2024年04月25日( 木 )

東京都が進める踏切対策~京王線高架化が実現するのはいつか?(前)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
法人情報へ

東京都都市圏には、JR、私鉄、地下鉄を含め18社の鉄道会社があり、その路線数は84路線に上る。都心部の山手線内エリアに多くの鉄道網が集中しているが、これらの路線の大部分は高架化や地中化がすでになされている。都心部については、ほぼ踏切はなくなったと言って良いだろう。ただし、都心と郊外を結ぶ路線には、いまだに多くの踏切が残されている。都内に残る踏切の数はざっと1,000カ所以上で、うち約250カ所がいわゆる「開かずの踏切」(ピーク時に1時間あたり40分以上踏切が閉まる踏切)だ。開かずの踏切によって、朝夕に交通渋滞が発生。踏切事故、地域の分断などといった社会問題を引き起こしている。経済的な損失だけでなく、環境への負荷も見過ごせない。

20区間を対象に高架化へ

 東京都は2004年、「踏切対策基本方針」を策定。25年度までに重点的に対策を検討すべき重点踏切約390カ所を抽出。このなかから優先的に除却する踏切の選定や連続立体交差事業(高架化)の検討対象区間として、さらに20区間を抽出した。高架化を実施するには、周辺道路整備などのまちづくりと一体で実施する必要がある。20区間のなかから、まちづくりの動きがある箇所をさらにピックアップ。施行主体となる鉄道事業者と協議のうえ、先行的に高架化に事業着手している。

 高架化は東京都の予算だけでなく、国の補助金、市区町村、鉄道事業者の負担金が充当されるが、そのコストは用地取得などを含め、数千億円規模に膨れ上がることも少なくない。「連続立体交差事業は、すれば即渋滞解消につながる有効な対策だ。できる限り対策をしていきたいと考えているが、膨大な費用と時間がかかる。事業のコンディションを整えるのも容易ではない」(小野寺圭・東京都建設局道路建設部鉄道関連事業課長)と話す。

 20区間以外の踏切対策としては、連続立体交差事業ではなく、単独立体交差事業や道路の拡幅などそれぞれの踏切に合った手法を用いる予定だ。

 現在実施中の高架化事業は、京成押上線(四ツ木~青砥、延長2.2km)、西武新宿線(中井~野方、延長2.4km)、西武新宿線など(東村山駅付近、延長4.5km)、京王京王線(笹塚~仙川、延長7.2km)の計16.3km。除却される踏切の数は計48カ所に上る。このほか、足立区が事業主体の東武伊勢崎線(竹ノ塚駅付近)、墨田区が行う同線(とうきょうスカイツリー駅付近)もある。高架化準備中の路線は、JR埼京線(十条)、京浜急行本線(泉岳寺~新馬場)、西武新宿線(野方~井萩)、同(井荻~西武柳沢)、東武東上線(大山)、JR南武線(矢川~立川)の6区間がある。

東京都の連続立体交差事業(高架化)の事業箇所(東京都建設局HPより)

1,800億円で、25の踏切解消へ

 現在進行中の高架化事業で、事業規模が最も大きいのが、京王京王線だ。京王京王線は、新宿駅と京王八王子駅を結ぶ37.6kmの路線で、1913年(笹塚駅~調布駅)に開業した古い路線だ。京王京王線(笹塚~仙川)は、杉並区と世田谷区の南北の交通を分断するかたちで走っている。

 この高架化事業により、25カ所の踏切が除却される。25カ所の踏切すべてが開かずの踏切だ。この区間で踏切がないのは、環八、環七しかない。これらの踏切の存在が両環状道路の交通渋滞を悪化させている面もある。現在事業中の6区間のなかでも、周辺の道路交通状況に最も影響を与えている区間だ。事業費は約1,800億円とこちらも大きい。高架化にともない、沿線に駅前広場や側道、線路下を南北に結ぶ都市計画道路なども整備される。なお、競合するJR東日本中央線、小田急電鉄小田原線はすでに高架化されている。

(つづく)

【大石 恭正】

(後)

関連記事