2021年12月07日( 火 )
by データ・マックス

史上最悪の経済情勢下で進むアメリカの大統領選挙(3)

国際政治経済学者 浜田 和幸

 世界が注目した第1回目のトランプ対バイデン両大統領候補者によるテレビ討論は「アメリカ史上最悪!」とまで揶揄された。まさにそのハチャメチャぶりにはアメリカの有権者のみならず、アメリカの行方に関心を寄せる世界の人々が驚いた。アメリカのメディアでは「先に菅総理が選ばれた自民党の総裁選での討論会のほうがよっぽどましだった。アメリカは日本に学ぶべきだ」といった論評まで登場する有り様だった。

馬耳東風のトランプ

 アメリカのコーネル大学が10月1日に発表した「コロナウィルスとデマ」に関する報告書は衝撃的な内容だった。アメリカを含む全世界で公開された3,800万本のニュース記事のうち、実に52万本以上は根拠のないデマ情報であったという。そして、そうしたデマをもっとも多く流した張本人がトランプ大統領だったと結論付けたのである。もっとも多かったのは「新型コロナウィルスは時間が経てば自然に消滅する」というトランプ流の「奇跡が起きる」発言だった。ほぼ30万本もの記事が、この“奇跡”発言を紹介している。

 精神科医の姪からも「史上最悪の自己中で、うそつきの大統領」とこき下ろされ、その後、元連邦検事の姉からも「危険で残酷な弟。絶対に再選させてはならない」とまで批判されているトランプである。

 とはいえ、何を言われようと馬耳東風を決め込んでいるのがトランプ大統領だ。新聞、テレビ、ネットでどんなに非難されようが、「フェイクニュースだ」と無視。確かに、不動産王として成功し、テレビの人気番組を長年仕切ってきた経験もあり、大統領選には欠かせない候補者同士の討論では「決して負けない」との自信があるようだ。

 第1回目の討論会はアメリカ国内のみならず世界各国で「カオス以外の何者でもない」と悪評で、「その最大の理由はトランプ大統領のルール無視の発言の連続にあった」といわれるが、本人は一向に気にする素振りを見せない。曰く「討論会のルールを変える必要はない。どうなっても自分が圧勝するのは目に見えているからだ」と、相変わらずの自信家ぶりである。

 とはいえ、トランプもトランプなら、バイデンもバイデンで、アメリカや世界の直面する課題への解決策や未来へのビジョンなどまるで関心がないようだ。コロナ対策に関しても、バイデンは「全国民にマスク着用を義務付ける」と主張。すると、トランプは当初「そのうち自然に消滅する。マスクなどは弱虫の付けるもの。必要なときには付けられるように、ポケットにもっている。ただ、自分には必要ない」といった強気な発言に終始。しかし、自分だけはNASAが開発したスティック状のウィルス予防噴霧器を胸ポケットに隠していたというから、開いた口が塞がらない(トランプ大統領は後日、新型コロナウィルスに感染)。

トランプ大統領の誕生にプーチンの影

 そんな折、上院の諜報委員会が3年半を費やして調査した報告書が公表された。題して、「2016年大統領選挙におけるロシアの介入」。940ページにおよぶ報告書の結論は「プーチン大統領の指示で、ロシアの諜報機関がトランプ陣営の選対本部長のミューラー氏らと共謀し、民主党のヒラリー・クリントン陣営にハッカー攻撃を仕掛け、激戦区での選挙人争奪戦でトランプ候補が有利になるように工作を行った」というもの。

 注目すべきは、この委員会の構成メンバーは共和党が過半数を占めていることだ。今回の結論に関して、委員会の14名が賛成し、反対したのは1人のみだった。要は、プーチン大統領がロシアのスパイを総動員してトランプ大統領の誕生に不可欠の裏工作を実行したという衝撃的な内容に他ならない。

 しかも、共和党の現職上院議員が挙って承認したというからさらに驚く。ところが、民主党の全国大会開催2日目というタイミングで公開されたためか、または報告書の中身が膨大過ぎたためか、アメリカのメディアはまったく報道していないのである。

 しかし、同報告書によれば、「トランプとその陣営の責任者は少なくとも140回に渡りロシアのスパイと接触し、クリントン陣営の選対本部から盗んだ資料に基づき、ヒラリー追い落としの作戦を構築した」という。

(つづく)

<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)

 国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。最新刊は19年10月に出版された『未来の大国:2030年、世界地図が塗り替わる』(祥伝社新書)。2100年までの未来年表も組み込まれており、大きな話題となっている。

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