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2020年10月06日 15:00

史上最悪の経済情勢下で進むアメリカの大統領選挙(2) 未来トレンド分析シリーズ 

国際政治経済学者 浜田 和幸

 世界が注目した第1回目のトランプ対バイデン両大統領候補者によるテレビ討論は「アメリカ史上最悪!」とまで揶揄された。まさにそのハチャメチャぶりにはアメリカの有権者のみならず、アメリカの行方に関心を寄せる世界の人々が驚いた。アメリカのメディアでは「先に菅総理が選ばれた自民党の総裁選での討論会のほうがよっぽどましだった。アメリカは日本に学ぶべきだ」といった論評まで登場する有り様だった。

全米の3人に1人は失業者

 歴史の必然かもしれないが、かつての超大国アメリカの屋台骨は事程左様に崩れ始めている。その引き金を引いたのは新型コロナウィルス(COVID-19)だ。何しろ、感染者数でも死亡者数でも世界最悪の記録を更新中である。追い打ちをかけるように、アメリカ各地では人種差別に反対するデモや破壊行為が過激化する一方になってきた。8月6日に発表された統計によれば、第二四半期のGDPは通年ベースで32.9%の減少となり、これはアメリカ史上最悪の数字に他ならない。

 コロナ禍の影響は甚大で、日本もそうだが、アメリカでも観光業や飲食業の落ち込みは半端ない。全米レストラン協会によれば、少なくとも15%のレストランは廃業に追い込まれてしまった。州別で見れば、観光客依存度の高いハワイ、ネバダ、ニューヨーク各州の状況はとくに悲惨だ。ディズニーランドに限らず、航空会社や鉄道会社も大幅な人員削減に追い込まれている。

 また、ライフスタイルの変化もあり、新車販売の低迷から自動車産業の中心地ミシガン州はかつてない景気後退の嵐に見舞われている。各州の知事が発令した都市封鎖(ロックダウン)の影響もあり、在宅勤務や外出制限が広がり、企業の業績も悪化の歯止めがかからない。

 結果的に、全米の失業者数はうなぎ上りである。何と失業保険を申請する人の数は25週連続で毎週100万人を超えている。過去6カ月で6,000万人以上が新規に失業給付金を申請したことになる。全米の勤労者数は1億5,200万人であり、3人に1人は失業者ということだ。

 GAFAに代表されるようなIT関連企業やテレワークで大躍進のズームなどは絶好調で「わが世の春」を謳歌しているようであるが、大半のビジネスは活気を失ってしまった。いわば、一握りの「超儲かり企業」と、その他のほとんどは破綻寸前という極端な格差社会になったわけだ。少し前までは「1%の富裕層と99%の貧困層」と言われていたアメリカが、今では「0.1%の超リッチと99.9%のプアに分断されてしまった」といわれる所以であろう。

危機的状況で行われる大統領選挙

 さらに深刻な問題は、白人警察官が黒人容疑者の首を絞めて殺害した事件がきっかけとなり、全米に広がった人種差別反対のデモや破壊行為である。BLM(黒人の命は大切だ)運動は過激化するばかりで、各地の警察署が放火されたり、白人の女性や子どもまでもが殺されたりする事態に陥っている。こうした危機的状況に対して、効果的な歯止めをかけられない政府への不満や不信は高まるばかりだ。

 トランプ政権が実行している対策といえば、ドル紙幣の増刷一本やり。未曾有の感染症対策と称して、アメリカ政府が去る6月ひと月間に発行したドル紙幣の総額は8,640億ドルだった。この金額はアメリカ建国以来200年間に発行されたすべての金額を上回るもの。まさに国家破綻を招く以外の何物でもない無責任な増刷ぶりである。世界に例を見ない超インフレばらまき政策といえるだろう。もはやドル紙幣の価値は額面の1%といわれる有り様だ。金(ゴールド)に投資マネーが流れるのも当然だといえる。

 残念ながら、誰もが期待するような「普通の日常生活」はもはや望めそうにない。自然災害も深刻さを増す一方である。日本でも九州や東北地方などの大雨による河川の氾濫が後を絶たないが、アメリカでは山火事に加え、ハリケーンや地震の猛威が例年以上に被害をもたらしている。「踏んだり蹴ったり」というべきかもしれないが、そうした厳しい現実にアメリカは直面しているのである。

 そんな危機的状況下で行われるのが11月3日のアメリカ大統領選挙である。コロナ騒動が沸き上がる以前は、「トランプ大統領の再選で決まり」という雰囲気であった。ところが、コロナ旋風によって潮目が激変することに。各種世論調査によると、ホワイトハウスの奪還を狙う民主党のバイデン前副大統領の人気が現職のトランプ大統領を上回っている。

(つづく)

<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)

 国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。最新刊は19年10月に出版された『未来の大国:2030年、世界地図が塗り替わる』(祥伝社新書)。2100年までの未来年表も組み込まれており、大きな話題となっている。

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