2024年03月29日( 金 )

復活の道が見えない日産自動車の研究(2)

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指名委員会が策定したトロイカ体制はあっけなく崩壊

 指名委員会の次なる仕事は、代表執行役の選任。指名委員会は2019年10月8日、西川氏の後任の社長兼CEOに内田誠・専務執行役員を起用すると発表した。

 内田氏は(株)日商岩井(現・双日(株))の出身。カルロス・ゴーン前会長の改革初期の03年に日産に転じた。国際経験が豊富で、流暢な英語を操る。

 業界では「内田WHO?」(内田とは誰か)といわれるほど、内田氏は目立った人物ではなく、クールな「能吏タイプ」だ。「全軍を率いる将軍が務まるのか」と首を傾げる向きが多かった。

 同時にナンバー2であるCOOに、ルノー出身で三菱自動車のCOOだったグプタ氏を起用し、副COOには生え抜きの関潤専務執行役員(当時58)を昇格させた。

 指名委員会が策定したトロイカ体制は、発足前にあっけなく崩壊し、昨年12月、日産の副COOに就いた関氏は退任。関氏は日本電産(株)の創業者の永守重信会長の招きで、日本電産の社長に転進した。

 その後、関氏退任の舞台裏が明らかになる。「指名委員会は当初、関氏を社長に昇格させる案が有力であったが、スナール会長が猛反対して覆された」(業界関係者)という。

 関氏は、昨年7月、世界の全従業員の1割にあたる1万2,500人の削減を盛り込んだ再建計画を主導した。ルノーとの経営統合に反対した西川社長の下で、再建計画、経営再建づくりに関わったことから、ルノー側が猛反対した。
 「上に反対することなく、仕事をそつなくこなす内田氏にお鉢が回ってきた」(同)

指名委員会は経産省出身の豊田氏とスナール氏の力関係

 日産の指名委員会の陣容は次の通りだ。

<指名委員会>
委員長
 豊田正和(71):元経済産業省 経済産業審議官
委員(取締役会議長)
 木村康(72):元JXTG(現・ENEOS)ホールディングス(株)会長
委員
 ジャンドミニク・スナール(67):ルノー取締役会長
委員
 井原慶子(47):慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究科特任教授
委員
 永井素夫(66):元みずほ信託銀行取締役副社長
委員
 アンドリュー・ハウス(55): 元(株)ソニー・インターラクティブエンテインメント取締役会長

 指名委員会の上記6人の委員が内田社長CEOを続投するか、グプタ氏を昇格させるかを決める。委員長・豊田氏は、「経産省の代弁者」といえる人物だ。豊田氏の動きを見れば、経産省が日産をどうしたいのかが、わかる。

 もっとも、市場関係者からは、「指名委員会は経産省とルノーの駆け引きの場。日産をどう再生するか、再生を託すには誰が適任か、という肝心なことがわかっているとはとても思えない」と冷ややかな声が挙がる。

 関氏を覆して内田氏で決めたように、ルノーのスナール会長の発言で決まるだろう。スナール氏は、「ルノーの操り人形」と社内で言われている内田氏を、いま変えることはしないのではないか。

 スナール氏は、指名委員会を最大限に利用して、日産をコントロールする実権を握ったといっても過言ではない。ルノーとの経営統合に反対する日産には、指名委員会等設置会社という枠組みが、重い足かせになる。

(つづく)

【森村 和男】

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