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2020年07月15日 17:10

ストラテジーブレティン(256号)~日本を蘇生に導くハイテク大ブーム~米中対決のカギを握る半導体、言わば現代の石油(2)

 NetIB‐Newsでは、(株)武者リサーチの「ストラテジーブレティン」を掲載している。今回は2020年7月13日付の記事を紹介。


(2) 中国がけん引する世界経済の回復

 コロナ感染をいち早く制圧したことで、中国主導の世界景気回復のシナリオが現実化してくるだろう。日本からの段ボール原紙対中輸出急増、ドイツで対中輸出回復、鉄鉱石市況や海運市況堅調等、経済活動の復活を伝えるニュースが続いている。不動産、インフラ投資はほぼ前年水準を上回っており、経済のV字回復が視野に入ってきた。工業生産は4月前年比3.9%増、5月前年比4.4%増と、すでに前年水準を回復している。特に固定資産投資は1~4月13.68兆元(前年比-10.3%)、1~5月19.92兆元(前年比-6.3%)となっており、ここから5月単月を計算すれば6.24兆元、前年比39.4%と急増していることがわかる。不動産投資とインフラ投資が主導している。

 IMFによる中国経済見通しは、2020年のGDPは前年比+1.0%、2021年は前年比+8.1%と世界で突出した成長となっている。成長のけん引力は財政である。コロナ対策による1兆元の国債増発により対GDP比財政赤字を2019年2.8%から2020年には3.6%以上に上昇させるほか、地方政府発行のレベニュー債(事業目的別に起債される)を前年比1.6兆元増の3.7兆元に増加させる(李克強首相の全人代報告)など、積極予算が組まれている。

新型インフラ投資加速、5Gで世界リードへ

 2020年のインフラ投資は前年比10%増の15兆元(230兆円)とされ、その増加分の大半が新型インフラ投資と伝えられている。その筆頭が5G関連投資である。「中国3大通信キャリア(中国移動、中国電信、中国総通)は2,000億元(2.7兆円)投資し、2020年3月19.8万ヵ所の5G基地局を年末までに60万ヵ所に拡大する。2025年までには500万ヵ所に増えると予測されている。1基地局あたり40~50万元(600~750万円)かかるので、25年までに2兆元(30兆円)以上の巨大市場となる。5G対応スマートフォン販売台数は2020年末には1.8億台に達すると予想される」(電子デバイス産業新聞6月18日)。

 その他半導体、データセンター、AI、NEV(新エネルギー車)など、コロナショックの景気対策を利用し、デジタルインフラ基盤整備を一気に進める計画が進行している。5G投資は中国がほかを圧倒している。米国では周波数割り当てがネックとなり、進捗に手間取っている。WSJ紙(6.29)は2025年の5G接続数が「中国8.07億ベース、アジア(除く中国)3.47億ベース、欧州2.31億ベース、北米2.05億ベースになる」(GSMA インテリジェンス予測)という予測を報じている。

 三峡ダム決壊・放水による長江水域の洪水、等の不安要素も存在するが、中国が2020~2021年の世界経済をけん引することは確実であろう。

経常収支、外貨準備は改善傾向

 アキレス腱である経常収支は大きく改善している。いち早く立ち直った供給力を武器に4~5月輸出はほぼ前年並みまで改善(4月前年比3.5%増、5月同3.3%減)、輸入の減少により貿易黒字は大きく増加している。加えて最大の赤字要因であった中国人の海外旅行が著減し、経常収支の黒字が膨れ上がっている。また対内直接投資が増勢を続ける一方対外直接投資は1割前後の減少が続き、直接投資バランスが改善している。この結果外貨準備高は2020年6月末3兆1,123億ドルと緩やかに増加趨勢にある。ドル準備は強化されている。一見今の中国に死角は見えない。

官起点の株高、半導体株バブル(?)

 金融緩和と当局誘導の投資ブーム、言わば人為的ともいえる株高が始まっている。香港国家安全維持法が資本流出や金融不安を引き起こす、という懸念を払しょくするための官製株高とも考えられる。株式ブームの中核は習近平政権が国運をかけて資本を集中させようとしている半導体である。

 後述するように、世界最大の半導体受託生産会社(シェア50%)のTSMC(台湾セミコンダクター)が米国の圧力によりファーウェイとの取引を停止したが、それを代替する中国国策の半導体受託生産会社SMIC(中芯国際集成電路製造)が上海科創板(中国版ナスダック)に新規公開される予定で、IPOが大人気となっている。SMICはIPOにより約200億元(28億ドル)の資金調達を目指していたが、株高で推定調達額は460億元(65.5億ドル)に膨らんでいる。すでに上場している香港市場では株価は年初来3.1倍に上昇、EV/EBITDAは22倍とサムスンの4.5倍、TSMCの11倍を大きく上回っている(FT7/7)。

(つづく)

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