2024年04月20日( 土 )

新型コロナの防疫対策で世界の先頭を走る台湾と意見交換(3)

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 2020台湾最新ビジネスセミナー「withコロナ時代‐日台で切り拓く新ビジネスチャンス」(主催:台日産業連携推進オフィス(TJPO)、協力:(株)電波新聞社)が9月15日、TKP品川カンファレンスセンターで開催された。
 今回のセミナーは新型コロナの影響を受けて、現地会場とオンラインのいずれでも参加できるハイブリッド方式で開催された。現地会場では約40人、日本・台湾の二元中継のオンラインで約130人が参加した。

5Gで、もっとも重要なのは基地局間の連携

 川村氏は参加者に向けて「頭の整理」と前置きし、「5G」と「AI」を説明した。
 川村氏はまず「5G」について、日本の通信技術が第1世代(1G)から第5世代(5G)まで約10年間隔で進んできた歴史をたどり、次のように語った。

川村 直毅 氏

 5Gには、次の3つの技術ビジョンがあります。

<技術ビジョン1:高速大容量通信>
 使用する電波の周波数を上げる、高周波電波利用技術。ダウンロードの時間が短くなり、4K、8Kの動画を見ることができるようになる。
 目標は、4G:1Gbps(※1)➡5G:20Gbps(下り)、10Gbps(上り)への技術進歩。

<技術ビジョン2:超信頼・低遅延通信>
 大切なデータの通信経路をできるだけ短くする、C/U分離(※2)とエッジコンピューティング(※3)技術を使う。マクロセル局や中央センターを結ぶネットワークも重要で、光ファイバー網の整備などが必須。

<技術ビジョン3:多数同時接続>
 個々の通信に必要な前処理を省略するGrant Free(グラントフリー)方式。目標として、4Gの100倍となる、1km2あたり100万台の接続を目指す。同時にデータを送る方式であり、データ送信前に基地局からの事前許可が必要な場合に比べて、多くを省略できる。ただし、通信衝突もあるため、再送を含めた方式の設計がなされている。目標の実現に向けて研究開発が進められており、実現には少し時間がかかる。

 

 川村氏は以上の3つの技術ビジョンを提示したうえで、「5Gに関しては電波の問題のみが大きく取り上げられることが多いのですが、もっとも重要なのは、制御信号を基地同士で確実にやりとりする」ことだと語った。

 加えて、「日本では基地局と基地局の間を光ファイバー網でつないでいるが、光ファイバーがまだ普及していない地域もあるため、デジタル庁の創設に歩調を合わせて、さらに整備されることを期待したい」と語った。

 また、川村氏は「日本の5Gは、北米や中国に比べて遅れているイメージがあるが、決してそうではない」と語り、「北米や中国で始まった5Gは、高速大容量通信(技術ビジョン1)であり、日本の5Gは技術ビジョン1から3を一括して実現することを目指している」と付け加えた。

※1:端末と基地局の間でやり取りされるデータ信号をユーザーデータ(User Plane)と制御信号(Control Plane)に分けて扱い、制御信号(C)がマクロセル基地局と常に接続するようにするもの。 ^

※2:利用者のスマートフォンなどのインターネットにつながるIoT機器において情報を処理したり、利用者に近いエリアのネットワークにサーバを分散配置して処理したりするコンピューティングモデルのこと。 ^

※3:データ伝送速度の単位の1つで、1秒間に何十億万ビット(何ギガビット)のデータを送れるかを表したもの。 ^

(つづく)

【金木 亮憲】


<INFORMATION>
台日産業連携推進オフィス(TJPO)

 台湾行政院が2011年認可した「台日産業連携架け橋プロジェクト」により12年3月に設立。関連部会の資源を統合し日台双方の産業連携をより一層密接にすることで、日台間における全体的な産業のレベルアップを図り、共同でグローバル競争力と産業チェーンを高めることを目的としている。
日台産業間の連絡窓口として、セミナーや商談会を通じて、産業の連携案件、プロジェクト追跡業務などのサポートを行うとともに、相互に派遣団による交流を行っている。

日台OBネットワーク
 2007年設立の日台産業の連携に熱意を持つ企業人で構成されたボランティア団体。台湾政府の重点政策方向、産業の趨勢、将来の推進方向、日台の連携成果など日台双方の重要な情報交換の場となっている。現在の会員は約360人。
 組織は、最高顧問:安藤国威 ソニー(株)元社長兼COO、会長:峯岸進 台湾Sony元董事長。副会長:高杉春正 台湾TDK元董事長と揚原浩 台湾富士通元董事長、関西地区会長:松本光司 双日台湾元董事長で構成されている。毎年日本で1~2回の交流会を開催。会員ほか、日本企業の各界名士および台湾政府高官や産業界関係者も参加する。

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