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2020年08月05日 16:00

ベルヴィ香椎、施工不具合問題は JR九州・若築建設ら業者の勝利!(3)

 福岡東区の分譲マンション「ベルヴィ香椎 六番館」(以下、六番館)が傾斜している問題について、販売会社である若築建設(株)・JR九州・福岡商事(株)の3社は、六番館区分所有者に対して3つの対応策を提示し、選択を求めた。
 販売会社らが示した案は、下記の通り。
(1)改修(杭の補修)
(2)六番館の解体・建替え
(3)六番館各住戸の購入価格での買い取り
 現時点では、「六番館の解体・建替え」を希望する区分所有者が多いという。六番館の「建替え」は「ベルヴィ香椎」の区分所有者にとって、最良の解決方法となるのだろうか。協同組合ASIO代表理事の仲盛昭二氏の意見を聞いた。

 ――六番館理事会は、なぜ 20年以内に具体的な行動を起こさなかったのでしょうか。

 仲盛 私も不思議に感じています。竣工後の早い段階から不具合が発生していたのですから、いくらでも交渉はできたと考えていますが、交渉がうまくいかなかったのでしょう。管理組合から依頼を受けた岩山建築士は、販売業者が今回提示した解決案について、「20年を越えたマンションで建替えを実現した例は、聞いたことがない」と語っていますが、はたして本当のことでしょうか。

 「建替え」に至るまでのハードルが高いため、区分所有者にとっては決して最良の方法でないことや、販売業者の深い思惑を考えると、「ベルヴィ香椎」の全棟での解決を最優先して考えるべきです。

 ――改修や建替えが現実的でないならば、残された選択肢は「買い取り」です。購入価格での「買い取り」は、区分所有者にとってメリットがあると感じますが、どうですか。

 仲盛 多くの区分所有者は、「建替えができないなら、購入した値段で買い取ってくれれば問題ない」と考えるかもしれません。しかし、「買い取り」に合意すると、マンションに設定されている抵当権を抹消しなければならず、そのための現金を用意しなければなりません。

 多くの区分所有者は、長期の住宅ローンを組んでいます。35年ローンならば初めの20年ぐらいは金利の支払いのみで元本は減らず、残り15年ぐらいから実質的な元本の返済が始まります。竣工後25年が経っている「ベルヴィ香椎」でいうと、元本の返済がようやく始まったところです。そのため抵当権の問題を解決しても、買い取り価格に近い金額をそのまま金融機関に支払う必要があり、「買い取り」で得られた現金は、手元にほとんど残りません。

 住宅ローンという借金はなくなりますが、新たな住まいのためにもう一度、住宅ローンを組み直すか、賃貸マンションなどに住まざるを得なくなります。20年以上にわたって住宅ローンを返済しても手元に何も残らないという、やるせない気持ちに包まれることになります。「買い取り」が最良の解決策といえるかは疑問です。

 ――販売業者が六番館の全住戸60戸を買い取ったと仮定すると、全棟の区分所有者286戸に対して、議決権としては大きな影響力をおよぼすと考えられます。

 仲盛 販売業者が「ベルヴィ香椎」全体に対して約2割の議決権をもつことになるため、全体の管理組合内で強大な発言力をもち、主導権を握ることになると考えられます。これも販売業者の狙いの1つです。つまり、販売業者にとって、「改修」「建替え」でも「買い取り」のいずれを行っても、自分たちの考える方向に物事を進めることができるため、区分所有者にとっては圧倒的に不利な状況であることに変わりはないのです。この事実に気づかず、六番館のみを対象として提示された対応策の案に飛びついた佐々木特別理事や岩山建築士の浅慮は、結果的に「ベルヴィ香椎」全体の区分所有者を苦しめることになります。

 そのような事態を防ぐためには、先ほどお話したように、六番館以外の区分所有者が、「すべての棟の調査と是正を求める」声を挙げる以外に方法はありません。六番館のみの「建替え」に同意すれば、他の棟の調査や是正の機会は完全に失われることになります。

(つづく)

【桑野 健介】

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