2021年12月07日( 火 )
by データ・マックス

「コロナ後の世界経済」~ポスト資本主義の倫理、哲学で世界経済の再構築を(後)

日本ビジネスインテリジェンス協会会長・中川十郎氏

 ポストコロナの時代には、格差拡大を続ける資本主義や、AIやICTを活用したリモートワークなどのオンライン化ではなく、倫理や哲学に立脚した新しい世界経済の再構築を目指すべきだ。

世界経済の再構築戦略

 戦後最大の世界経済の危機を迎え、コロナ後の世界経済はAIやICT、IoT、5G、データなどを活用したオンライン化が進み、リモートワークや在宅勤務、遠隔ビジネス、教育、医療などの分野でデジタル・トランスフォーメーション(DX)革命が起こり、社会で大きなパラダイムシフトが急展開するとみられる。

 しかし、ここで肝心なのは、金もうけ本位の姿勢を見直すことだ。格差を拡大しつつある資本主義の延命のために、単なるDXデジタル技術やデータ活用でデジタル経済に転換するという安易な対応ではよくない。千載一遇の機会だからこそ、格差のない21世紀、万人の幸せを目指す新資本主義の構築に日本として尽力すべきだ。

 そのためには江戸時代の二宮尊徳氏の「農業思想」や、『南洲翁遺訓』で「敬天愛人」「天から与えられた道を実践せよ」と喝破した西郷隆盛氏、『論語と算盤』を執筆した渋澤栄一氏の儒教の思想、「アジアは1つ」とアジアの結束を唱えた岡倉天心氏、禅の思想を喧伝した鈴木大拙氏、国際主義を早くから唱えた新渡戸稲造氏、平成に『社会的共通資本』、『人間の経済』などで「富を求めるのは道を開く為である」「資本主義の暴走を止めよ」と喝破したノーベル経済学賞候補にもなった経済思想の巨人の宇沢弘文・東大名誉教授、ドイツ・ボン大学で活躍し、著書『世界史の針が巻き戻るとき「新しい実在論」は世界をどう見ているか』でAIやGAFAを強烈に批判し、経済に倫理や哲学を持ち込む「モラル企業」を主張しているマルクス・ガブリエル教授などの思想を、ポストコロナの時代に今一度、真剣に再検討すべきではないだろうか。

 一方、アジアに目を転じると、アジアの世紀に今後発展する中国、韓国、インド、インドネシアほかASEAN(東南アジア諸国連合)、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)諸国に協力し、アフターコロナへの対応に日本が主導権を発揮すべきである。先般のRCEP会議では本年末までに参加国の同意を得て、RCEPを実現したいとのコンセンサスがまとまったわけだ。しかしこの地域における有力国インドが、中国との関係もあってRCEPへの参加を辞退し、RCEPの前途に暗雲が立ち込めていることは問題だ。インドの参加なしには、RCEPは「片肺飛行」も同然である。RCEP実現のためにインドが再加入するように、日本が率先して尽力すべきである。

 日本はさらにASEANやRCEP関係国と経済、環境、防災で協力し、さらにコロナ対策や医療協力を強化することが肝心だ。
 米国トランプ大統領の極端な「アメリカ・ファースト」政策で、欧米では自国中心主義が蔓延している。これまで結束を固めていたEUは、英国のブレグジット、ハンガリーをはじめとする東欧諸国の右傾化により、分断が進んでいる。

 今こそ、21世紀に発展が予想されるアジアへの回帰が要請されている。アジアの時代を見据え、日本が率先して日中韓の三国協力をさらに強化し、中国がユーラシアを中心に展開しつつある広域経済圏構想「一帯一路」および、この構想への融資や投資を目指すAIIB(アジアインフラ投資銀行)などへの参加を、ポストコロナ戦略として真剣に検討することが、日本の未来戦略として非常に重要だと考えている。
 さらに日本は、今後グローバルにビジネス展開を図るとともに、ポストコロナ対策として日本国内での内需拡大戦略に注力することが強く求められている。

(了)


<プロフィール>
中川 十郎(なかがわ・ じゅうろう)

 鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)

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