• このエントリーをはてなブックマークに追加
2020年10月07日 15:30

史上最悪の経済情勢下で進むアメリカの大統領選挙(3) 未来トレンド分析シリーズ 

国際政治経済学者 浜田 和幸

 世界が注目した第1回目のトランプ対バイデン両大統領候補者によるテレビ討論は「アメリカ史上最悪!」とまで揶揄された。まさにそのハチャメチャぶりにはアメリカの有権者のみならず、アメリカの行方に関心を寄せる世界の人々が驚いた。アメリカのメディアでは「先に菅総理が選ばれた自民党の総裁選での討論会のほうがよっぽどましだった。アメリカは日本に学ぶべきだ」といった論評まで登場する有り様だった。

馬耳東風のトランプ

 アメリカのコーネル大学が10月1日に発表した「コロナウィルスとデマ」に関する報告書は衝撃的な内容だった。アメリカを含む全世界で公開された3,800万本のニュース記事のうち、実に52万本以上は根拠のないデマ情報であったという。そして、そうしたデマをもっとも多く流した張本人がトランプ大統領だったと結論付けたのである。もっとも多かったのは「新型コロナウィルスは時間が経てば自然に消滅する」というトランプ流の「奇跡が起きる」発言だった。ほぼ30万本もの記事が、この“奇跡”発言を紹介している。

 精神科医の姪からも「史上最悪の自己中で、うそつきの大統領」とこき下ろされ、その後、元連邦検事の姉からも「危険で残酷な弟。絶対に再選させてはならない」とまで批判されているトランプである。

 とはいえ、何を言われようと馬耳東風を決め込んでいるのがトランプ大統領だ。新聞、テレビ、ネットでどんなに非難されようが、「フェイクニュースだ」と無視。確かに、不動産王として成功し、テレビの人気番組を長年仕切ってきた経験もあり、大統領選には欠かせない候補者同士の討論では「決して負けない」との自信があるようだ。

 第1回目の討論会はアメリカ国内のみならず世界各国で「カオス以外の何者でもない」と悪評で、「その最大の理由はトランプ大統領のルール無視の発言の連続にあった」といわれるが、本人は一向に気にする素振りを見せない。曰く「討論会のルールを変える必要はない。どうなっても自分が圧勝するのは目に見えているからだ」と、相変わらずの自信家ぶりである。

 とはいえ、トランプもトランプなら、バイデンもバイデンで、アメリカや世界の直面する課題への解決策や未来へのビジョンなどまるで関心がないようだ。コロナ対策に関しても、バイデンは「全国民にマスク着用を義務付ける」と主張。すると、トランプは当初「そのうち自然に消滅する。マスクなどは弱虫の付けるもの。必要なときには付けられるように、ポケットにもっている。ただ、自分には必要ない」といった強気な発言に終始。しかし、自分だけはNASAが開発したスティック状のウィルス予防噴霧器を胸ポケットに隠していたというから、開いた口が塞がらない(トランプ大統領は後日、新型コロナウィルスに感染)。

トランプ大統領の誕生にプーチンの影

 そんな折、上院の諜報委員会が3年半を費やして調査した報告書が公表された。題して、「2016年大統領選挙におけるロシアの介入」。940ページにおよぶ報告書の結論は「プーチン大統領の指示で、ロシアの諜報機関がトランプ陣営の選対本部長のミューラー氏らと共謀し、民主党のヒラリー・クリントン陣営にハッカー攻撃を仕掛け、激戦区での選挙人争奪戦でトランプ候補が有利になるように工作を行った」というもの。

 注目すべきは、この委員会の構成メンバーは共和党が過半数を占めていることだ。今回の結論に関して、委員会の14名が賛成し、反対したのは1人のみだった。要は、プーチン大統領がロシアのスパイを総動員してトランプ大統領の誕生に不可欠の裏工作を実行したという衝撃的な内容に他ならない。

 しかも、共和党の現職上院議員が挙って承認したというからさらに驚く。ところが、民主党の全国大会開催2日目というタイミングで公開されたためか、または報告書の中身が膨大過ぎたためか、アメリカのメディアはまったく報道していないのである。

 しかし、同報告書によれば、「トランプとその陣営の責任者は少なくとも140回に渡りロシアのスパイと接触し、クリントン陣営の選対本部から盗んだ資料に基づき、ヒラリー追い落としの作戦を構築した」という。

(つづく)

<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)

 国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。最新刊は19年10月に出版された『未来の大国:2030年、世界地図が塗り替わる』(祥伝社新書)。2100年までの未来年表も組み込まれており、大きな話題となっている。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

     

トップニュース

2020年11月30日 17:46

【王毅外相の訪日】約9カ月ぶりの日中政府高官直接会談、習近平の国賓訪日はNEW!

 24日、中国の王毅国務委員(副首相級)兼外相が訪日し、茂木敏充外相との会談、翌25日に菅義偉首相への表敬訪問などを行った。2月に楊潔篪中国共産党政治局委員(外交担当...

2020年11月30日 17:34

1人ひとりが社会を動かすプレーヤーに 市民社会への変容が世界を変える(中)NEW!

 『ハチドリ電力は、電力の小売業者です。家庭やオフィス・工場などに、自然エネルギーを販売しています。先ほども触れましたが、現在、もっとも大きな社会的課題は地球温暖化。...

2020年11月30日 17:21

アメリカ大統領選挙後の世界秩序を模索する!(4)NEW!

 第3部の「グリーン・ニューディールの制度設計と日本の道」では、下記の3名の報告が行われた...

2020年11月30日 17:10

10月の東証システム障害で宮原社長が引責辞任NEW!

 日本取引所グループ(JPX)は本日、(株)東京証券取引所代表取締役社長・宮原幸一郎氏が本日付で辞任すると発表した...

2020年11月30日 17:06

【凡学一生のやさしい法律学】詭弁の論理学(3)NEW!

 この文言は橋下氏の発言を批判したものではないため、橋下氏は反論する立場にない。それにもかかわらず橋下氏は、この前川氏の表現を強く非難した。まるでテレビ局の弁護人であ...

2020年11月30日 16:48

オンワード、芝浦の倉庫を住友不動産へ78億円で売却NEW!

 オンワード樫山(東京都中央区)は、保有する「オンワード樫山芝浦第2ビル」を78億円で住友不動産(東京都新宿区)へ売却する...

2020年11月30日 16:35

九州有力通販 低迷からV字回復への道NEW!

 九州を代表する通販企業として知られる(株)エバーライフ。健康食品通販市場の黎明期に急成長したが、類似品や競争激化により失速。しばらく低迷が続いていたが、最近は化粧品...

激化するコロナ用ワクチンの開発レース 隠蔽された副作用のリスク(前)NEW!

 世界中で新型コロナウイルス(COVID-19)の感染者が5,500万人を突破し、死者も130万人を超えたため、治療薬や予防用ワクチンへの期待は高まる一方だ。ワクチン...

2020年11月30日 16:07

500名を上回る新規患者が韓国で3日連続発生(前)NEW!

 11月24日に、韓国人にとって意外なニュースが発表された。ブルームバーグ通信による「コロナ時代、世界で最も安全・危険な国・地域-レジリエンスランキング」だ...

2020年11月30日 15:52

いい部屋ネット・住みたい街ランキング2020~福岡市が全国第1位!NEW!

 賃貸住宅建設大手の大東建託(株)は25日、「いい部屋ネット 街の住みここち&住みたい街ランキング2020<全国版>」を同時に発表した。住みたい街(自治体)ランキング...

pagetop