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2020年09月28日 10:45

おへそでお茶が沸く内閣 植草一秀氏ブログ「知られざる真実」 

 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事を紹介する。今回は、「欧米では感染再拡大が現実化しているなかで、GoToトラベル事業の全面推進と外国からの入国制限大幅緩和は明らかに時期尚早だ。菅内閣のコロナ軽視政策が次期臨時国会での最大争点になる」と訴えた9月25日付の記事を紹介する。


コロナへの対応が2つに割れている。
最大の警戒を払う人々が多数存在する一方で、「コロナはただの風邪」と判断して積極的に濃厚接触を行う人々も存在する。

日本国憲法に
第十九条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。
との条文が置かれているから、各個人がいかなる思想及び良心を保持していても、それは尊重される必要がある。

ただし、日本国憲法には
第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
との条文も置かれている。

基本的人権が制限される要件として
「公共の福祉」
が規定されている。

「公共の福祉」
は、尊重されるべき基本的人権の間の利害調整の意味が強い。

基本的人権は尊重されるべきだが、他の個人の基本的人権を侵害する場合には、利害調整が行われなければならないということだ。

航空機におけるマスク着用の問題についても、基本的人権の利害調整が課題になる。
マスクを着用しないことがほかの乗客の基本的人権を侵害する場合には、その利害調整をすることが必要になる。

乗客の降機命令については航空法第七十三条の四に規定が置かれている。
「航空機内にある者が安全阻害行為等をし、又はしようとしていると信ずるに足りる相当な理由があるときは、その者に対し拘束その他安全阻害行為等を抑止するための措置をとり、又はその者を降機させることができる。」(一部抜粋)
と定められている。

降機はマスク着用の有無に直結するものではなく、航空法第七十三条の規定に基づくもの。

閑話休題。

コロナへの対応が二分されているが、重要なことは事実の確認だ。
事実に対する認識が異なるから対応が割れているといえる。
公表数値を基準に判断するしかないが、公表数値の信ぴょう性に対する判断自体が割れている。

公表されている数値を基準にコロナ致死率を見てみる。
致死率は検査での陽性者のうち、どれだけの比率で死亡しているのかを示す。
検査が十分に行われている国でなければ正確な致死率は算出されない。

東アジアで検査が多く実施されているのがシンガポールと香港。
人口100人あたりの検査数はシンガポールが46人で香港が44人。
ちなみに日本は1人にとどまる。
シンガポールの致死率は0.05%、香港の致死率は2.06%だ。

欧米で検査が多く行われている英国と米国の数値を見てみる。
100人あたり検査数は英国が33人、米国が30人。
致死率は英国が10.2%、米国が2.9%。

シンガポールの数値がコロナの実態を示すなら過大な警戒は不要ということになる。
しかし、実態が香港の数値であれば話は変わる。

2009年に流行した新型インフルエンザの致死率が0.5%以下と推定されている。
この4倍の致死率は強い警戒を必要とするものだ。

人口の6割が感染して集団免疫を獲得する場合、陽性者数の2%が死ぬことになると、日本では150万人が死亡することになる。
150万人の死亡を放置することは許されない。

欧米の被害が深刻で東アジアの被害は軽微とされてきたが、米国と香港の致死率に大きな違いがない。
東アジアでも致死率2%が実態であるなら、相応の厳しい対応が必要になる。

菅内閣は「コロナ軽視」に軸足を移している。
GoToトラベル事業の全面展開、五輪に向けての入国規制緩和が示された。

しかし、欧米では感染再拡大が現実化している。
行動抑制を強化する国が増えている。

この状況下でのGoToトラベル事業全面推進と外国からの入国制限大幅緩和は明らかに時期尚早だ。
菅内閣のコロナ軽視政策が次期臨時国会での最大争点になる。

外国人の入国規制を一気に緩和して五輪を開催することにどれだけの国民が賛成するかを調査すべきだ。

コロナ対策の基本は
「感染抑止と経済活動維持の両立」だ。
多くの国民はこの基本方針に賛同する。

しかし、
「経済活動を拡大するために感染拡大を放置する」
政策方針に賛同する国民は少数であるだろう。

かねてより指摘しているように、新規陽性者数は人の移動の大小に連動している。
アップル社提供データに基づけば、4週間前の人の移動指数が現時点の新規陽性者数と連動する。

菅内閣は東京をGoToトラベル事業に組み込む方針を示した。
この方針を受けて、9月19日から22日にかけての4連休の人出が急増した。
コロナ以前の水準を上回った。
10月中旬から、その影響が新規陽性者数に反映されるだろう。

日本のPCR検査数は人口100人あたりたったの1人。
ほとんど検査が行われていない。
陽性と確認されていない陽性者が大量に存在する。

無症状の陽性者が新たな感染を引き起こすのかどうか。
この点は知見が確立されていない。
しかし、無症状の陽性者も感染を広げるとの指摘が広範に存在する。

東京から大量に人が移動し、全国で新規陽性者数が急増することが考えられる。
日本でのコロナ致死率が2%程度だとすれば、感染拡大による死者の増加を警戒しなければならなくなる。

旅館の経営を助けるために感染を拡大させるべきかどうか。
多くの国民は感染拡大を望まないと推察される。

五輪開催強行のスタンスばかりが報じられるが、誰の何のための五輪であるのかをはっきりさせる必要がある。
五輪をビジネスにしている大資本が損失を蒙らないように五輪開催に突き進んでいる。

アスリートは五輪開催を希望するだろう。
当事者だから当然の思いだ。

しかし、五輪開催がコロナ感染拡大をもたらすリスクがあるなら、大多数の国民は五輪中止を求めるだろう。
単発のスポーツ行事と五輪は規模がまったく異なる。

完全無観客での開催であるなら状況が変わるが、観客ありの開催になれば多数の外国人が訪日する。
非居住者の観覧を禁止するのかどうか。
それでも、競技参加者と関係者、大会関係者は来日することになる。

大量の来日者について、2週間の隔離義務を除外しようとしている。
来日者全員のPCR検査は最低限必要になるが、完全な水際対策を講じられるのか。

五輪の東京招致に関する海外への不透明な送金が明らかにされた。
五輪招致のために賄賂が贈られた疑いが濃厚になっている。
国民の血税を財源として実施された五輪招致活動、五輪開催において、不当利益を得る者が生じることは許されない。

五輪ではなく汚輪だ。
五輪に回すお金があるなら、フクシマ事故の被災者に対する補償を優先するべきだ。

大地を汚染させ、人が居住できない状況を生み出しておきながら、転居した人々に対する家賃補償を打ち切り、高水準の放射能汚染地域に居住を義務付ける行政対応を取りながら、五輪もへったくれもない。

「復興五輪」と称していたのに、いつの間にか「コロナを克服したことを象徴する五輪」に書き換えられた。
政府の基本方針から復興という文字が消滅した。

フクシマ放射能事故はまったく収束していない。
アンダーコントロールでなくアウトオブコントロールだ。

これで「国民のために働く内閣」というならおへそでお茶が沸く。


▼関連リンク
植草一秀の『知られざる真実』

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