• このエントリーをはてなブックマークに追加
2020年07月14日 15:30

「コロナ後の世界経済」~ポスト資本主義の倫理、哲学で世界経済の再構築を(前)

日本ビジネスインテリジェンス協会会長・中川十郎氏

 ポストコロナの時代には、格差拡大を続ける資本主義や、AIやICTを活用したリモートワークなどのオンライン化ではなく、倫理や哲学に立脚した新しい世界経済の再構築を目指すべきだ。

東京オリンピックの開催も危ぶまれるコロナ禍

 6月23日の新型コロナウイルスの世界感染者数は、米ジョンズ・ホプキンス大学によると188カ国・地域で900万人を突破し、死者数は46万9,000人に達した。世界で増加ペースが早まっている。

 このうち米国は229万人、ブラジルが108万人を超え、この二か国で感染者は世界の約4割を占めていた。さらにロシアが59万人、インドが12万人で、このところ世界の感染者数は1週間で100万人ずつ増加していた。死者46万人のうち、米国12万人、ブラジル5万人、英国4.2万人が3傑だった。6月21日の感染者数は、18万人強と単日で過去最大となっていた。

 外出自粛を解除した東京都でも、6月23日頃は毎日30人内外の感染が発生していた。いまだに予断を許さない状況だ。ワクチンの開発が待たれるところだが、開発には1~2年かかると見られ、東京オリンピックの開催も危ぶまれ始めている。
 この頃、WHOのテドロス事務局長は「すべての国が、社会・経済への被害を最小限に抑えつつ、人々を守るという微妙なバランスに直面している」と発言した。

世界経済の回復は2022年頃か

 かかる状況下、世界銀行のコーゼ開発見通し局長は、警鐘を鳴らした。

「世界の景気後退は深刻になりつつあり、世界経済が新型コロナウイルス感染拡大前の水準を回復するのは2022年頃になる。第2次世界大戦以来の深刻な景気後退に陥るのは明らかだ。世界経済は、20年は2.2%のマイナス成長予測だが、感染第2波が来ればマイナス8%程度に落ち込む。とくに南米やサハラ砂漠以南のアフリカ、南アジアでは深刻な感染拡大が続くが、21年は4.2%のプラス成長と予測される。しかし21年末時点でも世界経済は危機前の水準には戻らず、回復するのは22年頃になる。コロナ前の生活を取り戻すためには、ワクチンの開発や治療法の確立が欠かせない」

「日本の潜在成長率は低く、20年はマイナス6.1%、21年はプラス2.5%程度と予測されている。世界的には巨額の負債が残り、とくに途上国の債務は金融危機に発展する恐れがある」

「コロナ禍で失業者が増え、教育機会の損失で人的資本の毀損は潜在成長率を押し下げる。テクノロジーの活用でこれらの損失をどう埋めるかが重要だ」

 一方、世界銀行は、新興国、途上国ともにマイナス2.5%と1960年以来60年ぶりの減少に転じると予測している。ブラジルはマイナス8%、メキシコは7.5%、南アフリカは7.1%、インドは3.2%、タイは5%と軒並みマイナスに落ち込む。中国のみが、1%とわずかにプラスだ。

 一方、国際通貨基金(IMF)は、6月24日に世界経済見通し改定版を発表し、2020年の成長率を4.9%減と下方修正した。20~21年の2年間で世界の損失は1,300兆円に達し、世界経済は『大封鎖』に陥り、大恐慌以来で最悪の景気後退となるとIMFは試算している。

 日本は、20年のGDP成長率はマイナス5.8%と予測され、リーマン・ショック後の2009年のマイナス5.4%を超える景気悪化が見込まれる。米国は、8.0%減と第二次世界大戦後の1946年の11.6%減以来、74年ぶりの大幅なマイナスになる。英国のGDPは、前年比10.2%減と予測されている。大寒波があった1709年の13.4%減以来、実に311年ぶりという記録的なマイナス成長だ。

 このように世界経済はコロナ禍の影響で、戦後最大の落ち込みとなるため、コロナ対策も含め、かってない国際協力体制が必要となるだろう。
 しかし2大経済大国の米中経済対決は、トランプ大統領の異常な敵対意識もあり、「激化の一途」をたどっている。

(つづく)


<プロフィール>
中川 十郎(なかがわ・ じゅうろう)

 鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

     

トップニュース

2020年10月31日 13:00

【住民投票迫る】いよいよ明日。大阪都構想(大阪市廃止)の行方 維新は災害対策「やってる感」を演出NEW!

 政令指定都市が初めて廃止されるか否かでも注目される「大阪都構想(大阪市廃止)」の争点の1つは防災だ。「水の都・大阪」は、豪雨災害や津波被害、さらに高潮などの水害に弱...

2020年10月31日 07:00

ストラテジーブレティン(263)~コロナパンデミックの経済史的考察(7)

 コロナパンデミックは、株式資本主義の新時代を開くかもしれない。米国においては今や金融政策も株価本位といえる。QEが株価など資産価格引き上げに決定的に寄与したが、この...

2020年10月31日 07:00

【凡学一生の優しい法律学】三権分立論の嘘(1)

 日本国民の大部分が、日本は三権分立の民主主義国であると信じている。しかし、彼らは政治的制度について論理的にも事実実証的にもまったく確認することなく、「制度の建前=真...

2020年10月30日 16:36

【11/2~】「春水堂台湾フェア」で台湾を満喫~春水堂と台湾観光局がコラボ

 タピオカミルクティーなどを提供する春水堂(日本での運営会社:(株)オアシスティーラウンジ)は台湾観光局東京事務所とともに、11月2日(月)から全国の18店舗にて「台...

(株)フジ精機(熊本)/金属部品製造加工

 同社は、10月23日、熊本地裁に破産手続きの開始を申請した...

2020年10月30日 14:57

大和ライフネクストがオンラインを活用したマンション管理員研修を開始~集合型研修の見直しで業務効率と教育効果向上へ

 大和ハウスグループの大和ライフネクスト(株)は、管理員の入社時研修プログラムにオンライン講義を取り入れてリニューアルし、研修時間の短縮を図っている...

2020年10月30日 13:30

【福岡商工会議所調査】新型コロナウイルスの海外進出企業に及ぼす影響~8割の企業がマイナスの影響があるとしつつも、現地で事業を継続

 福岡商工会議所(藤永憲一会頭、以下、商工会議所)は、九州の海外進出企業385社を対象に実施した「新型コロナウイルス感染症が九州の海外進出企業に及ぼす影響に関する調査...

2020年10月30日 13:00

【新自由主義の波】タネは誰のもの? 菅首相は種苗法改定で日本の農家を殺すのか

 11月1日投開票の大阪都構想の住民投票は、維新と蜜月関係にある菅義偉首相の政権運営にも影響を与えるのは確実だ。野党のふりをしながら与党に協力する「ゆ党」こと維新は、...

総選挙勝利に具体的政策明示不可欠

 10月28日午後5時半より、新宿区四谷区民ホールにおいて 政策連合(オールジャパン平和と共生)主催「政策連合で政権交代-総決起集会&松元ヒロ公演-」が開催された...

2020年10月30日 11:30

【凡学一生の優しい法律学】日本学術会議委員任命の論理学(後)

 任命行為を、ある人を選出し(前工程)、その人に地位権限を付与すること(後工程)と定義する...

pagetop