2024年03月28日( 木 )

「リアル半沢直樹」~コロワイドの大戸屋への敵対的TOB成立、誤算続きの買収劇で巨額詐欺、店舗爆発など不祥事が次々と発生(3)

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 ネット上で「リアル半沢直樹」と呼ばれた外食大手(株)コロワイドによる、定食チェーンの(株)大戸屋ホールディングスの敵対的TOB(株式公開買い付け)。テレビ放映中の経済ドラマ「半沢直樹」の第1~4話は敵対的M&A(合併・買収)がテーマ。同業者である大手IT企業と銀行による強引な買収計画を退けるため、俳優の堺雅人氏が演じる半沢直樹が奮闘、「倍返し」するというあらすじだ。ドラマとは異なり、コロワイドの敵対的TOBは成立。外食業界で敵対的TOBが成立するのは初めてのことだ。

大戸屋はオイシックス・ラ・大地と業務提携

 大戸屋は、敵対的TOBに対抗するためのホワイトナイト探しに駆けずり回った。ホワイトナイトが見つからなければ、コロワイドに飲み込まれてしまう。

 投資ファンドや株主である取引先企業に打診したが、断られた。ファンドにとって、新型コロナウイルスで大きな打撃を受けている外食企業は魅力的な投資先ではない。取引先企業はコロワイドとも取引があるため、同社に睨まれるのは得策ではないと腰が引けた。

 8月14日、大戸屋は有機・無添加食品の通信販売会社、オイシックス・ラ・大地(株)と業務提携を結んだ。食材と調味料がセットになった「ミールキット」を共同で開発し、オイシックスの通信販売サイトでの販売を開始する。

 オイシックスは「Oisix」や「らでぃっしゅぼーや」といった通販サイトで有機野菜を販売し、30万人以上の会員を抱える。大戸屋は、コロワイドから敵対的TOBを受けている最中であり、企業価値を高める取り組みを通して、既存の株主がTOBに応じないように、彼らをつなぎ留めることを狙った。

 大戸屋は、コロワイドのTOBが成立しなかった場合に備え、オイシックスと組んで、コロワイドに対抗するシナリオを描き、オイシックスと将来の資本提携に向けた協議を始めた。しかし、通販は業務提携であって、資本提携ではなく、ホワイトナイトにはなりえない。コロワイドのTOBが成立するのは、ほぼ確実の情勢となった。

コロワイドは、大戸屋への敵対的TOBの期間を延長

 コロワイドによる大戸屋の敵対的TOBは、8月25日に公開買い付け日の締め切り日を迎えた。当日になって、コロワイドは買付予定枚数の下限を45%から40%に引き下げ、さらに買い付け期間を9月8日に延長した。

 つまり、大戸屋の株主が応じなかったため、当初の計画通りに集まらなかったということだ。そのため、下限を引き下げて期間を延長した。ただし、買い付け価格3,081円は据え置いた。

 TOBの成否のカギを握るのは6割超の個人株主である。株主総会では個人株主が反対したため、コロワイドの株主提案が否決された。
 そこで46%のプレミアムをつけて、個人株主がTOBに応じることを狙った。だが、高いプレミアムをつけても、応募が目標に届かなかった。コロワイドには大誤算である。

 蔵人会長の詐欺被害、福島県郡山市での「しゃぶしゃぶ温野菜」のガス爆発事故などのあまりに多くの不祥事が起こったことが、応募数が届かなかった一因だ。

 コロワイドは、仕切り直してどうするか。個人株主を取り込み、過半数の株式を取得するためには、買い付け価格の引き上げしかないが、そうはしなかった。「TOBが成立するか微妙である」という見方が広がったものの、TOBは成立した。

(つづく)

【森村和男】

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