2024年03月19日( 火 )

オールラウンドなまち福岡・大橋~整備の歴史と今後の開発計画(2)

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現在の大橋の基礎となる土地区画整理事業

道幅が狭く交通渋滞する大橋商店街通り
(出典:塩原地区区画整理誌)

 戦後の大橋は、福岡市の人口が急増して都心部などで開発が進むにつれて、天神に近いという立地と、西鉄大牟田線(路線名は2000年12月に西鉄天神大牟田線に改称)や複数の主要幹線道路が通る交通利便性の高さから、急速に市街化が進行。公団住宅「大橋団地」(1960年竣工、25棟・全631戸)を始め、市営住宅や一般住宅も次々と開発され、新興住宅地としてスプロール化(都市が無秩序に拡大してゆく現象)が進んでいった。

 しかし一方で、急速な開発の進行に対して、取り残されたのが公共インフラの整備だ。生活道路の大半があぜ道を拡幅した程度で、幅員も5m以下というところがほとんどで、大部分が砂利道という有り様だった。また、幹線道路と西鉄大牟田線との平面交差は、地区外からの通過車両による慢性的な交通渋滞を発生させ、そこからあふれた車両が周辺の生活道路にまでおよぶなど、歩行者の安全を脅かしている状況にあった。さらに、地区内の用排水路はほとんどが素掘の状態で未整備のところが多く、降雨時にはうまく排水機能が働かず、水害が頻発していた。

区画整理事業

 この頃、福岡市では政令市の指定(72年4月施行)および区制の実施に向けて、これまで以上に都市整備に力を入れていた。71年改訂の「第2次マスタープラン」では、Y字型都市軸における福岡都心~二日市~久留米を結ぶ高密連担都市のタテ軸のなかで、業務拠点機能の整備を図る“副都心”として大橋・塩原地区を位置付けており、拠点化の最初の一大事業として実施されたのが、「塩原地区土地区画整理事業」と、関連事業としての「西鉄大牟田線連続立体交差事業」(平尾~大橋間)であった。

 「塩原地区土地区画整理事業」(施行期間:72年3月~87年1月)は、施行面積約153.9ha、総事業費は約348億円という大規模プロジェクトだった。都市改造を目指した広大な土地利用の転換をともなうものであり、1,600余人におよぶ地区内外の権利者の調整や、2,300戸におよぶ建物の移転、鉄道高架化と周辺道路の整備、下水道幹線の整備、駅移転を契機とした商業環境の再編、行政機関を始めとするコミュニティセンター機能の強化など、実に多岐にわたる要素が盛り込まれた、当初は6カ年計画でスタートしたものの、オイルショックを始めとする景気変動などの影響で3度にわたって期間延長を余儀なくされ、最終的には約15年間もの期間を要するという難事業でもあった。

 一方、同時施行された西鉄大牟田線連続立体交差事業は、平尾駅から那珂川の手前までの3,240mの区間を高架化すると同時に、旧大橋駅を西に約400m移転させて現在の場所で高架駅として整備するというものだった。高架化および駅移転は78年3月に完成し、大橋駅は急行停車駅へと昇格。同時に、駅ビル内に西鉄名店街が開業した。

鉄道高架開通(1978年3月)(出典:塩原地区区画整理誌)

 この区画整理の一環として進められたのが、地区一帯の下水道整備だ。当時、地区内には那珂川水系の老司川を主流とした水路を始め、農業用灌漑水路も含めた複数の水路が混在。そこに急激な都市化の進行にともなって無秩序な宅地開発が行われた結果、雨水排水などがうまく機能せずに汚水放水路と化し、降雨期の床下浸水発生などの常襲的な水害に悩まされていた。

 そのため、雨水排水施設の整備によって同地区の水害発生を防止するとともに、水洗化を促進して環境衛生の向上を目的として、下水道整備を実施。大橋エリアを通る老司川を暗渠(あんきょ/地下に埋設した水路)として那珂川に抜ける雨水幹線を敷設。以降の水害発生の抑制に成功した。なお、このときに地名の由来であった大庭大橋は消失している。

(つづく)

【坂田 憲治】

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