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2020年08月06日 14:30

ニューヨークは必ず再起する(前)

大嶋 田菜(ニューヨーク在住フリージャーナリスト)

人であふれている、今のニューヨーク

 ついこの間まで世界コロナ都市と呼ばれてもおかしくないぐらい、新規感染者や死者が多かったニューヨーク。普段より長い冬のなか、狭いアパートで何カ月も監禁されたことをすっかり忘れきったかのように、今のニューヨークは人であふれている。

 手づくりの、色の輝くマスクで顔を締めつけてジョッギングする人たち。スターバックスのアイスコーヒーを持ち歩く人たち。賑やかな道沿いに並んでいるダイニング・テーブルで外食をしている人たち。店内での食事が禁止されてから、それぞれの店は道路の脇に無理矢理にでもテーブルを並べて、客を呼び込んでいる。昨日まで自動車が何台も駐車してあったところに、今は花が咲くように新しく食卓と椅子が置いてあるのだ。

少しずつ生き返る街~閉店したレストランも立派に開店

 「ニューヨークは何回やられても立ち上がるんだ」と、ニューヨーク人はたくましく感じている。アメリカ同時多発テロ事件が起こった「ナイン・イレブン」(2001年9月11日)の翌日もそうだったらしい。

 とは言っても、ニューヨークは地域によって状況が異なる。人口の多いマンハッタンにおいても大学の辺りは静かに沈んでいる。コロンビア大学の学生で賑わっていたモーニング・ハイツも今はまるでゴーストタウンのようだ。倒産してしまった店がいくつも並ぶ120丁目とブロードウェイの周辺が再び立ち上がることはあるのだろうか。

 ミッドタウンは何とか頑張っているらしく、コロナのピーク時には「ポスト黙示録」のまちと考えられていたタイムズスクエアも少しずつ生き返っている。「頑張れ、ニューヨーク」「会いたかったよ、ニューヨーク」「負けるな、ニューヨーク」など、店の窓ガラスにテープで貼ってあるこれらの文字を読むと心が暖まる。

 ニューヨーク在住の日本人に人気のあるアッパー・イースト・サイドとイースト・リバーの隙間にはさまれているヨークヴィル街は、もともと人口が多かったためいつも混み合っている。感染の危険が高かったころは恐ろしいくらいだったが、今はぶつかりそうになるほど人が多くなっていることに有難ささえ感じる。店舗のなかには閉店して空き地になってしまったところもちろんあるが、ほとんどのレストランは立派に開店している。高級なお店よりも近所の老人、子どもづれの家族などが通うカジュアルな店が多い。

 81丁目とファースト・アベニューにある人気のダイナーで24時間営業、何があってもいつでも店を開いているというグレーシー・ミューズも、3月のロックダウンのときはさすがに30年ぶりに閉店した。しかしデリバリーが可能だったおかげか、何とか生き残った。

 「こんなふうに閉店したのは、30年前火事が起こった時以来だ。あのときは、1週間ぐらい閉店した。今回は長いからどうなるかわからないが、何十年も毎日のようにきてくれたお客さんは、これからも絶対来てくれるはずだ」。ギリシャ系のオーナーは、目を輝かせながらそう言った。コロナが蔓延してもう5カ月が経つが、グレーシー・ミューズの花と植木に囲まれた道端のアウトドア・テーブルは、何時に行っても混んでいる。店主の予想通り、毎日同じお客さんが来店し、同じものを注文して食べている。

(つづく)


<プロフィール>
大嶋 田菜
(おおしま・たな)
 神奈川県生まれ。スペイン・コンプレテンセ大学社会学部ジャーナリズム専攻卒業。スペイン・エル・ムンド紙(社内賞2度受賞)、東京・共同通信社記者を経てアメリカに渡り、パーソンズ・スクールオブデザイン・イラスト部門卒業。現在、フリーのジャーナリストおよびイラストレーターとしてニューヨークで活動。

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