国際未来科学研究所
代表 浜田和幸 氏
現在の戦闘の背後には公然とイスラエルが控えているため、ワシントンも主要メディアも、この戦争を正当化せざるを得ない状況に追い込まれています。情報操作が日々繰り返されており、日本をはじめ米国の同盟国では「イランの核開発は世界の脅威であり、それを取り除くことは世界の平和につながる」という宣伝戦に飲み込まれているとしか言いようがありません。
情報戦と体制継続の力学
イスラエルは、アメリカを戦争犯罪者そして人道に対する罪を助長する存在に変えてしまいました。このような状況は、ジェフリー・エプスタイン氏に対する「公式」調査についても信ぴょう性が疑われます。すなわちエプスタイン氏と彼の億万長者の仲間たちが、アメリカのエリート層に浸透し、操ることを目的とした「人身売買ビジネス」に邁進していたことが隠蔽されようとしているということです。
実は、そうした広範な情報操作においてはイスラエルの諜報機関が深く関わっていたことも明らかになりつつあります。米国にとってはイランの核開発は何ら脅威ではないはずです。イスラエルが最大の脅威と見なしているがゆえに、トランプ政権は一方的な先制攻撃に踏み切っただけの話です。
さて、今後のイラン情勢ですが、最高指導者ハメネイ師の後継者が誰になるのでしょうか。シーア派の最高指導者アラフィ師が暫定指導者評議会のメンバーに指名されたと、国営メディアが報じました。
それによれば、護憲評議会メンバーであるアラフィ師は、専門家会議が後継者を任命するまで、最高指導者の職務を遂行する任務を担うこの評議会に、ペゼシュキアン大統領とエジェイ最高裁判所長官とともに加わるとのこと。現在67歳のアラフィ師は、イランで最も有力な聖職者の1人です。緊急昇格以前は、全国イスラム神学校長、護憲評議会メンバー、専門家会議メンバーという3つの重要職を歴任しました。
今回の任命は継続性を示すものであり、政権の存続を確保するという任務を負うことになるでしょう。最も重要なのは、アラフィ師が革命防衛隊と政治指導部から、戦時中も報復路線を維持する忠実なインサイダーとみなされていることです。
3月1日も、イランの首都、とくに政府と軍の司令部として知られる場所への米軍とイスラエル軍による激しい爆撃が観測されましたが、それでも国内の他の地域では大規模なハメネイ師の追悼集会が続いています。
ホルムズ海峡封鎖と
世界経済への衝撃
他方、反政府派のイラン人の間では一部地域で祝賀行事が行われている様子が見られますが、国営テレビやその他の国際メディアが放映した映像には、殺害されたイラン・イスラム共和国指導者アヤトラ氏に連帯を示す、おそらく数十万人に上る支持者たちの姿が映し出されています。
イラン政権はすでにペルシャ湾全域に点在するイスラエルと米軍基地に対し、短距離・長距離の最新鋭弾道ミサイルとドローンを用いて反撃を行っています。多くの弾丸は撃退されたものの、一部は標的に命中し、深刻な被害をもたらしていることは間違いありません。
イラン革命防衛隊は、ペルシャ湾とオマーン湾、そしてインド洋を結ぶ狭く戦略的な水路であるホルムズ海峡の封鎖にも着手。この海峡は最も狭い部分で幅がわずか34kmで、石油と液化天然ガス(LNG)の輸送において世界で最も重要な難関の1つとなっています。
世界の石油の約20%、液化ガスの約25%が毎日この海峡を通過しているわけで、世界のエネルギー市場に深刻な影響が出始めているようです。米国はホルムズ海峡の開通を維持すると表明していますが、イラン革命防衛隊は通航を阻止するうえで有利な立場にあります。英国や米国のタンカーも攻撃を受けているほどです。今後、世界のエネルギー供給と経済全体に深刻な影響をおよぼす可能性があります。ユーロニュースは、原油価格がすでに上昇していると報じているではありませんか。
日本への影響は甚大でしょう。なにしろ、日本は石油の90%をこの地域に依存しているわけで、政府と民間の備蓄が250日分程度あるとはいうものの、原油価格の急騰は避けられない情勢ですから。ガソリン価格の高騰もあり得る話で、物価高につながることが懸念されます。
原油先物は今週日曜日の夕方に取引を再開しましたが、ブレント原油が1バレル100ドルに達するとの見方が広がり、この水準は2022年のロシアによるウクライナ侵攻以来の水準に他なりません。バークレイズをはじめとするアナリストは、生産停止が長期化すれば世界供給量の約20%に相当する日量最大2,000万バレルの供給が滞る可能性があると警告しています。
サウジアラビア、ロシア、イラク、UAE、クウェート、カザフスタン、アルジェリア、オマーンのOPECプラス8カ国は、早速にバーチャル会合を開き、世界の市場状況と見通しを確認したうえで、4月から日量20万6000バレルの小幅増産を発表しました。声明ではまた、「市場状況、適合性、補償について検討するため月例会合を開催する」と発表し、次回の会合は4月5日に予定されているとのこと。緊張感が高まっています。
いずれにせよ、ハメネイ師の暗殺はイラン政権にとって大きな打撃ではあるものの、克服できないものではないでしょう。なぜなら、2020年1月に米国によって暗殺されたソレイマニ将軍をはじめ、過去には多くのイラン指導者が暗殺されているからです。そうした状況下であっても、彼らは比較的スムーズに交代し、イスラム政権は存続してきた経緯と経験があります。
(了)
浜田和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月自民党を離党、無所属で総務大臣政務官に就任し震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。著作に『イーロン・マスク 次の標的』(祥伝社)、『封印されたノストラダムス』(ビジネス社)など。








