戸屋を買収しようとしたからだ。そうなると、個人株主には何のメリットもなく反対するだろう。

 コロワイドは、大戸屋の株主総会で経営陣を刷新する株主提案を提出した。大戸屋の取締役会の刷新で、過半数をコロワイド側の人選で占め、経営権を握るという戦略だ。経営権を掌握したら、コロワイドを引受先とする第三者割当増資で、持ち株比率を50%に高めて、連結子会社化するという計画だった。

 第三者割当増資は、株式を安値で引き受けることができるため、コロワイドには有利だ。だが、既存株主には、株式価値の低下を招くだけで、まったくといっていいほどメリットがない。せいぜい、コロワイドが3月に実施したアンケート調査に回答して、3,000円相当の食事券がもらえた程度だ。

 コロワイドは、買収したあかつきには、500株以上を持つ株主にコロワイドグループで使える4万円分の食事券を贈る方針を示した。「撒き餌で個人株主を釣り上げよう」という作戦だ。
 ただし個人株主の立場からいえば、そんなはした金になびくわけにはいかない。大戸屋を買収したいのなら、「少数株主にきちんとカネを払うべきだ」となる。

 少数株主にとって、「金が成るM&A」はTOBである。株価の3~5割のプレミアムがつくため、高値で売り抜けることができるからだ。
 大戸屋の株主総会で、個人株主が経営陣に賛成し、コロワイドに反対した理由は明々白々だ。「大戸屋を買収するならば、正々堂々とTOBで買収すべきだ」という意思表示である。
 個人株主の意思表示を受け取ったコロワイドは、「勝算あり」と踏んでTOBに踏み切ったわけだ。

(つづく)

【森村 和男】

(4)
(6)

関連キーワード

関連記事