2024年04月26日( 金 )

何が「セクハラ」になり得るのか正しい知識を

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 前号までパワーハラスメントについて述べてきましたが、本号では「セクシュアル・ハラスメント」(以下、セクハラ)について解説いたします。

岡本弁護士

 1989年、福岡で初めてセクハラを争点にした訴訟が提起され、「セクシャル・ハラスメント」はこの年の流行語大賞新語部門の金賞を受賞するなど、一気に認知されるようになりました。97年には、男女雇用機会均等法において、企業はセクハラの防止に配慮する義務(配慮義務)があると規定され、2006年には企業が守らなければならない「措置義務」に改正されるなどしてきました。そのため、セクハラについては、これまでに何度も研修を受けたという方もおられると思います。

 セクハラとは、「労働者」の意に反する「性的な言動」に対する労働者の対応(拒否や抵抗)により、その労働者が労働条件について不利益を受けること(対価型)や、「性的な言動」により労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じるなど、その労働者が就業するうえで看過できない程度の支障が生じること(環境型)をいいます。対価型の例としては、上司が労働者の腰や胸などに触ったが抵抗されたため、その労働者について不利益な配置転換をすることなどが、環境型の例としては、事務所内にヌードポスターを掲示しているため、労働者が苦痛に感じて業務に専念できないことなどが挙げられます。

 このような典型例を見ると、「今どきこんな会社はないだろう」と思われるかもしれませんが、現在も労働局に寄せられる均等法に関する相談のなかで最も多いのがセクハラについての相談であり、18年度には約7,600件の相談が寄せられています。このように、セクハラは相談しにくいから気付かないだけであると認識していただく必要があります。

 事業者としては、本誌26号でパワハラについて述べたのと同様に、会社の方針を明確に定めること、就業規則などに規定すること、研修を実施すること、相談窓口を設置すること、定期的に匿名のアンケートを実施することなどの防止措置を講ずる義務があります。

 また、セクハラの発生の原因や背景には、「性別役割分担意識」があると考えられます。感謝の気持ちを表したり、誉めたつもりで「女性の淹れてくれたお茶はおいしい」などと発言した場合も、女性を仕事内容で評価していない「性別役割分担意識」の現れであり、人によっては不快感を抱くことになります。このように、無意識にセクハラになり得る言動をしていることもありますので、個人としても、何がセクハラになり得るのか正しい知識を身につけることが重要です。

 以上の通り、企業としては、セクハラについて就業規則の整備、研修などを通じて従業員などにセクハラに対する関心と理解を深めること、セクハラについて相談体制を構築することなどが必要になります。ぜひ、労務問題に詳しい弁護士に相談しながら、必要な対策を講じてください。

<INFORMATION>
岡本綜合法律事務所

所在地:福岡市中央区天神3-3-5 天神大産ビル6F
TEL:092-718-1580
URL: https://okamoto-law.com/

<プロフィール>
岡本  成史
(おかもと・しげふみ)弁護士・税理士
岡本綜合法律事務所 代表
1971年生まれ。京都大学法学部卒。97年弁護士登録。大阪の法律事務所で弁護士活動をスタートさせ、2006年に岡本綜合法律事務所を開所。経営革新等支援機関、(一社)相続診断協会パートナー事務所/宅地建物取引士、家族信託専門士。

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