2021年12月09日( 木 )
by データ・マックス

「新型コロナ」後の世界~大学の本来あるべき姿を考察する!(4)

東京大学大学院情報学環 教授 吉見 俊哉 氏

 新型コロナウイルスは「世界の軌道」を止めた。私たちは今避難を余儀なくされ、物質的な考えを止めさせられ、自分が生きることだけを考えている。そして、このことは、これまで私たちが地球に行ってきた環境破壊がもたらした大洪水、ハリケーン、竜巻、海洋汚染、氷山崩壊などと同じで、貪欲な資源獲得の争いや終わりのない戦争の結果であることに気づき始めている。
 一方で、世界が一度止まったことで、私たちは自分の人生で大切なものは何かを考える時間ができた。今後、大学はどのような役割をはたしていくべきなのだろうか。

 東京大学大学院情報学環・教授の吉見俊哉氏に聞いた。ちょうど新型コロナ騒動直前の1月末に吉見教授がオックスフォード大学教授の苅谷剛彦氏と共著で出版した『大学はもう死んでいる?』(集英社新書)が今注目を集めている。それは、同書がまるで世界が一度止まることを予期していたかのように、日本はのみならず世界中の大学が抱える根本的な問題をあぶり出しているからに他ならない。

英国、米国、日本の3大学の視点から、大学問題を相対化する

 ――新型コロナ騒動直前の1月末にオックスフォード大学教授・苅谷剛彦氏との共著『大学はもう死んでいる?』を出版されました。執筆の動機を教えてください。

 吉見 この本は2019年の春に私がオックスフォード大学に行き、苅谷教授の研究室で行った対談をまとめたものです。苅谷先生との対談をやってみたいと考えるようになったのは、18年9月に出版した前著『トランプのアメリカに住む』(岩波新書)に書きましたが、ハーバード大学ライシャワー日本研究所の客員教授として約1年間教鞭を執ったことがきっかけです。

 そもそもハーバード大学で1年教えてみようと考えたのは、私が16年頃まで、東京大学のアドミニストレーション(管理運営)に関わっていたからです。

 ハーバード大学で教える経験を経て、東京大学の教育改革の難しさを痛感しました。東大における教育改革の難しさは、日本の大学教育の難しさでもあります。「何でこんなに難しいのか、そして何をどうすればいいのか」を考えたときに、一度アメリカのトップユニバーシティに行き、ファカルティ、すなわち教授陣のなかに入って教鞭を執ることで、「どのような教育が行われているのか」「どのようなアドミニストレーションが行われているのか」を、自分の目で見て学びたいと考えるようになりました。

 そう考えているときに、偶然にもハーバード大学から招聘のお話をいただいたわけです。前述の『トランプのアメリカに住む』という本のなかに書きましたが、ハーバード大学では、学ぶことがいろいろとありました。

 自分のなかにハーバード大学と東京大学を比較するという視点を持てるようになると、今度は、同じトップユニバーシティであるオックスフォード大学についても知りたくなりました。

 その理由は、この3つの大学の視点で相対化できれば、日本の大学が抱えている問題点をより鮮明に把握できると感じたからです。苅谷先生は前から存じ上げており、共著も出していました。また苅谷先生自身も、日本の大学についてオックスフォード大学から見た視点で考察する本を書かれていました。そこで、苅谷先生とじっくりお話できる機会があれば、充実した対談ができるのではないかと感じたことが、この本をつくろうと考えた理由です。

(つづく)

【金木 亮憲】


<プロフィール>
吉見 俊哉
(よしみ・しゅんや)
 1957年、東京都生まれ。東京大学大学院情報学環教授 兼 東京大学出版会理事長。同大学副学長、大学総合研究センター長などを歴任。社会学、都市論、メディア論、文化研究を主な専門としつつ、日本におけるカルチュラル・スタディーズの発展で中心的な役割をはたす。
 2017年9月~18年6月まで米国ハーバード大学客員教授。著書に『都市のドラマトゥルギー』(河出書房新社)、『博覧会の政治学』(講談社)、『親米と反米』(岩波書店)、『ポスト戦後社会』(岩波書店)、『夢の原子力』(ちくま新書)、『「文系学部廃止」の衝撃』(集英社新書)、『大予言「歴史の尺度」が示す未来』(集英社新書)、『トランプのアメリカに住む』(岩波新書)、『大学はもう死んでいる?』(集英社新書)など多数。

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