2024年05月18日( 土 )

第2次安倍政権の功罪 経済面では一定の業績、政治への信頼回復が課題

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 第2次安倍政権が達成した業績とは何であったか。

 まず、政権運営という点において、長期安定政権を実現したことの意義は小さくない。頻繁に首相が入れ替わっていた日本において、小泉政権以来の長期政権となった。

 内政面では、就任当初から掲げていた円高是正(2012年12月で1ドル約80円台であったのが、20年8月で105円前後)、株価上昇(2012年12月で日系平均が約8,000円台であったのが22,000~23,000円前後)などを達成している。また12年12月から景気を拡大させ、景気の拡大局面は18年10月までの71カ月に及んだ。いざなみ景気の73カ月に次ぐ記録である。

 また、現在に至るも賛否両論があるが、平和安全法制、特定秘密保護法などを成立させた。

 政権が継続することのメリットは、長期的な視点で内外の政策に取り組むことができることであり、外国の首脳も同様に「この政権は長く続くから仲良くしておこう」「付き合っていかざるをえない」と考えるようになる。

 外交面で、安倍首相がトランプ米国大統領と親密な関係を構築したこと、就任当初は最悪であった日中関係において、習近平中国国家主席と何度も会見する状態に回復させたことは大きい。

 しかしながら、経済面ではアベノミクスの「第三の矢」である成長戦略が不十分なままで、一般家庭に成長の恩恵が行き渡っているとは言い難く、また毎年のインフレ率2%という目標は達成できていない。

 外交面でも、北方4島返還をめぐってロシアとの交渉を続け、国民の期待を高めたものの、具体的な成果は得られていない。

 政権運営に関しても、政権批判を抑制させるために一部マスコミとの関係を深めたことが指摘されているが、これが長期政権を実現した要因である一方、政権内部での緩みを生みだし、数々のスキャンダルが発生した土壌となっており、かつ疑惑を十分に追及できていないという国民の不満も生んでいる。安倍政権は比較的高い支持率を維持したとはいえ、国民の政治に対する信頼を得たとは言い切れないままであった。

 新型コロナウイルスの感染拡大という状況においても、諸外国の首脳と比べリーダーシップを発揮したとは言い切れず、この2カ月は存在感を示してこなかった。

 次期政権が安倍政権の政策を継承するかどうかは現時点では不明であるが、コロナあるいは未知の感染症と付き合うことを織り込んだ社会の構築に向けた青写真を提示し、政治の強いリーダーシップを発揮してくれることを望みたい。

【茅野 雅弘】

関連記事