2024年03月29日( 金 )

MMT立脚財政支出膨張論がダメなわけ

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は、「MMTにより、いくらでも財政赤字を拡大させて、市民に対する財政支出を拡大すべきとの主張は正当性を有しない」と訴える8月5日付の記事を紹介する。


4月7日に安倍内閣が発表したコロナ経済対策。
安倍首相は事業規模108兆円を強調したが、みそくそ一緒の数字の積み上げに何の意味もない。

108兆円のなかの26兆円が税金や社会保険料の支払い猶予、45兆円が企業の資金繰り支援だった。
108兆円のうち71兆円が景気対策でない。

(略)

安倍内閣が制定した2020年度第1次、第2次補正予算は一般会計で58兆円の規模に達する。
巨大な補正予算が編成された。
しかし、透明・公正な財政資金配分は一律10万円給付の13兆円だけだ。

安倍内閣が独断で支出を決定できる予備費が10兆円も計上された。
GoToトラブルキャンペーンにも1.7兆円もの巨費が投下された。

その一方でPCR検査拡充はまったく実行されていない。
PCR検査を厚労省の検査利権ムラに独占させることが優先されている。
市民が検査を受けることを安倍内閣が阻止している。

(略)

結局のところ、巨大な財政資金が私物化されている。

58兆円もの補正予算の資金配分を適正化すること。
これこそ、国会がはたすべき最大の使命だ。
安倍内閣は透明・公正な財政資金配分を嫌い、巨大な予算を次の選挙に向けての買収資金として活用している。

日本は完全に五流国に転落している。
国民の貴重な財政資金を透明・公正に配分することこそ何よりも求められている。

消費税減税
最低賃金引き上げ
生活保障拡充
の3つに絞って巨大な財政資金を配分すべきだ。

利権財政支出を全廃する。
その財政資金を活用して、透明・公正な消費税減税、最低賃金引き上げ、生活保障拡充を実現すべきだ。

近年MMT論議がかまびすしい。
通貨発行権を有する一国政府が国内で国債を発行、消化する限り、財政赤字を拡大することに問題はないとする主張が展開されている。
いくらでも財政赤字を拡大させて、市民に対する財政支出を拡大すべきとの主張が唱えられている。

しかし、この主張に傾きすぎることは適正でない。
市民は無制限、無尽蔵の財政赤字拡大に賛同しない。
他方、経済理論の視点から見ても、この主張は正当性を有しない。

極端な事例を考察することによって本質が見える。
日本で政府が国債を増発し、その国債を全額日銀が引き受けて財政支出を拡大するケースを考察する。
すべての国民に1人1億円の現金給付を行う。

財源は国債発行により、その国債を全額日銀が引き受けることとする。
赤ん坊からお年寄りまで、すべての国民に1人1億円の現金が配られる。
財源は国債発行で、日銀がすべての資金を融通する。
国債追加発行額は給付人口が1億人なら1京円ということになる。

この施策を実施すれば、確実に物価水準が上昇する。
インフレが誘発されることになる。
財務省の財政再建至上主義は完全な間違いだ。
日本政府は資産超過の経済主体で財政破綻のリスクは皆無だ。
しかし、財政赤字の膨張を完全に放置して放漫財政を実施することにも正当性はない。

何よりも重要な経済活動の原理=法理は
「世の中にうまい話は存在しない」
というもの。

※続きは8月5日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」「MMT立脚 財政支出膨張論がダメなわけ」で。


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植草一秀の『知られざる真実』

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