2024年04月24日( 水 )

豪雨災害が頻発する福岡県~復旧の現状と災害への備えは――(前)

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相次ぐ豪雨災害と随時進む復旧事業

 近年、全国的に豪雨災害が相次いでいるが、それは福岡県においても例外ではない。とくに2017年以降は、毎年豪雨によって何らかの被害を受けている状況だ。

2017年の九州北部豪雨で被災直後の桂川(朝倉市)

 まず17年は、7月5日から福岡県・大分県の両県を中心とする九州北部を襲った記録的な大雨「平成29年7月九州北部豪雨」が発生した。これにより、福岡県内では大規模な土砂災害が発生した朝倉市や東峰村を中心に、全壊287件を含む2,520件の家屋被害のほか、640件の道路被害、95件の橋梁被害、474件の河川被害、220件の土砂災害といった甚大な被害が発生。県内では死者・行方不明者39人、重軽傷者21人という痛ましい人的被害も出た。

 18年は、台風7号やその後の梅雨前線などの影響による集中豪雨「平成30年7月豪雨」――通称“西日本豪雨”によって、西日本を中心とした全国広範囲で被害が発生した。福岡県では、北九州市門司区で崖崩れが発生したほか、板櫃川(北九州市小倉北区)や大刀洗川(久留米市)などの複数の河川が氾濫したことで、とくに久留米市では広範囲で浸水被害を受けた。これにより、全壊19件を含む3,866件の家屋被害や、1,487件の道路被害、2件の橋梁被害、375件の河川被害、1,011件の土砂災害が発生し、死者4人、重軽傷者21人という人的被害も出た。

 19年は、8月27日から長崎県、佐賀県、福岡県の広い範囲で、秋雨前線の影響で線状降水帯が発生。この大雨による冠水の影響で、佐賀県大町町においては鉄工所からの油流出事故が発生したのは、まだ記憶に新しい。佐賀県内での被害がとくに大きかったが、福岡県内でも全壊3件を含む494件の家屋被害や、200件の道路被害、145件の河川被害、44件の土砂災害が発生。死者1人、軽傷者1人という人的被害も出ている。

 このように、福岡県内ではほぼ毎年のように豪雨災害が発生している一方で、過去の豪雨災害からの復旧の取り組みも順次進んでいる。

復旧が完了した桂川

 17年の九州北部豪雨からの道路・河川・砂防の復旧状況は、原形復旧(※1)箇所においては全体225カ所(道路113、河川98、砂防14)のうち、河川の改良復旧と同時施工が必要な道路の1カ所を除く224カ所ですでに工事に着手(着手率99%)。このうち、約7割となる168カ所(道路73、河川83、砂防12)で工事が完了しており、全体の完成率は75%となっている。また、改良復旧を要する73件(道路2路線3区間、河川13、砂防57)についても、用地取得を鋭意実施。取得済みの箇所から順次着工している。

 今後は、原形復旧箇所については早期の完成を目指すとともに、改良復旧箇所については地元の了解を得ながら用地取得を引き続き進め、準備が整ったところから工事に着手していく。福岡県県土整備部では、「原形復旧は今年度中、改良復旧についても21年度中の完了を目標に復旧事業を進めていく」としている。

 18年の西日本豪雨における災害復旧については、原形復旧308カ所のうち、約9割にあたる288カ所ですでに工事が完了。浸水被害のとくに大きかった河川では、国土交通省の「浸水対策重点地域緊急事業」(※2)を実施し、放水路や排水機場の整備、河道改修などによって、さらなる浸水災害が発生することのないよう、取り組んでいる。また、19年の災害については、原形復旧対象の124カ所のうち114カ所で工事に着手。約2割の25カ所で工事が完了している。

※1 原形復旧:被災前の位置に被災施設と形状、寸法および材質の等しい施設を復旧すること^
※2 浸水対策重点地域緊急事業:中小河川の氾濫により深刻な影響が生じた地域において、再度災害の防止などを図ることを目的に防災・安全交付金で集中的な対策を支援する事業^

(つづく)

【坂田 憲治】

(後)

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