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2020年09月11日 13:30

ストラテジーブレティン(261号)“The Economist”と「週刊エコノミスト」、好対照の安倍評価~安倍批判に狂奔した日本メディアと専門家、日本評価を始めた W・バフェット氏(後)

 NetIB‐Newsでは、(株)武者リサーチの「ストラテジーブレティン」を掲載している。今回は2020年9月9日付の記事を紹介。


(2) なぜ今か? ウォーレン・バフェット氏が日本株買い

大勢に逆行するバフェット氏の日本株買い

 安倍政権とアベノミクスを徹底的に批判する日本の大多数のメディアと、高く評価する英国の『The Economist』誌のどちらが正しいのだろうか。その判定は、ウォーレン・バフェット氏による日本商社株買い、によって明らかとなるのではないか。

 世界最大、最長老の投資家がなぜ、日本株の代表である商社大手5社の株のまとめ買いをするのか。それも、このタイミングである。アベノミクスが失敗であれば、日本株、それも代表的な財閥エスタブリッシュメント企業の株を買うわけがないだろう。

 『WSJ』紙は、「バフェット氏がほかの外国人投資家の動向に逆行していた」と報じている(「バフェット氏は海外マネーが忘れ去っていた日本株に投資した」、9月4日付)。外国人投資家は、安倍氏が選挙で勝利した2012年12月から15年6月末までに、23兆円日本株を買い越した。しかしそれ以降は日本株を売り続け、8月31日時点では、安倍政権が発足して以降の累計で8,688億円の売り越しとなっている。

日本をスルーし続けたバフェット氏

 あれほど有名なバフェット氏が、これまでは日本株にほとんど関心を見せてこなかった。日本株が外国人投資によって圧倒的に買い上げられた1970~80年代も、バフェット氏は完全にスルー――。初めての訪日は、2011年の東日本震災の8カ月後であり、その時に初めて(株)タンガロイに投資した。

 しかし、バフェット氏は今年の8月に、約60億ドル(6,400億円)を投じて大手商社5社(時価総額・合計14兆円)の5%取得し、さらに9.9%まで買い増す意向も表明している。それにしても、なぜ今のタイミングで買い上げるのか。

 バフェット氏は、日本の将来に期待していると異例な声明を出している(“I am delighted to have Berkshire Hathaway(BH) participate in the future of Japan and the five companies we have chosen for investment”)。また、商社が展開するグローバルJV投資に大きな機会があり、BHが参加する可能性も述べている。

バリュー、商社のアニマルスピリット、世界のJVネットワーク

 以上から、バフェット氏の日本商社への投資には3つの要素があると考えられる。

(1)典型的バリュー投資対象
 「割安=高リスクプレミアム」の日本代表であること。バフェット氏の投資資金は昨年9月、今年4月に合計6,255億円の円建て債発行で調達されている。そのコストは平均ゾーンの10年債では利率0.44%、それに対して商社は配当利回りだけで4~6%、と大きくプレミアムが乗っている。PERは9~15倍(益回り7~11%)、PBRは1.1倍の伊藤忠をのぞくと0.6~0.7倍と、バリュエーションは著しく低い。

(2)財閥系
 旧体制企業群のなかで唯一アニマルスピリットをもち、ビジネスモデルを進化させている業態であり、日本ビジネスの良き伝統の継承者である。日本の企業再編の担い手、日本コーポレートガバナンス変革の担い手になり得る。

(3)世界有数のグローバルプレイヤー
 全世界にネットワークとビジネス拠点を確立し、JVを築き上げている。米国がいま注力している中国排除のグローバル・サプライチェーン(Economic Prosperity Network 構想)確立の担い手になり得る。

米中敵対下、日本の死活的重要性

 バフェット氏が今のタイミングで日本株を買い上げるのは、第一に日本株のバリュエーションが陰の極にあるからであろう。バフェット氏にとっては、バリュエーションが著しく高くなり、バリュー投資対象が見つけにくくなった米国市場との極端な格差を容認できなくなったのだろう。しかしより大事な第二の要因は、米中の敵対が熾烈となったため、脱中国のグローバル・サプライチェーン構築が不可避となり、日本および日本商社のもっている経済資源とビジネスモデルが突如として輝き始めた、ということであろう。

(3) 日本で株価革命が起きる

徹頭徹尾、株価フレンドリーの菅新首相の登場も引き金に

 少し先走り過ぎているのではないかという批判を承知の上で、「日本に長らく待たれていた株価革命の引き金がひかれた」と伝えたい。安倍政権のレガシーの上に立ち、首相就任の可能性が高い菅義偉氏は徹頭徹尾、株価フレンドリーの政策を打ち出すだろう。派閥に属さない改革促進派、縦割り行政・既得権益打破の主導者である。アベノミクスの政府と日銀のアコード、日銀・財務省・金融庁の3者会議の定例化など経済司令塔を主宰している。すでにデジタル庁創設など、意欲の片鱗を見せている。

 バフェット氏の登場と米中対決時代での日本の死活的重要性の高まり、改革者菅新首相の誕生となれば、極端に売り叩かれていた日本株の大復活が起きる可能性は、著しく高まったのではないだろうか。

(了)

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