2024年03月29日( 金 )

「リアル半沢直樹」~コロワイドの大戸屋への敵対的TOB成立、誤算続きの買収劇で巨額詐欺、店舗爆発など不祥事が次々と発生(2)

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 ネット上で「リアル半沢直樹」と呼ばれた外食大手(株)コロワイドによる、定食チェーンの(株)大戸屋ホールディングスの敵対的TOB(株式公開買い付け)。テレビ放映中の経済ドラマ「半沢直樹」の第1~4話は敵対的M&A(合併・買収)がテーマ。同業者である大手IT企業と銀行による強引な買収計画を退けるため、俳優の堺雅人氏が演じる半沢直樹が奮闘、「倍返し」するというあらすじだ。ドラマとは異なり、コロワイドの敵対的TOBは成立。外食業界で敵対的TOBが成立するのは初めてのことだ。

コロワイドの蔵人金男会長が32億円詐欺被害に

 『デイリー新潮』(20年7月15日付)が、「コロワイド『お騒がせ会長』が32億円の詐欺被害に 大戸屋買収に暗雲」と、コロワイドを実質的に率いる蔵人金男会長が、32億円もの巨額詐欺に遭っていた、と報じた。

 6月11日、神奈川県警は1億3,000万円を騙し取ったとして3人の男を逮捕。被害者について「県内在住の70代男性会社役員」としか発表されていないが、この男性こそ蔵人会長だったのだ。

「会長が騙されたのは典型的な『M資金』の手口ですが、『身元が明かされないようにしてほしい』との強い意向もあって、これまで一切、表沙汰にはならなかったのです」(捜査関係者)。

 容疑者の男たちは、蔵人会長から約1億9,000万円を詐取した容疑で7月1日に再逮捕。蔵人会長が騙し取られた総額では31億5,000万円にも上るという。

 今回の舞台装置となった「M資金」とは、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)の経済科学局長だったマーカット少将が旧日本軍から接収した「秘密資金」に由来する。昭和の時代には、「M資金」は詐欺の小道具として使われた。架空の巨額融資をもちかけ、信用した相手から準備金名目で金銭を引き出す手口を「M資金詐欺」という。しかし、どのような融資話だったのかという詳細は明らかになっていない。裁判を待つしかない。

 蔵人氏は1947年8月、神奈川県逗子市生まれの73歳。父親の中華料理店を引き継ぎ、77年に居酒屋「甘太郎」1号店をオープンさせた。その後は買収をテコに成長。焼き肉の「牛角」、回転寿司の「かっぱ寿司」も手に入れた。90年代後半、コロワイド、ワタミ(株)、(株)モンテローザは「居酒屋新三家」と呼ばれた。

 株主総会に向けて、コロワイドが大戸屋の経営陣の刷新を求めて、激しいバトルを繰り広げている最中に、蔵人氏の過去の暴言が暴露された。蔵人氏が17年に買収した会社の社員に向けて発言した「挨拶もできない馬鹿が多すぎる」「生殺与奪権は、私が握っている。(中略)どう生きていくアホ共よ」などと書いた社内報だ。大戸屋の社員や取引先は猛反発。株主の大半を占める個人株主たちも同調し、コロワイドが株主総会で完敗する最大の要因となった。

福島県の「しゃぶしゃぶ温野菜 郡山新さくら通り店」で爆発事故

 7月30日午前9時ごろ、福島県郡山市の飲食店「しゃぶしゃぶ温野菜 郡山新さくら通り店」で爆発が発生し、内装工事の現場責任者が死亡、19人が重軽傷を負う大惨事となった。

 テレビの緊急ニュースには、建物は外壁が吹き飛んで全壊し、鉄骨がむき出しになり原形をとどめないほど損壊した現場が映し出された。周辺には広範囲にわたってがれきやガラスが飛び散っており、爆発がいかに凄まじかったかがわかる。爆発の衝撃で、近隣の住宅や学校の外壁や窓ガラスが損傷する被害が出た。

 「しゃぶしゃぶ温野菜」をチェーン展開する(株)レインズインターナショナル(以下、レインズ)を傘下にもつ外食大手コロワイドの野尻公平社長は同30日、郡山市で記者会見し「甚大な事故を起こし、誠に申し訳ない」と謝罪した。

 コロワイド側によると、店は新型コロナウイルスの影響で4月下旬から休業。外壁や内装の工事をして、8月3日に再オープンする予定だった。爆発前日の7月29日に、ガスコンロをIH調理器に換えるため、調理場にコンセントを増設する工事を急遽行ったことも明らかにした。爆発はガス漏れが原因と見られている。

 同店を運営するレインズは、焼き肉の「牛角」、「しゃぶしゃぶ温野菜」など8ブランドを展開している。12年10月、コロワイドが買収して連結子会社化した。レインズはコロワイドの全売上の4割強を叩き出す主力会社だ。

(つづく)

【森村和男】

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