2024年12月10日( 火 )

【株主総会血風録1】大戸屋ホールディングス~買収を仕掛けたコロワイドが戦わずして“戦線放棄”の奇々怪々(6)

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 定食チェーン「大戸屋ごはん処」を運営する(株)大戸屋ホールディングス(以下・大戸屋)が6月25日に都内で開いた定時株主総会で、筆頭株主の外食大手(株)コロワイドが提案していた取締役候補の議案が否決された。総会にはコロワイドは出席せず、株主提案の説明もなし。買収を仕掛けたコロワイドは”戦線放棄”したのだ。奇々怪々というほかはない。

大戸屋買収のネックは「のれん」にあり

 コロワイドは、最初から実行するべきTOBをなぜしなかったか。これも、理由ははっきりしている。「のれん代」がネックとなったからだ。
 企業を買収して支払った額のうち、純資産を上回った差額を「のれん代」という。コロワイドは、買収に買収を重ねて企業規模が大きくなっているため、「のれん」の額は非常に大きい。20年3月期で717億円という「のれん」の金額は、外食業界では断トツで、自己資本(388億円)の1.8倍にのぼる。

 買収した企業が儲かっていれば何の問題もないが、業績が悪化した場合には、「のれん」を減損処理しなければならない。自己資本以上の「減損リスク」があるコロワイドは、一気に債務超過におちいる可能性がある”時限爆弾”を抱えているようなものだ。

 それでは、大戸屋を買収した場合の「のれん」はどれくらいになるだろうか。
 TOBの買い付け金額約70億円と、約19%分を取得した30億円を合わせると、買収額は100億円程度になる。対して、大戸屋の20年3月期末時点の純資産は、約33億円しかない。さらに、4~6月期はコロナ禍により壊滅的な打撃を受けているため、大赤字を計上し、純資産は目減りしている。大戸屋の買収によって、70~80億円の「のれん」を計上することになるため、コロワイドの「のれん」は790~800億円程度に膨れる。

 業績が悪化している大戸屋の減損処理をすると、コロワイドそのものが、債務超過におちいることになる。そうなると、何のために買収するのかが分からない。
 「のれん」の減損リスクを回避するために、店内調理からセントラルキッチンに代えてコストを削減し、黒字に転換することで赤字を防ぐ計画だった。そのために、まず株主総会で経営権を取得することを最優先したが、その計算が狂ったのだ。

 結局、コロワイドは、TOBによる買収に踏み切った。大戸屋の従業員やFCオーナーは、コロワイドの買収に手を組んで反対している。店内調理をやめて、セントラルキッチン方式で再建することに対して、一致団結していない。赤字は拡大し、「のれん」の減損リスクは高まるため、大戸屋を買収したことで、コロワイドは債務超過転落の危機を迎えることになった。

(了)

【森村和男】

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